歯科経営管理

医療経済実態調査からみた歯科医院の収益推移【2023年度版】

医療経済実態調査からみた歯科医院の収益推移
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歯科で開業すると自分の年収がどう変わるのか、法人化をする事でどのくらい収益が向上するのか、歯科を開業・経営をされる先生にとっては気になる話題です。また、開業後に経営が軌道に乗り始めたなと感じていても「他の歯科医院はどうなのか?」というお声を伺うことがあります。

診療スタイルや規模などによっても大きく異なりますが、歯科医業収益の平均値を知っておくことも、ひとつの指標として参考になります。そこで、個人・法人の歯科診療所の医業収益がいくらほどなのか、統計データの推移をご紹介します。

歯科医院の収益推移

個人立の歯科収益推移

個人立の歯科収益推移
第23回医療経済実態調査の報告(令和3年実施)

厚労省発表の第23回医療経済実態調査の報告(令和3年実施)によると、個人立歯科の年間医業収益は1施設辺り平均約4,575万円となっています。

統計の推移を見ると、2016年度を境に4,000万円台から4,500万円近くに収益平均が伸び、2019年以降は4,500万円以上の水準を維持しています。推移の内訳を見ると「保険診療収益」と「その他の診療収益」(自費診療)が追随し上昇している事が分かります。

社会保険診療報酬支払基金の診療報酬分析結果によると、2019年以降の診療報酬増分の背景としては、新設の「医学管理費」(歯科疾患管理料の長期管理加算等)及び歯科用貴金属価格の随時改定による「歯冠形成及び欠損補綴」の点数改正が大きな要因の様です。

2016年度の歯科単体の分析は行われていませんが、個人立歯科が含まれる「入院外(診療所)」の分析結果を見ると、検査・画像診断・在宅医療の算定回数が点数の伸び率増に大きく寄与していました。

年商の平均値が分かったので、これからご開業される方は自分のクリニックで目指すべき目標数値やご自身の年収がどのように変わるか、ある程度見通しが立ったのではないでしょうか?

年商に対する売上目標の考え方や、歯科の利益率、年収の算出方法などは、下記の記事で説明しているのでご参考にして下さい。

法人立の歯科収益推移

法人立の歯科収益推移

同じく、統計によると2020年度の法人立歯科の年間医業収益は1施設辺り平均約1億433万円です。

法人の医業収益は、2015年に8,000万円から9,000円万台に、2019年に9,000円万台から1億弱への増加推移を辿っています。

歯科診療所数の推移

並行して歯科診療所数の遷移を見ると、個人立の歯科医院は2014年度以降、年に1,000件~1,500件近くの減少を続け、2022年には5万件弱となったのに対し、法人は2005年~2019年に年間1,000~1,500件の増加を続け、2019年には1万5千件を超過、構成比は約20年で13%程度互いにプラスマイナスが逆転しています。

2019年には消費税増税があり、条件により消費税免除を受けられる法人化に気持ちが向かいやすい土壌もありましたが、2025年問題を直前に様々な理由から医院の統廃合が進んだ側面も同時に考えられ、共に法人開設数・全体収益の増加につながる背景の一端であったと推察されます。

法人化の税制上の優遇措置など、メリット・デメリットについては以下の記事でご紹介しているので、法人化をご検討されている方はご参考にして下さい。

歯科医院の医業収益と自費率に関する考察

医業収益推移と保険診療・歯科医院数に係る要因についてご説明しましたが、次に自費率についても考えてみましょう。

自費の収益構成比率変化

自費の収益構成比率変化

2020年度を起点とした直近3年の歯科の平均自費率は、個人立14.13%・法人立22.37%です。

法人立では2015年に18%程度から25%程度に、個人立では2017年に10%程度から15%程度に自費の収益構成比率が伸び、その後どちらも微減し先ほどの平均数値に収まっている状況です。

冒頭で説明した「その他の診療収益」(自費診療)の増加も同じ様な年度経緯を辿っているので、自費収益の上昇については、この自費率の拡大も起因していると考えられます。

医業収入増を目指すのであれば自費率の向上は切り離せない経営課題ですが、自費率を上げるには定期予防管理・インプラント治療等の体制拡充と患者獲得、カウンセリングコーナーの設置、集患向上(マーケティング)等への取り組みが必要で、それに伴う設備・ツールへの投資やスタッフの採用・育成なども不可欠なため、開業直後に着手するには難しい分野かもしれません。

また、自費診療は患者さんの信頼を得てから伸びていく領域なので、自費に特化した専門クリニックをコンセプトとしていない通常開業の場合には、開業から数年は自費率の目標数値を過度に高くせず、新患者数・リピーターを安定化させてから向上を目指すと良いでしょう。

歯科経営における自費率の算出方法や向上の取り組みについては以下の記事でご紹介しています。

医業収益の統計推移と、考察についてお話しました。

統計結果はあくまで平均指標であり、ご自身の歯科開業の経営目標として適しているとは一概に言い切れません。立地や診療スタイルなどを含めた開業環境により、目標とすべき数値は統計平均より大きく変わる場合があります。

しかしながら、自分で定めた開業後の目標を達成できるかどうか、歯科開業が成功するか否かは、開業前の準備段階からある程度決まってしまいます。

自分に適した歯科開業の目標数値はどう決めたら良いか?それを実現するために、開業前からどのような準備していけば良いのか?インサイトでは先生の理想の診療スタイルを実現すべく、開業前のビジョン設定・事業計画の段階からサポートを行い、物件・内装・集患まで一括した開業支援体制をご提供しています。

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