数多く歯科医院がある中で開業しても、開業後の立ち上がりに苦戦される方も多くいらっしゃいます。歯科医院の開業後の経営安定は一般的に6~12か月ほどかかると言われていますが、その立ち上がりの成否が見えるのは3ヶ月が目途になります。
新規開業直後は「新しくできた歯科医院はどんな所だろう?」「新しい歯科医院の先生や治療はどうなのだろう?」などといった地域の潜在患者さんからの興味が集まりやすい期間です。このように立地や初期の広告で集患できる期間がおよそ3ヶ月で、この間にどれだけ集患出来るかが医院の立ち上がり(早期安定化)に繋がります。
立ち上がりの良い歯科医院とそうでない医院の違い
それでは本題の、立ち上がりの良い歯科医院とそうでない歯科医院の違いを「物件、立地」「認知性」「コスト」の3つのポイントから具体例をあげて解説していきましょう。
物件、立地の違い
A
都内駅近くのビルの3階(飲み屋が多く、夜は人通りが多い。)
B
首都近郊の駅から2km、大型商業施設近くのテナント1階(昼夜とも人口バランスが取れている車商圏で、付近に学校が複数ある住宅街。半径数キロ圏内に他の歯科医院がない。)
単純に駅が近くて人が多そうだからAとした場合、例えば夜間人口が多く辺りには飲み屋が多い環境だった場合、午前中~夕方の集患は中々難しいかもしれません。Bだと学校に通う子供を持つファミリー層が充実しており、昼間人口もいることから、日中に大型商業施設に通う母親・子供層や、夜間や休日に通うサラリーマン層も取り込めるでしょう。
また、3階よりも1階の方が、人が建物に入る時の心理的圧迫がありませんし、繁華街なら集患できるという同じ考えを持った同業者も集まりやすいので、付近に他の歯科医院があればそちらの医院に患者さんは流れてしまうかもしれません。
これは極端な例ですが、どんな場合でも集患できる場所であるかどうかを見極めていきましょう。単純な印象で選ぶと、場合によってはたまたま良いこともありますがリスクも高く、立ち上がりにつまづいた場合、巻き返すのは容易ではありません。
立ち上がりに違いを出すには、何より立地が大切で、主要の交通手段で通い易い場所かどうか、人の滞留し易い場所が近くにあるかどうか、他の医院と診療圏が被らないか、などといった点が重要になります。
認知性の違い
A
青い背景に白字の袖看板だけ出しておいた。(辺りは夏になると木の葉が生い茂る涼しい場所、近くに交通標識の出ている大きな交差点がある。)
B
白い背景の濃い茶色の文字・グリーンと黄色をロゴデザインにあしらった医院サインと、1階路面のガラス窓に医院名・ロゴ・電話番号・診療時間を記した大きなシールを貼った。(淡い茶色や灰の壁を持つ建物が多い場所で、道路や歩道からの間口も十分)
Aのように草木がたくさん茂る場所では、高めの位置につける袖看板は夏場に見えにくくなってしまうかもしれません。また、交通標識が青い背景に白字だと、自分のところの看板と色が被ってしまい、車で移動する人にはなかなか認知して貰えなくなってしまいます。
対して、Bだと辺りの色に同化せず、広い間口や路面の立地を生かす戦略が練られています。
看板や広告をだしておけば大丈夫だろうと安心するのではなく、実際の患者さんの心理的な要因をしっかりと理解し、認知してもらえる集患戦略を立てる事が大切です。
コストの違い
A
できる限り患者さんを待たせないように診療台は3台設置。全ユニットに口腔外バキュームをつけられなかったが、その分WEB予約システム・患者さんへの説明ツール・滅菌や殺菌水の導入などに力を入れた。
B
治療の利便性を優先させ、高級診療台1台で開業をスタート。CT・マイクロスコープも導入し、その他はなるべくカットして費用を安く抑えた。
患者さんの診療を行わなければ、歯科医院は報酬を得られません。そして、患者さんに来院して貰う為には、患者さんが行きたいと思うクリニックであることが必要です。
特殊な治療で権威があるという場合でもない限り、どんなに高級な機材を投入したところで、予約が取りにくかったり、長い時間待たされたり、治療内容や衛生面への安心が得られない医院に患者さんは来てくれるでしょうか?
この様に考えると、BよりもAの方が一般の患者さんが来院しやすいかもしれません。
コストはむやみやたらに抑えればいいという物ではなく、費用対効果の得られる投資をすることが何より大切です。まずは患者さんが来院したいと思えるクリニックにすることに資金を割いて、それ以上の事は経営の成長に合わせて購入して行くと良いでしょう。
立ち上がりの早い医院とそうでない医院の違いとそれぞれのポイントについてふれましたが、実際の来院患者数や収入差は、もっと様々の理由が考えられます。
ご開業される環境にも応じるので、ご自身の開業環境に合った対策を行いましょう。
また、早期安定後の経営(集患)を安定させるには、医院の雰囲気や先生やスタッフの対応なども関係してきます。機材など物理的な面だけに留まらない医院づくりにも気を配りましょう。
歯科開業の立ち上がりを良くするコツとは?
ここまで、立ち上がりの良い歯科医院と悪い歯科医院の違いについて参考例を元に話を進めてきましたが、実際のところ歯科開業後に経営を早期安定化させるにはどうすればいいのでしょうか?
先ほどの紹介で、ほとんどの方が気づいていらっしゃるかもしれませんが、立ち上がりを良くするためには、開業準備をしっかりと行っておくことが肝心です。
また、歯科医院の開業には莫大な費用がかかるので、開業して集患が出来ない(=医院の経営ができない)といって移転や廃院は簡単に出来ません。それゆえ、立ち上がりの成功がなおさら重要になります。
医院の立ち上がりを良くするためには、以下のような点が重要になります。
- 物件や立地を考える時、集患出来るかという視点でしっかりと調査し、客観的な裏付けをとる。
- コストを抑える事に注力するのではなく、費用対効果がしっかりとだせる事業計画を立て、資金調達を行う。
- 医院の診療スタイルや地域特性(ニーズ)が合っていて、認知してもらえる医院を造る。
- 開業前からしっかりとした集患戦略をたて告知を行い、開業後すぐから診療に入れる状態(予約がある状態)にする。
これらを実行に移すには、開業準備の期間に綿密に計画や戦略を立てておかなければなりません。
インサイトの開業支援では、開業の準備段階から現場経験豊富なコンサルタントがサポートにあたるので、先生はご自身のビジョンに合った開業計画をスピーディーに立案し、診療圏分析・物件・資金調達・集患とも立ち上がりを成功させるための戦略を練り、計画的に実行に移していくことができます。
当社が開業前にどのようなポイントをクリアするようにしているかなど、開業に必要なノウハウをお伝えするセミナーもご用意していますので、セミナー専用ページをご覧ください。
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