歯科医院には一日に何人の患者さんが来ているか、実態をご存知でしょうか?
全国の患者数の推移や受療率については「歯科の患者数推移を解説!患者調査の統計考察」で解説している通りですが、今回は、1医院当たりの来院患者数を考察し「1日どのくらいの患者さんに来てもらうか?」という、歯科開業時の目標をどう設定していくかについてお話ししましょう。
歯科医院の平均来院患者数はどれくらいか?
まず、目標を立てる前に、歯科医院の1日の平均患者数がどれ位なのか気になる方も多いのではないでしょうか?参考程度ではありますが、歯科医院の1日の平均患者数は、次のように算出します。
歯科医院の1日の平均患者数の算出方法
①1施設あたりの医療費÷1日1人あたりの医療費=年間患者数
②年間患者数÷診療日数=1日の来院患者数
それでは具体的に、算出してみましょう。
①歯科医院の年間患者数の算出
年間患者数は、1施設あたりの医療費から1日1人あたりの医療費を割ることで算出します。厚生労働省で公開されている「医療費の動向調査」で調べることが出来ます。
実際に1施設あたりの年間医療費と1日1人あたりの医療費から、年間患者数を算出した表が以下の通りです。今回は、歯科診療所の数値を参考にするため、施設は診療所、入院患者を除外した数で算出しています。
年度 | 1施設当たり | 1日当たり | 年間患者数 |
---|---|---|---|
令和元年度 | \42,637,740 | \7,125 | 5,984人 |
令和2年度 | \42,715,928 | \7,606 | 5,616人 |
令和3年度 | \44,884,707 | \7,776 | 5,773人 |
②1日の来院患者数
次に年間の来院患者数を診療日で割って、1日の来院患者数を算出します。今回は仮の診療日数として、週休2日・祝日・お盆3日・年末年始6日を除いた日数を診療日数としています。
年度 | 年間患者数 | 診療日数 | 1日あたりの患者数 |
---|---|---|---|
令和元年度 | 5,984人 | 237日 | 25.2人 |
令和2年度 | 5,616人 | 240日 | 23.4人 |
令和3年度 | 5,773人 | 239日 | 24.2人 |
①と②のように計算してみると、令和元年~令和3年の歯科診療所の1日当たりの来院患者数は平均約24人という事が分かります。
ただし、これはあくまで一般例を用いて統計データから算出した全国平均値です。統計の抽出元は人員・ユニット台数などといった規模や経営環境も様々なので、開業時の指標とするには難しいかもしれません。
開業時の来院患者数の目標をどれ位で設定するか?
統計の来院患者数平均から目標を決めるのはキケン
先ほどは週休2日で診療日数を考えましたが、新規開業時はいち早く売上を伸ばす事を第一に考え、週休1~1.5日で診療し、経営が安定してから週休2日に変更するクリニックも多く、そもそもの休日の考え方から異なります。
週休1~1.5日だと、年間診療日数が週休2日の場合より40~55日ほど増えます。この日数を先ほどの1日あたりの患者数の計算に当てはめると、週休1~1.5日の場合は1日の来院患者数は19~22人となります。
つまり、統計から計算した患者数は参考にはなりますが、目標設定として考えるには注意が必要ということです。
開業にかかった費用や、医院の運営費や固定費、自身の年収モデルによっては、この来院患者数目標では赤字になってしまう場合があります。医院経営の目標に視点を切り替えると患者数の考え方も大きく変わります。
医院経営から考える来院患者数目標
次に年収を経営目標にした場合について考えてみましょう。
一般的な歯科医院の利益率は30%程度になるので、年収1000万円を目指している場合は、月商は約278万円が目標になります。
月の営業日数を24日(週休1.5日・祝日は数に入れない)、1人1日当たりの医療費を700点(1日当たりの医療費・100の位切り捨て)と仮定し逆算すると、1日16~17人の患者さんを診られていれば達成できる計算になっています。また、同じ考え方で年収1500万円なら1日の患者来院数は24~25人が目標として算出できます。
しかし、この計算も、1日の診療時間が8時間で、患者さん1人当たりのチェアタイムが大体20~30分枠を余白なしで診療していて達成できる患者数になっています。診療内容やスタッフ体制によって処置時間も変わってくるかと思いますので、この計算を参考に医院にあった目標を決めていきましょう。
また、このように考えると、開業時に2~3台のユニットを設置していても、来院患者数が1日30人を超える日が出てくれば、歯科ユニット増設を検討していかなくてはなりません。
ユニット1つ、スタッフ1人を増やす度に固定費も変わりますし、利益率や固定費は経営環境に応じ変化します。開業する医院の立地や周辺人口・患者層、賃料などといった要素も考慮し、何が自分の医院にとって一番バランスが良いのかを見極めて、単純計算ではなく、運営可能な目標患者数・目標を定めることが大切です。
医院経営安定のために見ておくべき新患数
また、開業がスタートしたら新規来院患者(以下、新患)数にも注意が必要です。
日に20~30人の患者さんが来るという事は、月に約500~700人、年間およそ6000~8500人の方が来院する事になります。例えば3ヵ月ごとのリコールに応えて患者さんが来院すると想定すると、年間来院目標値の4分の1の患者数を常に維持する必要があります。当然、その中には様々な理由で足が遠のいてしまう方もいるでしょう。そこで、新患数も常に確保する必要があるのです。
当社で開業された医院様のお話をお伺いしていると、新患数は大体年間800~1000人(年間数の10~15%)ほどあると経営が安定しているようです。
インサイト開業医院の新患数実績の参考
ここまで、統計表から算出した歯科医院の来院患者数と、来院患者数目標の立て方、新患数について解説しました。ご自身で開業する歯科医院の目標値はどのくらいになったでしょうか?また、開業後にそれだけの患者さんを集める算段はもうできているでしょうか?
当社では、歯科医院開業後、早い時期から利益を出せるようにするには開業から3ヶ月間にどれだけ新患数を集められるかが重要であると考え、この新患数を獲得するために「物件」と「集患」を大きなポイントと捉えてサポートサービスでも注力していまいす。
実際にどのような結果を生んでいるか、物件コンサルティング・内覧会サービス(パッケージコンサルティング含む)をご利用頂いた医院様の3ヶ月の新患数実績(2019年12月時点)を参考として紹介します。
こちらのグラフが、当社でサポートを行った医院様の新患数実績です。最初の3ヵ月平均で300人程度、多いところでは最大700人近くの新患数を獲得しています。この実績を見ると、年収1000万円以上も現実的なプランとしてしっくりくるのではないでしょうか?
また、集患力が強いと思われがちな商業施設や駅近と比べても、住宅地・郊外での集患がさほど見劣りしないのは、どのような場所でも適切なマーケティング・集患対策ができているからこそだと言えます。「駅近と郊外のの立地別メリット・デメリット比較」でも説明しているとおり、それぞれの立地で特性があるので、強みを活かした物件選定・集患を行うことが大切です。
歯科医院開業で利益を出すには、物件と集患のほかにも様々な施策を行わなくてはいけません。
そこで、歯科開業で何をすべきか、全般の流れについて分かりやすくまとめた歯科開業セミナーを当社で開催しています。開業で難しいと思われやすいテーマを噛み砕いてご説明していますので、併せてご覧ください。
自分の場合はどうしたらいいかなど迷いがあれば、当社までお気軽にお問合せ下さい。歯科開業サポートの担当が、個別のご相談に応じさせて頂きます。
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