現在勤務している医院で「分院長にならないか?」と声をかけられたという先生のお話しをよく伺います。
また、逆もしかりで「分院を出したいから分院長候補を探している」「今の分院長が突然辞めてしまって困っている」などの話をよく伺います。
今回は、トピックスとして分院長にまつわる院長側・勤務されている先生側からの双方の視点での注意点を紹介します。
そもそも、なぜ分院長にまつわるトラブルが多いのか?
皆さまもご存じかとは思いますが、診療所開設には開設者・管理者が必須です。開設者は法人がなることが可能ですが、管理者は臨床研修等修了医師でなければなりません。
診療所の管理者は、医療の安全管理のための体制を確保する義務 や医師その他の従業者を監督する義務を負うなど、適正な医療が提供できるように診療所を管理する義務を負います。
医療法第10条
また、管理者は複数医院で管理者となることは出来ません。
つまり医院を分院展開する際には必ず、管理者となる分院長が必要になります。法律上誰を院長とするかの規定はありませんが、社会通念上、診療所の医院長を名乗る方は管理者を示す場合が多いようです。
分院長に関するトラブルの多くは、責任についての説明や相互理解不足によるものが多いと思われます。
例えば、分院出店の際に医療法人での開設許可申請の手続きを踏まず、個人で開設し、後に法人に吸収するなど取られるケースなどはよく聞く話です。
本来の理事長自身で開設・管理者を経て法人へ移行すればあまり大きな問題になりませんが、万が一法人側で吸収してくれない場合、雇用された勤務医は開設した際に既に個人事業主となっていますし、医療機関の開設管理者ということで社会的な大きな責任を負うこととなります。
このように法人で雇用していた勤務医に、個人での開設・管理者の責任を負わせるケースが出た場合トラブルとして問題になりやすいです。
そうならない為にも、開設者である医療法人側と管理者となる分院長の双方が、お互いのことを正しく理解し関係性を構築することが大切です。
【勤務医の先生向け】分院長にならないか?と話を持ちかけられたら
歯科医院の開設者・管理者の違いや、管理者になった時の注意点などについては別記事でも紹介しているのであわせてご覧ください。
まずは、勤務医側からの視点で以下のポイントと注意点をお話ししましょう。
- 自身のキャリア形成について
- 諸条件について
- 責任と権限について
分院長になった後のキャリア形成について
分院長の話を受ける際、自身のキャリア形成が明確であればきちんと伝えましょう。
例えば、3年間は分院長を務めるが、4年目以降は自分で開業をする意思があることなどを伝えておくことが必要です。そうすれば、法人側も引継ぎの歯科医師の採用活動を計画的に行うことが可能なので、後々トラブルにならない様にしっかりと伝えておきましょう。
分院長の諸条件について
元々法人に勤務していて、新たな分院を出す際に分院長に就任される方は特に確認し進めましょう。
基本給やインセンティブに変化があるのか?分院長の権限でどこまでのことを管理し、運営決済権があるのか。ご自身が分院長としてどの様な待遇となるのかをきちんと確認しましょう。
分院長の責任と権限について
ご自身の責任がどこまでに及ぶのかをきちんと確認し、理解をしましょう。また、権限・裁量がどこまであるのかも確認しましょう。
分院長として、経営により近いところでキャリアを積みたいと考えていても、1日の来院患者数や月売上の目標設定だけで、原価やスタッフ採用やマネジメントの考え方など、どこまでの情報を開示いただけ、裁量を持たせて頂けるかは予め確認が必要でしょう。
分院長は、法人にとっては非常に重要で大きな責任が問われるポストです。
とはいえ、ご自身のキャリア形成の上でも重要な時期となりますので、起こる全てを自分事ととらえ、自身のご開業前のいい経験をされることがよろしいのではないでしょうか。
【開業医の先生向け】分院長を任命したいと考えたら
次は、院長先生側の視点での分院長を選ぶ時の注意点です。分院長を任せる際には下記の点を検討しておく必要があるでしょう。
- 知性(医学的な知識や、勤勉性)
- 技術性(これまでのキャリア、修得治療技術、各症例数)
- 人間性(日常でのコミュニケーション力、素直さ、謙虚さ)
分院長を選ぶ時のポイント①知性について
医療行為ですので、基本的な知識はもちろん、クリニックの専行領域での知識習得は必須です。
現状の知識に甘んずることなく、日々変化する情報に向き合い最新の知識習得する勤勉さがあるかどうかは非常に重要なポイントと思います。
分院長を選ぶ時のポイント②技術性について
患者さんにダイレクトに評価されるところです。
治療技術は、正確さとスピード、状況に応じた臨機応変さが必要ですから、これまでのどの様な環境で研鑽を積んでこられたのか、その中でどのような技術を取得されてこられたかは、判断に重要な点と思います。あえて、失敗談を確認しどの様にリカバリーされたかを問う先生もいらっしゃる様です。
分院長を選ぶ時のポイント③人間性について
素直で謙虚であるかはリーダーを判断する上で重要になります。
日常の中で人を見る時は、例えば、約束の時間が守れるや発言に一貫性がある。などはその人の人柄ややまじめさを映すものですし、トラブルが発生した時に真摯に受け止め反省し改善できる方も重要です。
スタッフを束ね地域に愛されるクリニックになるかは、任せる分院長の人柄に大きく影響を受けるので人間性が良いかどうかを見極めるのは、経営として最重要項目といえます。
ここまで話した3つの要素に対する資質の特徴を、クリニックの求める人物像とし基準を設け、任命して出来るかどうかを複合的に判断されるのがよいでしょう。
実際に分院長になってもらった後に開業されては困ってしまう…と思うのが、院長の性ですが、個人のビジョンやビジネスプランもあるので、決意された先生の開業はなかなか止められないでしょう。
あの手この手で引き留めを行うよりも、普段からコミュニケーションをとっておき、分院長が辞めてしまったとしても、次の分院長候補を育てておくなど対応を常に考えておく必要があります。
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