歯科経営管理

歯科医院の医療法人化におけるメリット・デメリット

歯科医院の法人化 メリット・デメリット
この記事は約8分で読めます。

厚生局「医療施設調査」の統計表データで個人診療所・医療法人件数から増減数年次推移を算出してみても、個人の歯科診療所が3年毎に増減の変動があるものの、緩やかに増減件数が下降傾向になっているのに対し、医療法人は軽微ながら増加傾向にあります。

歯科の個人・医療法人増減数年次推移

実際に、個人で歯科医院を開設して医院が軌道にのりはじめた時に、法人化すべきかどうか悩んでいる先生のお話しを伺うことがあります。

しかし、法人化に踏み切った一部の先生からは「節税のために医療法人にしたけど、所得が少なくなってしまった・・・」「メリットが多いと思ったけど、しない方が良かったかも・・・」と言うお声もちらほら聞こえてくることがあります。

歯科医院を法人化した方がいいのか?また、法人化してうまくいくケースとそうでない場合との違いは一体何なのか?開業し、経営を考える立場になると悩みは尽きませんね。

そこで、歯科医院を医療法人にするメリットとデメリットについてまとめました。医療法人化の手続きの流れが知りたいという方は別記事で紹介しているので、そちらをご覧ください。

歯科医院の医療法人メリット

まずは、医療法人のメリットです。

税金を減らせる

個人所得が695万円を超えると税率は23%、以降900万円で33%、1800万円で40%、4000万円を超えると45%と、段階的に上がりますが 、法人税法の適用を受ければ普通法人と同じ税率が適用されます。(国税庁 No.2260 所得税の税率[平成28年4月1日現在法令等]より

特に特定医療法人の場合は800万円を超えても税率が19%なるので 、高所得となるほど有利になると言えるでしょう。詳しくは以下に各税率表を掲載しますので、ご参考ください。

また、法人設立後には消費税が1~2年間免除されます。

参考:所得税の税率表(個人)

課税される所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円を超え 330万円以下10%97,500円
330万円を超え 695万円以下20%427,500円
695万円を超え 900万円以下23%636,000円
900万円を超え 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

参考:法人税の税率表(法人)

①一般の医療法人

適用区分平成28年4月1日以後平成30年4月1日以後
年800万円以下の部分19%(15%)19%
年800万円超の部分23.4%23.2%

②特定医療法人

適用区分平成28年4月1日以後平成30年4月1日以後
年800万円以下の部分19%(15%)19%
年800万円超の部分19%19%

※表中の括弧書の税率は、平成29年3月31日までの間に開始する事業年度について適用されます。

経営の健全化

法人化すると、個人の所得と法人所得が完全に分別されるので、分りやすく効率のいい経営管理が行えるようになります。

確かに個人だと経費精算が自由でやりやすかったかもしれませんが、自分の財布と医院の経費が一緒の状態で計上利益確認を行うのは、処理が煩雑で大変になります。

法人化の際に整備が大変かもしれませんが、経営の面では経費が適正に処理できるようになります。

役員として給与や退職金を受け取る事ができる

法人になると個人所得は消え、代わりに役員としての給与や退職金として支払いを受けることができるようになります。

家族を役員に置くこともでき、法人所得を分散させることで、税率を下げる事も可能になります。

また、社会保険診療報酬の源泉徴収もありませんので、資金繰りの負担を軽減することができます。

スタッフの確保につながる

医療法人と聞くと、皆さんどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?

一般的には、普通の診療所よりも社会的な信頼がもてる、という印象が強くなるかと思います。

単語に対するなんとなくのイメージもありますが、実際に法人ではスタッフの社会保険(健康保険・厚生年金)加入が義務付けられるので、費用負担は増しますが、その分「福利厚生がちゃんとしている」という印象を持って貰えます。「安心し務めることができる」という保証があれば、スタッフさんも長く働きやすいでしょう。

事業の継承問題が解決できる

今自分が倒れたら、この医院はどうなってしまうのか・・・?個人で経営している限り、この悩みがつきまとうでしょう。歯科医院に限らず、どのような業種でもそれは同じです。

法人となれば複数人の役員での経営が可能となり、自分にいざ何かがあってもスムーズに事業を継承でき、医院を存続させることができます。

歯科医院の医療法人デメリット

次は医療法人のデメリットです。

設立手続きが煩雑

法人化の手続きは、都道府県、法務局、保健所、社会保険事務所、労働基準監督署、厚生局、税務署など、各所に渡り様々な書類を申請し認可を受けなければならないのでかなり大変です。

時間も相当かかります。また、申請手続きや各締切りは都道府県によって変わるので、事前に所轄の各機関に確認し、全てのスケジュールを調整する必要があります。

お金の管理が大変

法人の経費を独立させなければならないので、個人経営とは違い、かなり細かい管理が必要とされます。

また接待交際費にも制限があるので、規模の大きな経営になる場合は特に注意しましょう。

小規模企業共済や年金基金に加入できない

医療法人になると、小規模企業共済や年金基金に加入することはできなくなります。

年金については厚生年金に加入することになりますが、これについては社会保険の加入と併せて説明します。

社会保険の強制加入

個人経営の時は任意加入だった厚生年金や健康保険(※2)などの社会保険加入が必須になります。

事業主とスタッフが労使折半(それぞれが半分づつ負担)するので、お互いに費用が発生します。既存のスタッフさんとよく話し合う必要がでてくるでしょう。

※2:健康保険については、医師国保や歯科医師国保を続行する事も可能です。手続きの方法などは各地域の所轄団体の情報をご確認下さい。

簡単に解散できない

解散自体は難しくありませんが、残余財産の扱いが問題になります。

法人を解体した時に残った財産は国や公共機構の預りとなります。法人の役員などといった個人に残す事ができないので、解散の時にはくれぐれも注意しましょう。

医療法人設立の注意点

メリット・デメリットでお伝えした他にも、法人化にあたり注意する点はいくつかあります。

しばらくの間、手取りの収入が減っても大丈夫?

所得の額面が大きいと税金の負担額も大きくなり、せっかく法人化したことのメリットが得られないかもしれません。

今現在の資産を考え、当面の所得が減ってもやりくりができるかどうか、個人のキャッシュフローをよく見直しましょう。歯科医院のキャッシュフローの考え方については、下記をご覧ください。

個人借入の状況は?

個人借入は法人に引き継げず、手取りから返済する必要があります。

返済額が大きな借入が残っている場合は注意しましょう。ただし、運転資金の借入金の引き継ぎはできませんが、設備資金の借入金は引き継ぐことができます。

財務状況に応じ、税理士・会計士の方に相談してみて下さい。

役員になってくれる人はいるか?

法人においてオーナーとして3名の人間が一般的には必要とされます。例えば、東京都福祉保健局によると、

医療法人社団の設立者の員数は、通常、設立者全員が成立後の医療法人社団の社員となりますので、3名以上が必要です

東京都福祉保健局

との記述があり、また、その内一人は歯科医師または医師である必要があります。

また、その体制の中で自分に何かあった時の事業承継はきちんと整備できているでしょうか?ここがしっかりしていないと、トラブルの元にもなりかねないので、十分な対策をしておきましょう。

医療法人設立のチェックポイント

医療法人設立前にチェックするポイントを紹介いたします。

チェック内容
自分に何かあっても、事業は継続できるようにしておきたい。分院構想がある。
所得が695万円を超えており、税金対策について真剣に考えたい。
社会保険加入で費用負担が発生しても、既存スタッフはついてきてくれる。
また、そうでない場合、今後の人材が確保できる準備がある。
医療法人設立の手続きについて熟知している。
また、そうでない場合、専門のアドバイザーに手続きサポートを依頼できる準備がある。
個人と医院の経費がきちんと区分できている。
小規模企業共済や年金基金に加入できなくてもやっていける。
返済額の大きな個人借入はない。
法人化した際に役員になってくれる候補が3名おり、
医院を誰に継承するか明確になっている。
節税のために、しばらくの期間は手取り収入が減っても大丈夫。

以上のチェックに当てはまらない方は、法人設立の前に本当に医療法人を設立するかどうかをもう一度よく考えてみてください。

また、考えなおした上で、分院構想があり、医療法人にしたいと思う場合は、どのようにして上記をクリアするか考えていきましょう。

今回は医療法人の設立メリット・デメリットについてお伝えしました。

法人化した後に分院展開も検討しているようでしたら、当社では法人化した先生向けの開業支援サービスも用意しております。くわしくは開業支援コンサルティングページをご参考ください。

また、分院展開の物件選定は法人化前から準備可能です。

いつ頃までに法人化し、分院をいつごろ出したいか?先生のスケジュールに合わせてサポート致します。歯科開業に特化した優良物件情報を数多く持つインサイトに、是非おまかせください。

法人・分院展開・医院拡張に関するコンテンツ

タイトルとURLをコピーしました