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歯科医師の地域偏在 -不足地域・格差とその傾向-

歯科医師の不足地域と地域格差
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歯科医師の地域偏在や不足している地域があることはご存知の方も多いのではないでしょうか?歯科医師過剰問題が取り沙汰される近年、同様に歯科医師が都心に集中することによって、地域に偏在が起こり、歯科医師不足が出ている地域が存在します。

今回は、地域格差や不足地域・歯科医師の地域偏在について解説していきます。歯科業界の現状と将来予測については、他でも解説していますので、併せてご覧ください。

無歯科医地区等調査からみた地域偏在

令和元年度に厚生労働省は、全国の無歯科医地区の実態と医療確保の実態を調査した「歯科医地区等調査」を発表しました。

年度昭和46年昭和53年昭和59年平成元年平成6年平成11年平成16年平成21年平成26年令和元年
人口1,783,9571,442,004786,395544,824417,037383,113295,480236,527206,109178,463
歯科医地区等調査

この結果から、無歯科地区は減少傾向にあるものの、178,463人(約18万人)ほどの方が、歯科医療を受けられない状況になっています。

2019年10月の総務省人口推計で最も少ない県の人口が55.6万人ですが、単純に数値だけ当てこめば、その県のおよそ3分の1が治療を受けられないほどの数値とも言えます。

もちろん無歯科地区は地域ごとに偏在しているので、どこかの県にそのまま比重が偏るような事は決してありません。ここではあくまで18万という数値がどれほどの影響力を持つ数なのかという事をご想像頂ければと思います。

それでは、地域別に無歯科人口の数を見てみましょう。

都道府県平成21年10月末平成26年10月末令和元年10月末
北海道12,84210,6339,467
青森県2,2344,1433,217
岩手県5,6635,4714,488
宮城県4,7276,7243,098
秋田県1,6201,338803
山形県1,008226189
福島県4,7652,1761,327
茨城県3,2963,1433,836
栃木県7,1847,7086,870
群馬県3,6614,2503,875
埼玉県000
千葉県000
東京都60600
神奈川県000
新潟県7,1444,2863,353
富山県2,1832,6681,658
石川県5,4314,1512,638
福井県1,7681,480675
山梨県1,8331,6603,022
長野県9,1079,02310,789
岐阜県3,7501,9102,545
静岡県4,0833,4214,695
愛知県8,7048,9324,255
三重県4867981,109
滋賀県659799762
京都府6,1327,3185,697
大阪府000
兵庫県1,7082,8344,065
奈良県3,7582,8764,389
和歌山県7,9037,4545,836
鳥取県312264191
島根県10,0139,64310,422
岡山県15,92912,70611,348
広島県12,1999,6228,091
山口県10,4416,0591,495
徳島県4,9622,9452,168
香川県2,0351,9941,791
愛媛県9,2418,9957,399
高知県11,1798,1405,844
福岡県5,0165,2783,964
佐賀県1,3461,086111
長崎県2,8571,466923
熊本県5,7795,0764,456
大分県12,69313,30611,615
宮崎県5,3063,9213,246
鹿児島県11,6496,6889,081
沖縄県3,3153,4983,660
全国計236,527206,109178,463
都道府県別無歯科医人口数

上記無歯科医人口数が0を含む5段階で色分けしたものが地図の表になります。都心部の東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪では、無歯科医人口が0人でした。反対に、長野・島根・岡山・大分は無歯科人口数が多くみられます。

しかし、無歯科医人口が多いところは歯科診療が受けにくいかというと、必ずしもそうとは限りません。そこで、別の視点からも地域偏在を検証してみることにしましょう。

人口10万対歯科医師数からみる地域偏在

医師・歯科医師・薬剤師統計(令和2年12月31日現在)発表されている、人口10万対歯科医師数を地域別にみてみましょう。

都道府県歯科医師数
北海道84.6
青森県59.4
岩手県83.9
宮城県82.4
秋田県64.5
山形県63.5
福島県76.6
茨城県69
栃木県71.7
群馬県73.3
埼玉県75.9
千葉県83.1
東京都122.8
神奈川県82.3
新潟県94.3
富山県62.8
石川県65.3
福井県60.6
山梨県73.1
長野県81
岐阜県87.7
静岡県65.4
愛知県81.7
三重県66.7
滋賀県59.3
京都府76.5
大阪府92.6
兵庫県75.8
奈良県72.3
和歌山県78.8
鳥取県66.7
島根県60.9
岡山県95.7
広島県93.3
山口県73.8
徳島県118
香川県77.8
愛媛県70.6
高知県71.9
福岡県110.5
佐賀県76
長崎県91.7
熊本県79.2
大分県65.8
宮崎県68.3
鹿児島県85.1
沖縄県60.3
全国85.2
都道府県別対10万人あたりの歯科医師数

人口10万対歯科医師数は、東京都が最も多く、徳島・福岡と続いています。逆に歯科医師数が最も少ないのは滋賀県で、59.3人となっています。無歯科医地区等調査と人口10万対歯科医師数からみて分かる通り、都道府県別でみても、歯科医師数は地域によって偏在しています。

また、無歯科医地域がある北海道と岡山県での人口10万対歯科医師数をみると、全国平均よりも歯科医師数が多くなっています。つまりは、各都道府県での偏りだけでなくその地域からさらに地域格差が出ていることが読み取れます。

このように、歯科医師が不足する地域が出ていたり、地域内でも偏在が出るのには様々な理由があります。

地方と比べると都心部の所得は相対的に高くなりますし、所得に余力があるほど治療や予防にお金を掛けてくれるという、ある種患者さんの所得状況の影響を受けやすい歯科医業の特性を考えても、歯科医師が都心部に集中してしまうのは仕方のない事と言えるでしょう。

また、地域内の偏在については、歯科医院の新規開業を取り巻く環境と現状でも解説している通り、歯科医師が自分のライフスタイルから開業場所を決めるという従来の方法が未だ定着しているのが一つの要因です。

自分の卒業した歯科大学の周囲や、勤務した事のある場所の近くなど、慣れ親しんだ所であれば開業しやすいという思い込みを捨て、各地域の需要やニーズを把握した上で開業する様にならなければ、なかなか解決しない問題でしょう。

とはいえ、単に地域の需要を重視するという事にも懸念があり、人口の集まりやすい場所だと集患できる=医業収入を得やすい(勤務医の場合は求人がある、キャリアが積みやすい)と考え、地域内の都市部に極度に歯科医師が集中しやすくもなります。

そうなると都市部への歯科偏在がますます激化し、そのエリア以外の患者さんが診療を受けにくくなるばかりか、競合医院が増える事で歯科経営そのものも圧迫を受け、集患がうまくいかない歯科医院は淘汰されてしまいます。

地域偏在は、歯科開業にとっても脅威になり得るのです。しかし、このような地域内の偏りについては開業時にマーケット分析を行う事によりある程度の回避は可能になります。

まずは、自分の生活圏や都市の駅近くなどで開業するのが一番という思い込みを捨て、たとえ郊外でも、都市を離れた市街地でも、集患できる医院作りを目指していきましょう。

そうはいっても、立地をどう決めたらいいかなど、歯科開業に適した物件選定にはかなりの知識と労力を要します。インサイトでは、歯科医院にお勧めの物件情報の一部をWEBでも公開しています。

開業に向けては、立地や物件の他にも、事業資金の準備や集患の為に何をしたらいいかなど、やるべき事は山積みです。

開業を考えるのであれば、まずは全体的な流れと、それぞれの要点を把握するのが成功への近道です。当社では、将来の業界マーケットの予測から、今の歯科開業で抑えるべきポイントをお伝えするセミナーを開催しております。

その他「開業について個別に話を聞いてみたい」などございましたら、お気軽にご相談ください。

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