歯科医師という職業は生涯雇用が約束されていないため、開業が現在の状況を打開する出口となってしまっているのが現状です。業界の体制が大きく変わらないかぎり、今後もこの状況は続くことが予想されます。
この出口としての開業、つまりは「周囲の人が開業し始めたから」「今のままの給与よりもっと、稼げないか」「今の歯科医院の人間関係が...」など現状の不満や不安から逃避するため、何かに突き動かされるように開業するのは大変危険です。
歯科医院を開業し成功させるには、経営者としての準備をしっかりとしておくことがとても大切です。
開業とは、ビジョンをしっかり考え、ライフ・キャリア・マネープランを自分自身でコントロールし、ブレない開業を行わなければいけません。
それでも開業か勤務医か悩まれている方は多いことかと思います。
いつが「歯科医院の開業にベストなタイミング」なのでしょうか?
最近では人生のあり方も多様化しているように、歯科医師の開業も、その人の人生の目指すべき方向によってベストのタイミングが決まっていきます。それでは、詳しくお話していきましょう。
開業のベストタイミングを計る前に!開業の環境を理解しておく
開業をするタイミングはいつがいいのかを知るために、歯科医院の開業を取り巻く状況や今後についてなどを事前に理解しておくと、開業プランも考えやすいかと思います。
インサイトでも、コンテンツの配信やセミナーなどで、これから開業をお考えの方へ向け歯科開業を現状や将来予測についてお話しています。セミナーでは、最新の開業トレンドなどをお伝えしているので、まずは情報を収集したいという先生も多くご参加いただいています。

開業のタイミングを決めるためのビジョン設計
冒頭で、目指すべき方向によってベストタイミングが決まるとお伝えしましたが、ご自身の開業ベストタイミングがいつなのか考えるために、ビジョン設計を行います。
ビジョンが大切とはよく聞くかもしれませんが、具体的にはどのような事でしょうか?
ここで言うビジョンとは、自分の人生の在り方の理想を具体的に定めたものです。
いわゆる将来の夢に似たようなものですが、成人し働いて国に税金を納め、自分や家族を養っていかねばならない大人としては、それを夢物語で終わらせる事なく、現実を見据え達成していくべき目標としてビジョンを定めなければなりません。
現在、勤務医として働き安定した収入を得て不自由のない暮らしを送っている方は、そもそも開業すべきかどうか、という事自体にも大きな迷いがあるでしょうし、開業を考えないのであれば何の為にビジョンを設定しなくてはならないのか?と疑問に思うことでしょう。
確かに、今が安定しているのであれば目先の事を考える分にはそのままでもいいでしょう。
しかし、そのままでいて10~20年先、果ては30~40年後自分が歯科医師として現役をリタイアする頃、そしてその先にある老後も、今のような満足のいく暮らしができるでしょうか?
一般の歯科医院では、終身雇用という慣行がありません。大学や総合病院でもない限り少人数構成の歯科医院に勤める事になりますが、そのまま勤務医を続けていくのであれば、職場の環境変化の影響を受けやすく、場合によっては別の身の振り方を考えてなければいけない事もあります。
例えば開設者が定年を迎え引退するといった場合、自分がその医院を継ぐ、または誰かが継承し自分は定年まで働ける、その歯科医院の患者さん層は若年~壮年層が多く、この先数十年に渡り通って頂ける方が多い(経営の安定が見込める)・・・このような理想的条件でも揃っていない限り、その医院に勤務し安定した収入を得る事は、おそらく難しくなるでしょう。
別の医院で働くにしても、その頃の自分の年齢によっては、転職先を見つけるのも大変になるかもしれません。
では、どうしたらいいのでしょうか?
それを探る為にも、ビジョンを設定してみる必要があるのです。
ビジョンを設定すると、開業を選択した方が良さそうだと思うケースや勤務医の方が良いケースも出てきます。いずれにせよ、現在考えている今後の人生設計がきちんと形になるのか、歯科医師として心身ともに豊な人生が送れるのか、ビジョン設計を通してあらゆる角度から見つめ直す必要があります。
ビジョン設計に大切な3つのプラン
まず、ビジョンを設計するために、次の3つのプランを立てていきます。
- ライフプラン
- キャリアプラン
- マネープラン
それぞれのプランを整理しやすいように、現時点をスタートにした年別の表を作ります。
表のイメージは下記のようなもので良いでしょう。

直近はイメージもつきやすいので、大きめに幅を取っていき、1年後・3年後・5年後・10年後・20年後・・・とその時何歳かを記載します。
きれいに書くことが目的ではなく、考えをまとめることが目的ですので、手書きで何ら問題はありません。
インサイトでは、ビジョン設計シートのテンプレートを会員様向けに配信しています。手書きでも全く問題ございませんが、テンプレートがあった方が考えやすいという方は、DLされてみてください。
・参考:開業に役立つテンプレート集
事前準備が出来たら、この表をベースに、早速3つのプランを考えていきましょう。
ライフプランの設計!どんな生活を送りたいか

ここでは、自分自身だけでなく配偶者・子供・両親が「いつ、どんな風になっているか、どうなりたいか、いくら必要か」を書いていきます。
上記のサンプル画像は、既にご結婚されている場合のものでしたが、ご結婚を今後お考えの方はその費用や時期もここに書き出しておきましょう。
「マイホームが欲しい」と思ったら、いつぐらいに購入し、リフォームはいつ行うか?買替はいつ頃にするか?必要なことを考えて書き込んでおきましょう。他にも「車を購入したい」と考えるのなら、車検や買替はいつか?ということもプランニングします。
お子さんが二人いる場合、保育園・幼稚園、小学校、中学校、高校、習い事や塾、大学などそれぞれ「いつ、いくら必要か」を書き出します。また、子供の結婚や住宅購入など援助する場合もだいたいいくらくらい用意していくかなども考えておいてください。
他にも両親が高齢になると介護が必要な場合もあります。介護費用などもプランに必要です。
このようなライフイベントの考え方については、インサイトの録画配信セミナーでも詳しく解説していますので、是非ご参考にされてください。
インサイトの『録画配信セミナー』
歯科医師としてのキャリアプラン設計

次に自分が仕事上どうなっていきたいかといった自己のキャリアについて書いていきます。
大学を卒業し研修を終えたその後、勤務医として研鑽を積む期間、目標(例えば口腔外科に力を入れている医院で働き、専門知識と技術に磨きをかけるなど)が決まっていれば書き起こしましょう。
その後、開業をいつ頃しようかと漠然とでもイメージがあるのであればいつ開業をいつするかも書いておきます。
キャリアプランを実行するために、法人の医院で院長を務める、個人開業医院で副院長になるといった、具体的な内容も書いていきましょう。さらに開業後の年収・分院展開や法人化はいつ頃行うかなどの、先の目標も記入しましょう。
マネープランの設計!2つのプランから書き出そう

先ほどの2つのプランと見比べながら、その頃の収入とイベントごとの支出について書いていきましょう。支出に向けた貯蓄をどの時期にいくらためるべきなのかということも、記入していきます。
マネープランの収入については、「勤務医のままでいるか」「開業をするか」によって、考え方が大きく変わります。キャリアプランで考えた開業後のイメージで収入がどれ位見込めるのか?については、概算で事業計画を作成すると良いでしょう。
「事業計画の立て方が分からない」「事業計画を作成してほしい」など、希望がございましたらご相談は無料で承っていますので、お気軽にお問合せください。
3つのプラン設計が連動しているか整合性を確かめよう
ここまで、3つのプラン設計を書き出しました。最後にこのプランがしっかりと連動できているか見直しをされてください。
ライフプラン、キャリアプラン、マネープランの順番に紹介しましたが、順番は書きやすいものからでかまいません。このプランの立て方は、最後に見直した時に、このプランを実行するにはこれも必要だなと付け足したり、消したりしながら、考えをまとめていくものです。
まずは書きやすい所から埋めていき、連動して浮かんだところを続けて書いていくような進め方で書き出されてみてください。
例えば、勤務医時代に結婚し、後は開業医として成功しながら子供二人を大学卒業まで育て上げ、90歳で天寿を全うするというおおまかなライフプランがあるとします。65歳まで働くと仮定して、リタイア後もそれなりに過ごしたいと考えるのであれば、収入がある現役時代に稼ぐ必要があるでしょう。
これに対し、勤務医として働き、10年後には独立できるだけの臨床経験も積み上げ、年収は800万。その後開業し、年収は1000万、1500万、2000万…と段階的にアップして、65歳まで開業医として働き続けるというキャリア設計を立てるとします。
この場合、マネープランですが、「開業資金が不安な人必見!自己資金なしでも開業できる?」や「歯科の開業資金や自己資金はどのくらい必要?」でも触れていますが、近年は前開業総資金が8,000万~1億円ほど必要になります。
結婚や子供の養育もあるとすると、もともとの資産がない限りは、大学卒業から10年の間に5000万円以上を貯蓄し、開業資金を全てキャッシュで賄うのはかなり厳しいでしょう。
多くの方は、できる限りの自己資金を貯め、残りは融資を受けて開業する場合がほとんどです。
また、融資を得られても返済が必要なので、まずは2~3年内に医院経営を軌道にのせ、年商は○万、その内経費は○万、借入金返済額は均等に15年で完済。その間に子供の進学、車の買い替えなどの費用を予測していた時期に貯蓄から支払い、○年後にはキャッシュフローも黒字となってライフプラン通りの人生が送れる…というような考え方になります。
開業ベストタイミングの為に今すべき事
これまでビジョン設計のために3つのプランをたてる方法をお伝えしました。
ライフ・キャリア・マネーの3つのプランを並べて考えてみたら、いつまでになにをすべきかが見えてきたでしょうか?多くの方は、「考えることが多くて何から手を付ければいいか悩む」「このプランニングで本当にいいのか?」などのギモンも生まれるかと思います。
インサイトでは、開業するしないに関わらず、先生方が思い描いているイメージの整理とアウトプットの場として、プラン設計のご相談も賜っております。
インサイトではライフプランと事業計画からキャッシュフローを確認しプランニングしています。
歯科医師のためのライフプランニングセミナー
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第一弾!夢を実現するライフプランとキャッシュフロー設計とは
※第二弾は公開までお待ちください。公開前にプラン策定ご希望の方はお気軽にお問合せください。
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将来かかるお金の試算や開業・分院有無の収入比較などのご相談も無料で承っています!
また、開業をいつするかどうか迷うなど、お悩みは尽きないことかと存じます。
そんな時は、開業の環境を理解しておくでもお伝えした通り、情報収集から始められてはいかがでしょうか?インサイトでは、開業に関する情報をセミナーでお伝えしていますので、是非ご参加いただければと思います。