歯科経営管理

歯科の増床!ビル内別フロアで増床する3つのメリットと注意点

歯科医院のビル内別フロアで増床し拡張する場合の3つのメリットと注意点
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歯科開業の経営が軌道に乗り、目標とする事業計画を着実にこなす内に、患者さんの予約が受けきれなくなる分岐点がほどなく訪れます。自分の医院を頼ってくれる患者さんの期待に応えるためにも事業を更に大きく育てていきたい、と考えるのであれば、自ずと医院の拡張について考える機会が増えるでしょう。

医院の拡張方法は分院・移転・増床などがスタンダードな手段ですが、個人立からの分院設立となると法人化の煩雑な手続きが必要ですし、移転も物件探し・契約・引越し(機材移設)の手間がかかる上に、引越し期間中に休診しなければならないので、すぐに実行に移すのが難しいところです。

その点、同じビル内の別フロアに医院を拡張するのであれば、法人化する必要もなく、手続きを簡単に済ませる事ができます。

そこで、今回はビル内別フロアで増床する場合のメリットと注意点について解説します。分院や移転については下記の記事で詳しく紹介しています。

歯科医院でビル内別フロア増床する事のメリット

新患を確保できる

毎日アポが満杯で新規患者の確保が鈍ると、医業収益も頭打ちになります。そこで、診療面積を増やし新規患者が確保できる様になる事が、増床の目的であり最大のメリットです。

増床しアポを断らなくなる事で、地域の潜在患者を新たに獲得できるばかりか、既存患者のロイヤリティを損なう事もありません。同時に、横ばいの経営状況を打破する事にもつながります。

法人化より手続きが簡単

ビル内別フロアで増床する場合は分院展開として見なされないので、個人立でも医療法人化する必要がなく、煩雑な手続きが不要になります。また、増床先に新しい管理者(分院長)を置く必要もなく、新たな人員を確保・育成する必要がありません。

更に、同じ建物であれば、ビルのオーナー様と築き上げてきた今までの関係性があるので、場合により建物契約の審査が不要となり、入居の段取りを新規契約より手早く進めていける点も大きなメリットです。

患者さんの継続診療が可能

移転による増床では、引越し期間に診療を休まなければなりません。長らく診療を休むとなると、患者さんが不安に思われる場面も出てくるでしょう。

その点、同じビルの別フロアで増床する場合には、今あるクリニックで診療を続けながら、並行して別フロア増床の準備を進める事ができるので、患者さんにご負担をお掛けする事もありません。

経営的な目線に立つと、ビル内別フロア増床は一時的な売り上げ減少も無く、休診による既存患者の医院離れ・ロイヤリティ低下を防げるという利点があります。

歯科医院でビル内別フロア増床する場合の原則

医療施設の一体性に関する考え方

医療機関の施設を隔てた場所に設置する場合の要件については、医政局から通知が出ています。以前は渡り廊下の設置が原則とされていましたが、2005年には渡り廊下が不要となり、2016年には同じビル内の複数階入居が認められ、内階段設置の規制が緩和されました。通知内容はそれぞれの以下の通りです。

公道等を隔てた医療機関における施設の一体性について

1. 両施設の位置する敷地間の距離が同一の管理者による管理及び患者等の往来に支障をきたさない程度であること。

具体的には、施設間を隔てる公道等に両施設の敷地が面していることを原則とすること。

2. 公道等を隔てて位置する両施設の機能を十分考慮した上で、施設間の患者の往来の頻度や利用する患者の病態等を勘案し、衛生面や保安面などで医療の安全性が十分に確保されていると認められること。

具体的には、施設を隔てる公道等には、特に狭隘な場合や自動車の通行が禁止されている場合を除き、横断歩道がある、又は、医療機関の職員による介助がある等、安全性への配慮が十分になされている必要があること。

一方、手術を終えた患者や病状が不安定な急性期の患者が公道等を通って手術部門や検査部門等から病棟部門に移動するような場合は、医療の安全性が十分に確保されているとは認められないこと。

平成17年7月1日 医総発第0701001号(一般社団法人日本病院会掲載のもの)

医療機関における施設の一体性について、追加的事項

1.医療機関が複合ビル等の複数の階に入居する場合も適用され得る

2.複数階に入居する医療機関に施設内部の専用階段の設置を求める必要はない

3.第2階以上の階に病室を有する医療機関等の構造設備については、医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)第16条第1項第8号、第9号及び第10号並びに第17条第1項第3号及び第4号の規定についても留意

平成28年3月7日 医政総発0307第1号

いずれも医療機関施設としての一体性を持たせ、患者さんに対し医療の安全性を確保する事が必要条件となっているので、ビル内別フロアで増床する場合にも、この点は守らなければなりません。

歯科医院でビル内別フロア増床した時の注意点

先ほどご説明した原則に対し、歯科医院で具体的にどのように気を付けていくべきか、一般的な注意点をお伝えします。施設の一体性・医療安全性については保健所の審査が入るので、スタッフにも周知し、気を付けて運用に取り組みましょう。

医療機器の取扱い

医療機器について、各階への持ち出しは基本的に禁止です。どうしても移動が必要な場合は、滅菌パックに入れ持ち運ぶなど、衛生面の医療安全確保を意識し対応しましょう。

患者さんの移動

受付後に患者さんが診療階を移動する必要がある場合、患者さんの病状や動線の保安を考え、状況によりスタッフの介添えが必要になります。患者さんの医療安全性に配慮した動線の確保に取り組みましょう。

カルテ保管

カルテを各階に移動する際は、必ず所在が確認出来るよう管理する事が重要です。環境にもよりますが、スタッフ数が多く管理が煩雑になる場合などは帳簿に残す・管理者に報告する・定期的な棚卸を行う等のルールを決めておくとトラブル防止に繋がります。

スタッフの連絡体制

同じビル内とはいえ、フロアが離れていると密に連絡が行き届かない事もあり得ます。患者さんへ安全な医療を提供するために、常日頃から各階スタッフとスムーズに医療連携できる連絡体制を構築しておきましょう。

その他

保健所から他の点についても指摘が入る事があります。ご開業環境により詳細が異なりますので、まずは保健所に事前相談を行い、指摘された注意点について対策を行っていきましょう。

ビル内別フロアで増床する場合のメリットと注意点についてお話しました。

解説の通り、ビル内別フロア増床には様々な利点がありますが、ただ無計画に床面積を拡張しても新患・収益を増やす事はできません。

現在の医院の経営状態を見直し、増床に向けた事業計画を立て、今後どのように経営を伸ばしていくか方針を決めた上で実行する事が肝要です。

インサイトではビル内別フロア増床についてのサポートも行っております。事業計画の見直し、賃貸借契約に係るサポート、改装時の内装工事、届け出、オープン後の集患対策(内覧会実施)など、増床にまつわる様々な支援内容をご準備しておりますので、ご興味がありましたらフォームよりお問合せ下さい。

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増床を考える際に参考となる医院の来患数目安や、ユニット増設の考え方については下記の記事で詳しくご紹介しています。

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