近年では、メディアなどでも歯科医師過剰やワーキングプアなどと大きく取り沙汰され「歯科医院の開業=儲からない」というイメージを想像される方が多くなってきました。
たしかに、過去にはどのような立地で開業してもひと昔前であれば儲かっていたでしょう。しかし、現在の歯科業界を取り巻く環境では、歯科医師免許を頼りに、ただ開業するだけでは儲からないのが実情です。
歯科と同様、儲かると言われていた士業でも同じ様な現象が起きています。例えば司法書士も、一時は過払い金対応などでそれなりの盛況を見せましたが、今ではその特需も納まり、ワーキングプアが加速していると耳にします。
決して儲からないというわけではありませんが、歯科や士業だから儲かるという昔ながらの概念を捨てなければ今はやっていけません。日本経済が不況に追い込まれて以来、それはどの職業でも同じ事が言えるでしょう。
医療で大きな割合を占めるのが保険診療なので、歯科医院が儲かるか儲からないかは、どれだけ多くの患者さんに来院してもらうかが大きく関ります。
社会情勢の影響を等しく受けるのであれば、儲かる医院と儲からない医院の一体何が違うのでしょうか?そのポイントを比べていきましょう。
開業前から差がつく!儲かる医院と儲からない医院の違い
儲かる医院と儲からない歯科医院では、実は開業前の準備段階の時から大きな違いがあります。先ほども述べた通り、儲ける為には集患を増やす必要がありますが、患者さんを集めるにはある一定の条件を満たす必要があります。
- 立地に集患性があるか
- 物件の視認性や認知性は十分か
- その地域に歯科診療のニーズがあるのか
- 自分の診療方針が患者層に適した医療を提供できるか
- 効果的な広告戦略をしかるべき時に行っているか
儲けている医院は、最低限これだけの対策を開業前にしているでしょう。何の計画やマーケティングもなく開業しても、待ち構えているのは自滅だけです。
開業前から地域のマーケティングを行い、どのような集患の働きかけを行えば患者さんに来院して貰えるかに知恵を絞り、数十年先まで経営戦略を練る・・・開業主には、単にコストをかけるだけでは収まらない自己努力が要求されます。
開業後で差が開く…儲かる医院と儲からない医院
開業前から差がつくという話をしましたが、開業前のマーケティングや準備が順調に進んだとしても、開業後に必ずしもその予測が当たるとは限りません。
開業後でも患者さんが集まる医院とそうでない医院には違いがあり、その詳細を比べてみると、以下の理由が見受けられます。
【患者さん目線での医院作りができていない】
ホームページの修正が面倒だったので、スタッフ変更や診療時間変更を載せなかった(ホームページを見て来た急患が休診で困る、見慣れないスタッフがいて戸惑う)
車商圏だが野立て看板を一つ立てたので、他の導入路面には看板を設置しなかった(野立て看板が見える角度に無い車道で運転する人は気づく事ができない)
ファミリー層の多い場所だったが、自分の好みでスタイリッシュな大人向けの内装を構えた(子供を連れた親御さんにとって、敷居が高く感じる)
小児歯科もやるが、大きな院長室が欲しかったのでキッズスペースは設けなかった(お母さんが小さい子を連れていった時に困る)等
【地域ニーズを読み取れず、自分の都合だけで診療を行っていた】
老年・ファミリー世帯が多い地域だが、自費診療をメインに稼ぎたいのでホワイトニングやインプラントだけしかやらない(周辺世帯に需要のある診療を行っていなかった)等
【診療時間を自医院の都合だけで決定】
夜間人口の多い首都圏のベッドタウンに開業したが、夜にプライベートタイムが欲しかったので、毎日17時には診療を終え、土日祝日は必ず休診していた(会社勤めの人が通い難い)等
歯科医院が多いこのご時世で、近隣に競合が出来る可能性はいくらでもあります。
患者さんには自由に歯科医院を選ぶ権利がありますが、競合医院同士で患者さんを奪いあうようになった時、果たして先ほどの例にある様な医院を患者さんが選んでくれるでしょうか?遠方でもたくさんの患者さんが通うほど技術的に高名な医院という訳でもない限り、自己都合だけで経営している医院は患者さんの支持を得にくい(儲からない)でしょう。
逆を言えば、儲からない医院が出来ていない事そのものが、設ける為のポイントになるとも言えますね。儲かる医院では、安定的に集患できるようになっても努力を惜しみません。
次は患者さんのリピート率を上げる為に、予約を取りやすい工夫を行ったり、定期検診のリコールはがきを利用して声がけを行ったり、顧客のロイヤリティ向上に努めている事でしょう。
儲かる医院が事前に対策を行っているように、立地選定や集患戦略の他にも、開業時にやるべきことはたくさんあります。初めて開業する場合には、まずは何から手をつけたらいいのかも分からない事も多いかと思います。そうならない様に、まずは開業の流れや、それぞれの注意点を押さえておくと良いでしょう。
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