今回は予防歯科に関する状況と、歯科医院で出来ることのポイントについて紹介します。
予防歯科に関する取り組みや状況
予防医療の中でも、特に口腔内(歯)は生涯の健康を守る上で重要な役割を担うため、予防歯科という考えが広がりつつあります。厚生労働省と日本歯科医師会が推進している8020運動などに代表される様に、昔に比べ国内の予防歯科に対する取り組み姿勢も大きく変わりました。
患者さんの生涯にわたる健康を考え、多くの先生がご自身の経営・勤務されるクリニックで予防歯科についても取り組んでいらっしゃるのではないでしょうか?
しかしながら、患者さんが歯科に来る来院理由の多くは治療目的であり、予防歯科は海外と比較してもまだまだ浸透していないのが現状です。
予防歯科の現状?需要変動について
厚生労働省が実施している「国民健康・栄養調査」によると、近年の歯科検診の受診率は以下の様に変容しています。
・歯科検診の受診状況の年次比較(平成28年度)
平成21年 | 平成24年 | 平成28年 |
---|---|---|
34.1% | 47.8% | 52.9% |
資料にある通り、成人全体の約半数が1年以内に歯科検診を受けているという結果になっており、虫歯予防に対する意識が高まっており、今後も予防歯科の浸透と需要の増加が想定されます。
それでは次に、予防歯科の向上の足がかりとなる、定期的な歯科健診が増える要因について紹介します。
患者さんが定期的歯科健診を受ける3つの要因
2021年4月14日に東京医科歯科大学が発表した研究結果によると、歯科での定期的な歯科検診の受診には「歯科衛生士数が多い」「歯科衛生士専用ユニットがある」「歯科保健指導の時間が長い」の3点が強く関連するとされています。
また、患者さんが定期歯科健診を多く行っている歯科医院に移ると、受診するようになる確率が1.69 倍に増加するということも同研究内容で推定されています。
参照:歯科医院の違いで、定期歯科健診を受診するかが異なる(PDF)
つまり、患者さんの受診向上には、患者さんのデンタルIQを高めることに注力するだけでなく、歯科医院側も対応や方法を見直す必要があるという事です。
予防歯科にもつながる「定期的な歯科検診」を増やす方法
それでは、歯科医院側で対応できる定期的な歯科検診を促すための対応について例を紹介していきます。
歯科衛生士の確保
やはり予防歯科の向上には、衛生士の確保が重要です。
しかし「求人を出してもなかなか衛生士からの応募が来ないなど、歯科衛生士の確保が難航している」という歯科医院の話を伺う事も珍しくありません。求人を出す場合は、その地域の衛生士の採用条件と比較して提示条件が低くなっていないか?勤務時間はどれくらいか?などの競合の調査をしっかりと行い、求人を出す必要があります。
医院としてはフルタイムで入ってくれる衛生士さんを採用したい所ですが、なかなか応募が集まらないようであれば、勤務日数や時間が選べるなど、働き方の融通が利くような状態で募集をすると人員を確保できることもあります。歯科衛生士の方から「共に働きたい」と思ってもらえるように、勤務環境・福利厚生をしっかりと整備をすることも大切です。
歯科衛生士専用のユニットを用意する
次に、歯科医院の規模(広さ・人員)の状況などにもよりますが、ユニットの用意についてです。
開業時から歯科衛生士用のユニットを用意して上手く診療が出来ていれば問題ありませんが、ユニットの設置にも費用がかかります。また、後からユニットを増やしたいと考えても、配管の状況によっては追加の配管工事が必要になり、更に費用がかかってしまいます。
開業前から医院の拡張性などを踏まえた事業計画や内装計画を組んでおくことで、余計な費用追加は避けられます。また、開業のタイミングに全ての機材を購入するのではなく、経営状態に応じて段階的にユニット導入するのも、予防に取り組みながら経営を安定化させるポイントです。
ユニットの増設や事業計画については別の記事で詳しく紹介しているのでそちらをご覧ください。
また、これから開業をお考えの方は、医院拡張を踏まえた事業計画の作成やアドバイスなど、ご相談ベースで対応しておりますので、お気軽にお問合せください。
患者さんへ歯科保健指導の時間をしっかりと取る
患者さんへの歯磨き指導などの歯科保健指導時間の取り方については、院内で指導方法や会話のポイント・流れを共有したり、勉強会をすることで医院の標準化をはかると良いでしょう。医院の基準を設けて共有できる場があれば、衛生士さんに依存することなくある程度の指導レベルを担保できますし、新しい衛生士さんを受け入れる時や急な退職となってしまった時でも対応に慌てずすみますね。
また、患者さんにとって分かりやすいパンフレットや説明ツールなど用意しておき、渡せるようにしておくことも、予防歯科の向上や定期的な歯科検診へとつながりやすくなるポイントです。
定期的な検診を促す対応を取り入れる
定期的な歯科検診を促す対応については、予約をしてもらうタイミングや期間、方法がポイントです。
予約システムを導入し、チェアサイドで予約が取れるように環境を整備されていれば、患者さんの口腔ケアへの意識が高まっている診療の最後に「次は3ヶ月後くらいに、定期的な検診で今のお口の中の状況を確認出来ればと思うのですが、ご予定はいかがですか?ここでそのまま予約も出来ますよ」といったように、その場で予約を取れるようにしておくと良いでしょう。
もちろん患者さんによって、歯石のつきやすさも異なるので、その患者さんにあわせた期間を案内なさってください。会計時に予約を取る医院であっても、同様の対応が出来るとスムーズに予約へとつながりやすくなります。
「また近くなったら予約します」と言われ、その場で予約が取れなかった場合でも「歯石がついてしまうまで3~4ヶ月と言われているので、虫歯予防のためにもそれ位のタイミングで〇〇(WEBや電話など医院の予約方法)で予約をなさってください」などと、定期的に検診を受けた方が良い理由や予約方法も一言伝えるようになさってください。
しばらく来院されていない患者さんへは、メールやメッセージの送信・リコールはがきなどで定期的に検診の案内をすると良いでしょう。リコールはがきについては、別記事でポイントを紹介しています。
予防歯科の大切さや医院の実績を伝える
医院の実績を伝えるというと少し仰々しいかもしれませんが、簡単に言うと「医院で予防歯科に力を入れている」と告知しておくということです。告知と言っても、チラシをまくわけではなく、歯科医院のホームページへしっかりと「予防歯科に取り組んでいる・予防歯科の大切さ」を先生の言葉で書いておくと良いでしょう。
患者さんは来院前に歯科医院のホームページを見ていることが多く、WEB予約を導入している医院であればなおさらです。ホームページは歯科医院の顔といっても過言ではないので、どのような医院なのかを見る方に伝わる様に紹介しておくことがオススメです。
予防歯科の需要拡大と定期的な歯科検診を促す取り組みのポイントでした。予防歯科に取り組むために、院内の環境や設備を見直したいなどございましたら、インサイトの「歯科業者一括デモサービス」をご利用ください。
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力を入れたい診療があっても、歯科医院の経営が安定しなければ健全な状態で歯科治療を続けていくことは出来ません。そのためにも、しっかりと計画を立てたうえで開業していくことが大切です。
開業をご検討中で「予防歯科に力を入れた歯科医院を開業したい」とお考えの先生は、歯科医院の経営早期安定化を目指した開業の流れやポイントをお伝えしているインサイト主催の「歯科開業セミナー」がオススメです。
また「計画の立て方を教えて欲しい」など、個別にご相談頂ければ、先生のご状況などをヒアリングさせて頂き作成をすることも可能です。開業に関するご相談については、下記フォームよりお問合せください。
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