開業を考え始めると、収入がどのように変化するのか気になる方も多いでしょう。
「開業するとどのくらいの年収が得られるか?」「勤務医と開業医で収入や年収がどのくらい変わるのか」を、賃金構造基本統計調査のデータを基に紹介していきましょう。
この賃金構造基本統計調査ですが、調査の対象については1事業所で4人以下の場合は対象外となっているようです。歯科医院は小規模で行っている診療所も多いことや、調査対象の人数が少ないこともあり、実際の歯科医師の年収とズレが出ている可能性があります。
あくまで、傾向や参考としてご覧ください。
調査の対象となる事業所について
Q1-8:事業所の常用労働者数が少ない場合は、調査対象にはならないのですか。例えば、事業所の常用労働者数が10人から3人に減少した場合は、調査票が届いても回答する必要はないでしょうか。
A1-8: 6月30日現在において、選定条件(Q&A1-7参照)を満たさない場合は、調査の対象になりません。お手数ですが、調査票の提出先(調査用品が封入されていた封筒の表面に記載)までご連絡をお願いします。
A1-7:全国の「常用労働者5~9人の民営事業所のうち、企業の国内常用雇用者が5~9人である民営事業所」、「常用労働者10人以上の民営事業所」、「常用労働者10人以上の公営事業所」のいずれかに該当する事業所から毎年無作為に選んでいます。(以下略)
賃金構造基本統計調査
歯科医師の平均年収はどれ位なのか?
まずは、歯科医師の歯科医師の平均年収とその推移を算出しました。

この表で掲載している「きまって支給する現金給与額」は、次の通りです。
労働契約、労働協約あるいは事業所の就業規則などによってあらかじめ定められている支給条件、算定方法によって6月分として支給された現金給与額をいう。手取り額でなく、所得税、社会保険料などを控除する前の額である。
現金給与額には、基本給、職務手当、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などが含まれるほか、超過労働給与額も含まれる。1か月を超え、3か月以内の期間で算定される給与についても、6月に支給されたものは含まれ、遅払いなどで支払いが遅れても、6月分となっているものは含まれる。給与改訂に伴う5月分以前の追給額は含まれない。
現金給与のみであり、現物給与は含んでいない。
賃金構造基本統計調査
また「所定内給与額」とは、時間外手当等の「超過労働給与額」を差し引いた現金給与のことをいいます。
平均年収を算出するにあたり「きまって支給する現金給与額」に12ヶ月分をかけた「年間給与額想定」と「年間賞与その他特別給与額」を足したものを年収としています。
上記の表における平均年収の推移をグラフ化したものが次の図です。

直近の2023年年収想定は約920万円で、2011年から2023年の13年間の平均は、約750万円となっています。
歯科医師全体で見てみるとこのような推移になっていますが、年代別ではどのように推移しているのでしょうか?年代別の平均年収を見ていきましょう。
歯科医師の年代別平均年収

上記の表は、年代別の平均年収を表にしたものです。
賃金構造基本統計調査の資料から抜粋した内容ですが、直近の年収は以下のようになっています。

2023年の統計上では、歯科医師全体だと60~64歳の頃が年収のピークで、約1,400万円となっています。男女別にみてみると、男性のピークが60~64歳頃で、約1,900万円に対して、女性のピークは50~59歳に約1,200万円となっています。
男女別に見ると、女性の年収は35~44歳辺り以降から伸び始めているように見えますが、30代前半まではご結婚されたりお子さんを育てたりと、一時的に職場から離れる世代として一般的に付随する兆候ともいえるでしょう。
賃金構造基本統計調査以外から分かる歯科医師年収
ここまで賃金構造基本統計調査の情報を基に年収を算出してきました。
歯科医師の年収に関する調査については職種別民間給与実態調査からも大よその平均年収が算出できます。
どのようになっているのかを見ていきましょう。
職種別民間給与実態調査
職種別民間給与実態調査は人事院が調査している統計です。この統計についても、職種別に給与が公表されており、今回は2023年4月の給与から平均年収を算出しました。

職種別民間給与実態調査では、調査対象が、企業規模50人以上かつ事業所規模50人以上の事業所となっており、規模が大きい医院へ勤める歯科医師の方が調査対象となっています。
上記の図では、2023年の決まって支給する給与を年齢別に掲載しています。こちらの統計上では、44~48歳で1,000万円近く、52歳以降のタイミングで1,000万円を超える結果となっています。
開業医と勤務医だと年収ってどう変わる?
年収の状況や傾向については、統計データの内容からご理解いただけたかと思います。
しかし、どちらの統計情報も実施数や調査対象などに条件があり、実際とは異なっている可能性があります。また、歯科医師は年齢や開業医か勤務医なのかにより、年収や収入モデルが大きく異なります。
開業医と勤務医では年収はどれほど変わるものでしょうか?開業の条件にもよるので、一概には言えませんが、例として当社で開業した先生の場合の年収で考えてみましょう。
インサイトでご開業した先生の年収モデル比較
勤務医時代の年収
- 東京都内の歯科医院(医療法人)に勤務
- 勤務先の規模:分院 歯科医師2名/衛生士3名/歯科助手3名
- 勤務先の来患数:1日35~45人
- 勤務形態:常勤歯科医師として週5日勤務
- 先生個人の診療状況:1日平均15人
⇒年収800万円
ご紹介した先生は、ご実家は神奈川県にあり、ご両親も健在です。自分が生まれ育った場所でもあるので、かねてより神奈川のご実家の近くで開業を希望されていました。
この状況に基づき開業を考えると、収入は以下のように想定できます。
開業医になった場合の年収
- 神奈川県○○区の歯科医院(個人開業)を経営、勤務
- 初年度年商:4,500万円 (月商370万円)
- 開業医院の規模:歯科医師1名/衛生士2名/歯科助手2名
- 開業医院の来患数: 1日25人
⇒個人所得:1,100~1,500万円程度
※こちらはインサイトで実際に担当した歯科開業事例がモデルのため、当社でご開業サポートを行った場合の年収例です。
この規模ですと、一般的な固定費(人件費、自身の生活費を含む)が180~250万はかかるので、開業後の月商が300万円程度より上になれば生活・経営が安定すると考えられます。
あくまで参考の例ですが、勤務医と開業医とでは おおよそ年収に300~700万ほどの違いがでることがわかります。開業医院の規模や運営の方法次第では、収入の開きはより大きくなることもあります。
さらに生涯収入についても考えてみましょう。

定年については2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法で、2025年4月からすべての企業で「65歳以上の雇用確保」が義務化、「70歳までの就業確保」が努力義務となりました。
2022年の就労条件総合調査(人数規模30名以上の企業対象)を参考にすると、医療・福祉業界では99.3%が定年制を導入し、一律した定年制を定めている事業所の内、定年65歳以上が約6割という状況です。
定年はいずれ70歳に引き上げられるとも推測されていますが、まずは現時点での定年まで働いたケースで考えてみましょう。仮に35歳でご開業されて65歳まで経営をつづけた場合、勤務医を続ける場合と比べて、生涯収入に1~2億円のアドバンテージがあると計算できます。
また、開業した場合は、いつまで働くかを自分で決めることができます。それに対し、勤務医の場合、ある程度の年齢になると「何歳まで働けるか分からず、院長の裁量次第で不安だ」というお話しをしばしば伺います。
これらのことから、経営を軌道に乗せることが出来れば、開業にも大きなメリットや意義があるといえるでしょう。
参考例として開業医時代と勤務医時代の収入・年収モデルの比較を紹介しましたが、ただ開業したからといって、先ほどの例のような収入モデルになるとは限りません。
など、様々な要因により、開業後の収入も大きく変わってきます。開業後に、安定的な収入を得るためには、開業に関する準備や計画をしっかりとたてる必要があります。
開業の進め方や全体像につきましては、歯科開業セミナーや他の記事でも紹介していますので、あわせてご覧ください。
また、開業コンサルティングを行うインサイトでは、コンサルタントがライフプランやビジョンのヒアリングを行い「自分が開業する場合は、どうなるのか?」といったご相談にもお答えしています。
インサイトではライフプランと事業計画からキャッシュフローを確認しプランニングしています。
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第一弾!夢を実現するライフプランとキャッシュフロー設計とは
※第二弾は公開までお待ちください。公開前にプラン策定ご希望の方はお気軽にお問合せください。
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