今回は「開業するのとしないのとどちらが良いのか?」をテーマに、開業する人・しない人の割合から見た現状と、開業する・しない・開業方法別のメリットとデメリットをご紹介します。
開業しない人が増えている?歯科開業率の推移
歯科医師といえば、昔は必ずと言っていいほど開業される方が多かったですが、今はその偏重も薄れてきました。歯科医師の開業年齢でもお話した通り、開業年齢の高齢化が進んでいる影響もありますが、それだけでなく、歯科医師の価値観の中に「そもそも開業をしない」という選択肢の土壌が育ってきた事も大きいでしょう。
歯科医師数に対する歯科医院数の割合を大まかな開業率と仮定しその推移を見ると、緩やかではありますが、開業する歯科医師の割合は下降傾向にある事がわかります。
調査年 | 1996年 | 1998年 | 2000年 | 2002年 | 2004年 | 2006年 | 2008年 | 2010年 | 2012年 | 2014年 | 2016年 |
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A:歯科診療所数 | 59,357 | 61,651 | 63,361 | 65,073 | 66,557 | 67,392 | 67,779 | 68,384 | 68,474 | 68,592 | 68,940 |
B:歯科医師数 | 85,518 | 88,061 | 90,857 | 92,874 | 95,197 | 97,198 | 99,426 | 101,576 | 102,551 | 103,972 | 104,533 |
開業率(A÷B) | 69.4% | 70.0% | 69.7% | 70.1% | 69.9% | 69.3% | 68.2% | 67.3% | 66.8% | 66.0% | 66.0% |
ざっくりとした計算方法ではありますが、開業率は2002年のピーク時70.1%から、直近2016年の統計では66.0%と4.1%下落しています。ここ15年ほどの動きからも、開業をしない歯科医師が増えていることが見てとれます。
開業する歯科医師と開業しない歯科医師
開業する歯科医師数は下降傾向とはいえ、直近の開業率は66%と半数以上を占めるので、やはり多数派である事実には変わりません。しかし、残りの34%は勤務医で、その内10%はフリーランスで働く歯科医師など、昨今の働き方の多様化を示しています。
人口オーナスを迎えるこれからの日本社会では多様な働き方の環境作りが課題となっていて、政府も働き方改革を推し進めているところなので、フリーランスの枠は今後拡大していくと考えられるでしょう。
歯科業界でも、開業する・しないの道を選ぶには、それぞれにそれなりの良悪があるからに他なりません。どういった事が判断材料になるのかを見ていきましょう。
開業しないメリットとデメリット
開業しなければ、開業にまつわる責任を負う事がないので自由でいられるのが最大のメリットです。給金は全て自分の好きに使えるし、どこで働くのも、住まうのも自由です。
デメリットは、終身の雇用が約束されない事です。また、自分の体が資本になるので、長期で体調を崩すと給金が貰えなくなったり、失職する事もありますし、老年以降の雇用が安定しない事もあります。有事の際や、将来的な収入に不安を抱えるのがウィークポイントと言えるでしょう。
開業するメリットとデメリット
開業すると、患者さんに来て貰える限り収入は安定します。集患と経営収支がうまく行けば、恐らく勤務医時代より稼ぎが大きくなるでしょう。働く年齢も自分で決める事ができますし、他の常勤勤務医の方がいれば、自分が休みの日も収益を得る事ができます。
代わりに開業する際には多額の事業資金が必要となるので、大体の方は金融機関から融資を受け、長期の借入金返済の責務を負います。事業運転資金を常に用意しておく必要があるので、開業初期はキャッシュフローの維持が大変で、自分の自由になるお金があまりないと感じられるかもしれません。
また、経営者として開業した医院で起きた事には責任を持たねばなりません。これらの点が勤務医とは大きく異なり、人によってはデメリットと感じるでしょう。
開業すれば責任や金銭面での負担が重いし、開業しなければ有事の時や将来が不安…それぞれに悩ましい問題を抱えていますね。しかし、ただ悩むだけでは建設的な選択ができないので、開業すべきかどうか迷う場合は、生涯年収や自身のライフプランを考えてみるといいでしょう。
歯科医院を開業する方法とそれぞれのポイント
開業の方法も今では様々な選択肢があります。開業種類別のメリット・デメリットと、注意点を紹介しましょう。
テナント開業
歯科医院の開業で一番多い開業の方法です。
建物ありきで開業準備が進むので、莫大な建築費用が掛からないのが良い点です。内装は自己負担で、テナント契約によっては他の工事費用を負う事もあります。賃貸契約は有限で、更新がどうなるかはオーナー次第という事もあります。また、営業時間や看板の取り扱いなど、オーナーの意向によって利用条件が縛られる事があるので、契約条件をよく確認して進める事が肝要です。
一言でテナント開業といっても、出店するテナントの種類によって特徴があるので「歯科のテナント物件の特徴とメリット・デメリット」をあわせてご覧ください。
土地からの開業
土地の購入から始める場合、とにかくお金がかかります。
また、歯科として建物を建ててしまえば、他業種への転用が難しく、医院をたたむ際に苦労するかもしれません。しかし、一から建物を建てるので設計の自由度が高く、自分の理想の医院を作る事ができますし、土地や建物はいずれ資産となるので、不動産としての活用も考えていく事ができます。集患できるかどうかが肝になるので、マーケット調査を入念に行いましょう。
居抜きや継承での開業
居抜きや継承は、ある程度設備が揃った建物での開業になるので費用を安く抑えられる点がメリットですが、設備の状況によってはメンテナンス費用が余計にかかったり、設置し直さなければならなかったりするリスクも伴います。
また、人がよく集まっていた人気スポットの跡地であるなら、その集客力を集患に活かす事もできますが、逆に悪いイメージがついている場合には集患がとても難しくなります。
居抜き=商売がしやすい、継承=患者さんをそのまま引き継げる、などという安易なイメージは捨て、普通のテナント開業同様、マーケット調査や元の店舗の評判などをしっかりと調べてから話を勧めましょう。
フランチャイズ開業
フランチャイズ事業本部で治療・経営方法の実践方法を学び、グループ医院である程度経験を積んだ上で、本部が用意した集患力の期待できる建物で歯科開業をするという開業のトータルプロデュースを行ってくれるフランチャイズ事業が歯科業界の中でもあります。
安定したスピード開業が行える一方、治療法などを含めた診療・経営理念が本部と一致しないと続けていくのが難しい側面もあります。加盟料がかかりますし、条件によってロイヤリティも発生するので、自分のライフプランやキャリア設計、フランチャイズ開業した場合の事業計画をよく検討してから話を進めましょう。
開業をするかしないか、開業する場合はどのような方法で開業するのかについて、それぞれのポイントを紹介しました。
どの選択肢を取るかは各々の人生設計によりますし、自分の人生の在り方を吟味した上で開業しない・フリーランスでやっていくという働き方を採用するのも大いに良い選択でしょう。
しかし、本当は違う事をしたいのに・・・と、迷う事があれば、まずは情報を集め、選択の幅を広げる事をお勧めします。当社でも歯科開業に関するセミナーをご用意しておりますので、情報収集としてご活用頂ければと思います。
また、当社では開業に関するご相談や「自分が開業する場合は、どうなるのか?」といったご相談にもお答えしています。開業でお悩みでしたら、お気軽にお問合せください。
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