歯科医院設備・環境

歯科医院の電子カルテ・歯科用レセコン導入前に知っておくべきポイント

歯科医院の電子カルテ導入前に知っておくべきポイント
この記事は約8分で読めます。

今回は電子カルテとはそもそもどういうもので、そのメリットやデメリットはどういう事が想定されるかを検証していきましょう。また、電子カルテや歯科用レセコン導入のポイントを紹介します。

電子カルテとは?

電子カルテはその名の通り、従来の紙のカルテを電子情報に置き換えたもので、将来的に期待される地域医療連携が実現した際は、電子カルテの導入が必須となります。

電子カルテ導入の現状

2018年12月27日に公開された平成29年医療施設(静態・動態)調査では電子カルテの導入状況は以下の表のようになっており、全国で見てみると半数以上の57.3%が電子化をしているという結果になっています。

歯科における電子カルテの導入状況(平成29年医療施設 静態・動態調査)

電子カルテの定義やルールは厚生労働省から非常に細かく規定されていますが、実はその規定をクリアしているかどうかの判断基準はまだ曖昧だったりもするようです。

世の中に電子カルテという名で出ている商品の中に、実は厳密には電子カルテとは呼べないのではないか?というものも存在しているようです。

電子カルテの定義

電子カルテは紙のカルテを電子的なシステムに置き換えたもので、電子情報としてカルテを一括して編集・管理し、データベースに記録する仕組み、またはその記録のことを言います。

電子カルテにはその要件として、電子保存の3原則が設けられており、真正性、見読生、保存性の3つの基準を満たしている事が必須となります。あまり聞き慣れない言葉ですが、それぞれ以下のように規定されています。

真正性

真正性とは、正当な権限において作成された記録に対し、虚偽入力、書換え、消去及び混同が防止されており、かつ、第三者から見て作成の責任の所在が明確であることである。なお、混同とは、患者を取り違えた記録がなされたり、記録された情報間での関連性を誤ったりすることをいう。

医療情報システムの安全管理に関するガイドライン

見読生

見読性とは、電子媒体に保存された内容を、「診療」、「患者への説明」、「監査」、「訴訟」等の要求に応じて、それぞれの目的に対し支障のない応答時間やスループット、操作方法で、肉眼で見読可能な状態にできることである。e-文書法の精神によれば、画面上での見読性が確保されていることが求められているが、要求によっては対象の情報の内容を直ちに書面に表示できることが求められることもあるため、必要に応じてこれに対応することを考慮する必要がある。

医療情報システムの安全管理に関するガイドライン

保存生

保存性とは、記録された情報が法令等で定められた期間にわたって真正性を保ち、見読可能にできる状態で保存されることをいう。

医療情報システムの安全管理に関するガイドライン

聞きなれない言葉なので、ピンと来ない方も多いのではないでしょうか?それでは、具体的に何をしなければならないかについて触れていきましょう。

電子カルテのルール

まず、電子カルテを運用する上で「運用管理規定」を設けなければならず、これから挙げる全ての項目を運用管理規定に明記しなければなりません。わずらわしくて使いづらいという事にならないよう、各歯科医院に合わせた運用面での工夫が必要になってくるかと思います。

それでは、三原則でそれぞれ求められる事を簡単にまとめ、それぞれの懸念点を考えていきましょう。

<真正性>

  • 情報の入力者、及び入力者と確定者が異なる場合は、その両者を判別できるようにする事
  • 権限のない人が触れないよう、ID・パスワードを設定するなど操作環境を整備する事
  • 権限に応じてアクセスできる情報を制限する事
  • 確定され保存された情報は、運用管理規定に定めた保存期間内は履歴を残さないで改変、消去ができないようにする事
  • 上記の内容が運用管理規定に準拠して監査できる事

ここでポイントになるのは、情報を追記・訂正・消去するごとに入力者および確定者が明確になっている必要がある点です。正確な運用が為されている場合、訴訟等が起きた際の証拠として大きな力となるかもしれません。

以前の診療を振り返って過去のカルテを書き換える必要性が出て来る時などは、その全ての履歴が残ります。将来的に電子データでの持参となった場合、この点が大きなリスクになってしまいそうですよね。

現状、新規指導・集団指導・個別指導の際は紙のカルテを持参する形であり、電子カルテの情報を印刷して紙のカルテとする際は修正記録が残らない形に出来る商品がほとんどです。

<見読生>

  • 情報の内容を必要に応じて肉眼で見読可能な状態を保つ事
  • 情報の内容を必要に応じて直ちに書面にできる事

以上、シンプルですが、難しい点もあります。例えば停電やシステム障害、災害等の非常時には、情報を見読できない状態になってしまう可能性もありますよね。これらを防ぐために定期的に情報のバックアップを取っておくことや、ネットワークを通じて外部に保存しておくなどの対策が必要になります。

<保存性>

  • ウイルスや不適切なソフトウェア等による情報の破壊
  • 不適切な取り扱いによる情報の滅失
  • 記録媒体、設備の劣化による情報の読み取り不能
  • 媒体、機器、ソフトウェアの不整合による情報の復元不能
  • 障害等によるデータ保存時の不整合

保存性を脅かす原因として例えば上記のようなものがあります。これらの脅威を無くすために運用面での注意はもちろんのこと、セキュリティーレベルを高く保つことやハードウェア関連の定期的なメンテナンス、交換などの対策が必要になってくるかと思います。

電子カルテ・歯科用レセコンのメリット

ここまで、電子カルテのルールと懸念点についてお話ししていきましたが、電子カルテや歯科用レセコンを導入するメリットも多くあります。具体的なメリットについて触れていきましょう。

場所の有効活用

カルテ枚数が増えてきた事によって、カルテ棚スペースを確保するため、せっかく作ったカウンセリングルームやスタッフルームを潰してカルテルームを作った、という経験のある先生も多いのではないでしょうか?また、院内のスペースとは別に、倉庫を賃借してカルテを保管しているという先生も多いと思います。

電子カルテはカルテを棚に保管する必要がないため、棚の分の院内スペースを別の用途で使用する事が出来ますし、倉庫を借りるなどの余分なコストを減らす事ができます。

時間の短縮

紙のカルテのように、必要なカルテを一つずつ探す手間がかかりません。患者名やカルテ番号等で検索をかければすぐにカルテが確認できます。倉庫に保管してあるカルテをわざわざ取りに行くという手間もなくなりますよね。

情報共有

カルテデータを院内のサーバやクラウドに保管する事で、どこからでも複数のDr.やスタッフが閲覧することが可能です。

リスクの軽減

汚れる、破れる、濡れるといった取り扱い上のリスクが減ります。また、クラウドで保管する場合は災害時など滅失してしまうリスクも軽減できます。

紙カルテの保存義務は5年間ですが、保管中に破れたり、濡れたり、また紙の劣化により内容が不鮮明になる事もありますよね。いざ、確認しようとした際になんて書いてあるかわからない、というような事があったら大変です。

よく伺う話としては、歯科医院の場合、よく身元不明者の照合の問い合わせがくるようです。その際に昔の患者さんの場合、診療録がない、古くて内容が読み取れないという事も稀にあるようです。

またデータ化する事でクラウド上での保管も可能になり、震災等でデータがなくなると言った事もありません。有名な話としては東日本大震災の際身元不明者の照合で付近の歯科医院に診療録開示の要請があったようですが、多くの医院は津波で全て流されてしまっていたので、照合作業が困難だったようです。そのような経緯からも国が電子カルテ化を進めたい要因の一つとなっているようです。

コスト削減

印刷に必要な紙やトナーが必要ないので、コストを削減する事ができます。カルテ用紙のコストや、レーザープリンターのトナーのコストを省けますよね。共に結構高額ですので患者さんが多ければ多いほど印刷関係のコスト削減はありがたいポイントになってくるかと思います。

電子カルテ・歯科用レセコン導入時のチェックポイント

国が電子カルテ化を推進している事は間違いありませんが、これまで述べてきたように一言に電子カルテと言っても一長一短ある点もまた事実です。

現状としては、歯科の場合、電子カルテという商品=レセプトコンピュータですので、選定の際は電子カルテか否かという点よりも、レセコンとして使用しやすいか否かで判断して頂ければ良いのではないかと思います。

電子カルテ・歯科用レセコンを導入したいという方は、インサイトから電子カルテ・歯科用レセコンを取り扱っている企業のご紹介も可能です。話を聞いてみたいという方は、以下フォームボタンよりお気軽にお問合せ下さい。

電子カルテ・レセコンに関するお問合せはこちら

まずは、お気軽にご相談ください。

インサイトでは他にも、医院運営や経営に関連した設備やシステムなど、歯科医院にオススメの各種サービスを紹介しています。

歯科業者一括デモサービス」では、各社との調整サポートや選定時の注意点などのアドバイスを行うことも可能ですので、お困りごとなどございましたら、お気軽にご相談ください。

設備・ツール関連のコンテンツ

タイトルとURLをコピーしました