開業して経営が安定してくると、おそらく大体の先生が歯科ユニットの増設を検討されることでしょう。患者さんの数が増えても、ユニット数に応じて一日の診療数に限界があり、患者さんの要望に応えられないケースもでてきます。
そうなると単純に収入を逃すばかりか、予約ができない現状にしびれを切らした患者さんが別の医院に行ってしまうことも…結果として収益も頭打ちになり焦りを感じるかもしれません。
しかし、ユニットのような高額な機材を、おいそれと購入するわけにもいかないですよね。
そのためにも、ユニット増設はいつ頃を考えておけばいいのか?何を目安にすればいいのか?ということを開業する段階から考えておく必要があります。
それでは、増設に関するエトセトラを紹介します。
歯科ユニット増設の目安とは?
歯科診療台の台数(歯科診療所 規模別) ※医療法人、個人のみ抜粋
診察台台数/ 診療所規模 | 医療法人 | 個人 | 総数 |
---|---|---|---|
1台 | 156 | 986 | 1,221 |
2台 | 747 | 11,451 | 12,370 |
3台 | 2,812 | 23,864 | 26,813 |
4台 | 3,199 | 10,924 | 14,193 |
5台以上 | 4,368 | 4,292 | 8,765 |
合計 | 12,393 | 55,588 | 68,592 |
参考:平成26年医療施設調査
厚生労働省平成26年医療施設調査によると、個人規模の歯科医院でのユニット所持台数は上表通りになります。個人開設の医院では3台が42.9%と半数近くを占め、次いで2台・4台が約20%程度となっています。
対して、厚生労働省の平成26年10月患者調査によると「歯科診療所の推計患者数」は一日2,558,100人です。
先ほどのユニット台数の所持数からユニット総数を算出し、この患者数を割ってみると、法人・個人開設の歯科医院ではざっとユニット1台あたり1日12.4人の患者さんを診療する計算になります。
※なお、ユニット台数については5台以上の台数は便宜上5で換算し、不明部分については切り捨ててあるので、飽くまで参考値としてお考え下さい。
仮に歯科医院を開業し一日8時間の診療を行うとして、一人の常勤医師が1時間に2~3人の診療を行うとすると、一日約15~25名の診療が可能ということになります。
これだけの数を1人で全てこなすのは困難です。当然、衛生士さんなどのスタッフの協力の元、同時並行で処理を進ませる診療もあるので、統計通り3台程度のユニットが必要となるでしょう。
先生の診療スタイルや地域の診療内容傾向、その時の収支のバランス・・・などにもよりますが、一日に可能な診療数を考えると、1日の来患が30名を超える辺りで4台目のユニット購入を検討した方がいいと思われます。
増設と一緒に考えておくべき人材確保
ユニット増設と並行して、必ず考えないといけないのがスタッフの増員です。
歯科医師一人が診療できる1日の患者数にも限りがあります。先ほどの話を例にとると、4台目のユニットを購入し1日30名強からの患者さんを診療できるように環境を整えても、これを常勤医師1人で診ようとすると1時間辺り最低3.75人を診察しなければなりません。
一人あたりの診療時間は16分以内・・・新たな人手の必要が想定できます。
このように、ユニットを増設しても患者数の増幅に対して対応するスタッフの確保が出来ていないと、診療できる患者数を増やすことはできず、ユニット1台当たりの収益が下がるだけという結果になってしまいます。
まずは人材確保の計画を立てて、その目途が立ったらユニットを増設に踏み切りましょう。
増設前にシミュレーション
ユニットを増設した場合、だいたいどれ位の患者さんを増やせば、収支バランスがとれるのか?事前に経営シミュレーションを行うことが大切です。
ユニット増設の為の事業計画を見直してみてください。
ただし、事業計画を作成するのも大変な作業になるので、まずはざっと概算数字だけでも把握してみましょう。
ユニット1台辺り・月間経費モデル
明細 | 月額 |
---|---|
ユニット 1台(300万:7年償却) | 36,000 |
歯科衛生士1名(25万) | 250,000 |
経費中計 | 286,000 |
明細 | 月額 |
---|---|
材料費10%(月商300万を450万とする場合) | 150,000 |
経費合計 | 436,000 |
仮にユニット1台を300万で購入しこれを7年で減価償却すると、月の費用は約3万6千円となります。歯科衛生士を1名増員し給与を月25万とすると、費用合計は28万6千円。
元の月商が300万、この増設で月商450万への増額を見込むと仮定すると、材料費は増額分の10%程度で約15万となり、月間の必要経費は合わせて45万円程度になるということがわかります。
これをまかなうには最低でも月に45万円の売上増が必要ですが、これは一回当たりの診療報酬平均点数を600点(6,000円)、月の営業日数を25日とした場合、月間で75回の診療機会に換算できます。
大まかに、1日辺りの来患数が3名増えればユニット1台増設の元が取れる計算になりますが、これはあくまで経費増額分を補うだけの採算なので、その他諸々の経費や税金も考え、実際にクリニックの増益へと変えるには1日6~10人くらいのアポイント増が望ましいでしょう。
※上記は仮の数値です。他にも加味すべき要素がたくさんあるので、飽くまで概算の数値としてお考え下さい。
ユニットの設置には当然配管が通っていないといけないので、増設には施設の面についても考えておかなければなりません。大がかりな工事が必要になったり、追加費用が掛かかったりしないようにする為にも、開業時からユニット増設を考慮した事業計画を立てておくことが大切です。
インサイトのサポートでは事業計画の立て方や内装についてのサポートも行っています。まずは一度、ご相談ください。
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