歯科業界の動向と10年後の未来とは?でもお伝えしている通り、これからの歯科医療はサービス業的側面が進むことが予想されます。サービス的側面が増加していくと予想されるなか、これからの歯科医院は何をすればいいのか?サービス的側面とは何かなどをテーマにお話しします。
一般的なサービス業と医療におけるサービスの違い
○サービス業とは
- 目的:営利目的(利益は社員へ還元、設備投資や開発に充てる)
- サービスの質:客がお金を支払いたいと思えるサービスを提供
- サービスの対価:客が支払うお金(売掛金回収)で利益を充当
○医療とは
- 目的:医療提供(営利目的ではない)
- サービスの質:患者さんを直すための医療を提供
- サービスの対価:診療費(患者さんの支払う保険負担費用+国の保険支払(国民の税金))
※自費以外、個人支払いが直接利益に充たるわけではない。
おおまかに分けて、上記のような違いがあります。医療がサービスか否かという話は、賛否両論に分かれているのが現状です。
産業分類では明確にサービス業と決められています。
経済産業では、医療・福祉が“第3次産業(非製造業、広義のサービス業)”に分類されており、国税庁の「消費税法基本通達」では第五種事業のサービス業等の中に仕分けされています。
また、その元となる総務省「日本標準産業分類」(平成25年10月改定版)では大分類コードPとして取り扱われており、この分類コードの説明の中には
医療業とは,医師又は歯科医師等が患者に対して医業又は医業類似行為を行う事業所及びこれに直接関連するサービスを提供する事業所をいう。
日本標準産業分類
という記述も見受けられます。
平成7年の「厚生白書」でも、それまで”医療提供”と記されていた文言が「医療サービス」に代わり、
医療サービスが患者のニーズにそって提供されることが,患者の満足度を大きくするために重要
医療サービスの質が,医師等医療従事者の資質によるところが大きいという認識
厚生白書
との記載もあります。
一方医療法第七条では
営利を目的として、病院、診療所又は助産所を開設しようとする者に対しては、第四項の規定にかかわらず、第一項の許可を与えないことができる。
医療法第七条
とあり、営利目的の医療を許さないとも判断できる条項があるので、見解が分かれる所のようですね。
しかし、歯科医療がサービス業かどうかと言う定義とは別に、人口統計や歯科医院数から見てみると、サービス業的側面が増えると言う点において、避けては通れない道だということは、先生ご自身が肌で感じられているのではないでしょうか?
なぜ歯科医療のサービス業的側面が増加していくのか?については、冒頭でも触れた通り、歯科業界の動向と10年後の未来【まとめ】や30年後の人口予測から推測される歯科開業の動向と将来予測をご参考ください。
少し話がそれてしまいましたが、今回は「医療がサービス業かどうか」の定義ではなく、サービス業的側面が増加すると予測される歯科医療で、歯科医院はどのようにしていけばいいのか?について紹介していきます。
サービス業的側面で歯科医療で求められること
先ほども簡単に触れましたが、今回のテーマでは、歯科医院が患者さんに求められていることは何か?歯科医療をよりよく患者さんに提供するために出来ることは何か?と言う視点で考えることが大切です。
患者さんに求められること全てに応じるのではなく、患者さんが歯科医療を受けやすくなるということに的を絞りましょう。患者さんが医療を受けやすくなるという事は、結果として集患につながり、ひいては医院の「安定的経営」へとつながるので、実現することが何よりも大切です。
このことを証明するように、近年は以下のサービスを行う歯科医院が大分増えてきました。
- 土日祝日の診療
- 早朝や夜間の診療
- 予約システムやWEB予約
- 患者さんへの説明ツール、説明サービスの充実
- キッズ倶楽部、キッズスペースの確保
- マタニティ向けの歯科治療
- 訪問診療
当社でも、開業支援をさせて頂く時は、競合医院との差別化も考慮しながら、先生の診療スタイル・ビジョンをヒアリングし提案させて頂いていますが、今後もアクティブシニア、小児向けのものや、地域の方に合わせたサービス業的側面を充実させた歯科医療提供を考えていく必要があるでしょう。
進化する歯科?サービス業的側面の充実と差別化が面白い歯科医院
サービス業的側面が進んでいる歯科医院の中でも、他より抜きん出たサービスを持つ歯科医院や、独創的でユニークな歯科医院をご紹介します。
モチーフ系歯科医院
メイドやキャラクターなど、スタッフがそれぞれテーマの恰好に扮して応対をしている歯科医院があります。患者さんがリラックスして治療を受けられるようにとの配慮で、非常に面白い取り組みですね。競合との差別化もよくできています。
ただし、実行する場合には保健所の立入検査要項や、医療広告規制などへの注意が必要です。
テーマ系の付加サービスを充実させた歯科医院
キッズ、マタニティ、美容などの医院テーマに合わせて、歯科以外のサービスを充実させている歯科医院も多く見られるようになりました。小児向けの診療を主に診ている歯科医院では、お子様の衣装を貸出、フォトスタジオを用意しているところなどもあります。
審美などの自費診療では、エステやネイルサロンが併設されていることもあり「審美」を追及する患者さんの理に適うサービスを提供しているといえるでしょう。この場合、医療行為をおこなう場所とそれ以外との区分を明確にするよう注意が必要です。またテーマによっては患者さんをセグメントしていることになるので、一般的な歯科医院の開業とは別のマーケティング力が必要になります。
目玉になる何かを歯科医院の設備にしている
最新テクノロジーロボットが予約を受け付けたり、待合室にいる患者さんの相手をしたり…これもかなりユニークな発想です。もちろん、最新技術には費用も相応に掛かるので、その設備を置くことでどれだけの費用対効果が出てキャッシュが回るのかということに注意が必要です。
坪面積と賃料、ユニット台数等、各種経費から計算し、医院を安定的に経営できるかの事業計画をきちんと立てた上で検討しましょう。
かなり独創的でユニークな歯科医院の例をあげましたが、このようなオリジナリティあふれる歯科医院が増えてきたのも、やはり、歯科医療そのもののサービス業的側面化が進んでいることが根本にあるのではないでしょうか?
このような独自性を出していくには、基本となるマーケティングと事業の計画、資金の調達や立地や物件の選定が何よりも大切です。また、歯科医院は歯科医療を提供するための場所であるという基軸から、道を外してはなりません。
こういったテーマの歯科医院にしたいということばかりを押し進めてしまい、患者さんが集まらない、キャッシュがまわらないなどで、失敗したら本末転倒です。
あくまで歯科医院の本分を忘れず、バランスを重視した運営を心がけましょう。しっかりとした事業計画を立て、最初に開設する医院は一般歯科とし、分院でテーマ型の歯科を開設する先生も多くいらっしゃいます。
今回はかなり新しいコンセプト歯科医院を例にあげましたが、先生によって診療スタイルも異なるはずです。どのような診療を行うために、いかなるテーマで具体的に何を提供していくか?計画に迷う場合は、一度インサイトにご相談ください。安定的な経営をベースとした、ご希望をかなえていくための提案を行います。
歯科経営の早期安定化に重要なポイントについては、インサイトの歯科開業セミナーで分かりやすくお伝えしていますので、是非ご活用頂ければ幸いです。
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