歯科医院の開業を進めていく際には、今までとは違う様々な業種の方と取引を行います。今回は、歯科医院の開業を進めていく中で関わってくる法律にはどんなものがあるのか?という豆知識を、実際の例を挙げながら紹介していきます。
歯科開業の際にどんな業者と取引するのかは、別記事で紹介していますのでご参考ください。
歯科開業に関連する各種法律と例
それでは早速、開業に関わる法律や取り決めと例を紹介します。
不動産登記法
不動産(土地・建物)の権利関係を記す制度を不動産登記制度と言い、制度について定めた法律が不動産登記法になります。通常は登記事項証明書などで登記状況を調査した上で賃貸借契約や売買契約を結びますが、何等かの理由で未登記・差押登記など登記に問題がある物件、最悪その物件での開業はできないケースもあります。
不動産の仲介契約を結んでいる場合には仲介者に重要説明義務があるので、契約時によく確認しましょう。(宅地建物取引業法 第35条・第47条1項)
なお、登記事項証明書は開設する際に保健所に提出が必要です。提出書類については「歯科医院開業時の保健所届出の流れと注意点」で解説しているので、参考になさってください。
都市計画法
土地には市区町村が使い方を定めている区域もあり、目的外の建物を建てる場合には都市計画法で県知事の許可が必要になります。
例えば、住居専用地域で診療所を開設するなどといった場合にはこのような制限を受けることになります。開業物件が用途地域かどうか?どのような種別か?という事にも十分注意しましょう。
消防法
事業所や公衆が出入りする場所では消防設備の設置し防火管理を実施する必要があり、申請は所轄の消防署に行って消防長等の同意(消防同意)を得る形で行います。
自動火災報知機の設置義務など、業種や建物区分により求められる消防設備も変わり、内装工事にも影響が出ます。この事情を知らずに内装設計を行うと、求められる設備基準に満たず後から追加工事が必要になったり、必要ない消防設備を取り入れてしまったり、逆に費用が高くなる場合もあるので注意しましょう。
ただし同法の実施は任意で建物のオーナー判断にもよるので、場合に応じて対応しましょう。
高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律
通称バリアフリー新法とも呼ばれ、“高齢者、障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保”
することを目的とし、建築物・交通施設などのバリアフリー対策を一体的に整備するために平成18年に施工された法律です。バリアフリーの認定を受けるには定められた基準に適合する必要があるので、申請方法など詳細は所管行政庁に確認しましょう。
厳密にバリアフリーの基準を全て満たすのは中々難しいことですが、仮に基準を満たせなくとも、医院設計はあくまで患者さん目線での配慮を心がけましょう。
屋外広告物法
屋外の景観を維持するために設けられた法律で、歯科開業では景観を阻害するような看板が規制対象になります。都道府県ごとに基準が定められているので、詳しくは各開業地域の条例をお確かめ下さい。
医療広告規制
医療法第6条の5で定められている通り、歯科医院では規定外の広告を禁止されています。看板や印刷物に記載する内容も限られているので、広告を出す時は十分に注意しましょう。
詳しくは「注意すべき医療広告規制!限定解除とは?」で解説しています。
歯科医師法
歯科医師の業務範囲や資格について記された法律で、歯科医師には診療の義務やカルテ作成・保管の義務、守秘義務などがあります。
違反例として、歯科医師以外の者が治療行為に当たる、レセプトの架空請求を行う、などが起訴事例で見受けられます。開業し事業主(開設者)となる以上、法の順守については自分のみならずスタッフにも徹底するよう注意しましょう。
歯科衛生士法
歯科医師法と同じく、衛生士の業務範囲や資格について定められた法律です。歯科衛生士は国家資格であり、”歯牙及び口腔の疾患の予防処置”、”歯科診療の補助”、”歯科保健指導”ができるとされています。
歯科医師法の例でも取り上げましたが、規定外業務を行う事は法律で禁止されているので、十分に注意しましょう。
労働基準法
労働者は労働基準法や関連法によって多くの権利が保護されています。これを知らずに雇用主が労働者に対して不利益を与える行動をとった場合労使トラブルに発展する危険性があるので注意しましょう。歯科でもスタッフさんの雇用管理を行うので、雇用者(開設者)が受け持つ責任はたくさんあります。
労働関係の法律には労働基準法を含む労働三法のほか、労働者災害補償保険法、雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法、育児・介護休業法なども関係し、採用では雇用対策法(年齢制限の禁止)、職業安定法などにも気を付ける必要があります。
いかがでしたでしょうか?普段の生活や歯科診療の現場ではなかなか関わりのない事例や法律が多かったことと思います。
しかし、開業に際し色々な業種の方と契約を締結する中で、そのサービスが真に適正かどうか、これらの法律を把握しながら判断していかなくてはなりません。自分ひとりですべてをカバーするのは大変な作業で、不慣れな分野ではトラブルが起きると対応に困ることもあるかと思います。
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