歯科経営管理

歯科医院の財務分析をしてみよう!財務分析の考え方

歯科医院の財務分析をしてみよう!財務分析の考え方
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歯科医院の経営が厳しいといわれて久しいですが、実際にどのような状態になると経営危機になるのかを理解している歯科医師は少ないのではないでしょうか?実は、危機になる前に様々なシグナルが発せられているのです。

例えば、患者の来院が減ってくる・リコール率が低下する・キャンセル率が高くなる・スタッフがすぐに辞めてしまうなどのシグナルは分かりやすいですが、医院の財務数値も重要なシグナルなのです。

一見、医院経営が拡大しているようでも、人件費がかかりすぎていたり、医院の規模に合わない多額の機材投資をしたりすると、じわじわと経営を圧迫し、目に見える上記の事象が起きた時には、回復する手立てがない等ということになりかねません。

そうならないために必要なのが、財務分析です。一度理解してしまえば、医院経営をおこなう上で、こんなに役立つ指標はありません。今回は、財務分析の概要と歯科医院で財務分析を行う場合どのように考えたらいいのかなどを紹介します。歯科医院の経営指標や分析の際にお役立てください。

財務分析の概要を知ろう!財務分析とは?

財務表から安全性・収益性・生産性・成長性を測る指標になります。それぞれどのようなことかを解説していきましょう。

安全性分析

医院を継続していくために、収益だけではなく、債務の支払い能力がなくてはいけません。安全性分析とは、どれだけ支払能力があるのかを分析します。支払能力を測ることにより、医院が財務的安全かどうか(=廃院しないか)が計測できます。

安全性は資本と負債のバランスを比較し分析します。負債が多いと安全性が低いと考えられます。さらに安全性は、短期支払能力と長期支払能力それぞれ代表的な分析比率があります。概要を紹介しましょう。

短期支払能力

・流動比率
この比率は、短期的な支払いを行いやすいかどうかを比率で算出します。一般的には100%以上であれば、1年いないに支払不能になる可能性が低いと言われています。

流動比率(%)= 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

・当座比率
流動比率よりも厳密に、短期的な支払い能力を測れる指標として扱われています。一般的には100%以上だと、安全性が高いと言われています。

当座比率(%) = 当座試算 ÷ 流動負債 × 100

・手元流動比率(現預金月商比率)
1ヶ月の売上を回収できるまで、手元(手許)金でまかなえるのかどうかを測ります。一般的には1.5ヶ月分を確保できていれば安全性があると言われています。手元流動性比率は高ければいいと言うわけではありませんので、バランスを見ながら投資を行うのが良いでしょう。

手元流動比率(%) = (現金+預金+短期有価証券) ÷ 月商(=売上高÷12)

長期支払能力

・固定比率
固定資産に投資した資金がどの程度自己資金でまかなわれているかを測ります。固定比率が100%以下であれば、固定資産より自己資本が大きいので、安全性が高いと言われています。

固定比率(%)= 固定資産 ÷ 固定負債 × 100

・固定長期適合比率
上記の固定比率が100%を超えていても、固定長期適合比率が100%以下になっていないと、固定資産の投資額が、固定負債と自己資金でまかなえていない状況になるので、安全ではないと考えられます。

固定長期適合比率(%)= 固定資産 ÷ (固定資産+自己資金) × 100

収益性分析

医院がどれだけ利益を上げられているか、利益を生み出す力がどれ位なのかを分析します。具体的な金額ではなく比率を算出し、水準がどうなっているのかをチェックします。分析方法は大きく売上高から収益性を測る取引収益性と資本から測る資本収益性の2つがあります。

取引収益性

・売上高総利益率
売上高から売上原価を差し引いた、粗利率と呼ばれるものです。大まかな利益率を把握するための基本的な指標となります。

売上高総利益率(%)= 売上高総利益 ÷ 売上高 × 100

・売上高営業総利益率
売上高から販売費・一般管理費を差し引いた営業利益を基に計測される、営業・販売・管理の効率性を判断するものです。比率が高いほど良いと言われています。

売上高営業総利益率(%)= 営業利益 ÷ 売上高 × 100

・売上高経常利益率
経常利益は、営業利益から営業外収益を加えて、営業外費用を差し引く経常利益を基に計測することから、医院本来の成績で当期にどれだけ収益があったのかを見るための指標です。数値が高いほど業績が良いとされています。

売上高経常利益率(%)= 経常利益 ÷ 売上高 × 100

・売上高販管費率
販管費とは販売や一般管理に伴い発生する費用で、売上に比例して生じる変動費・関連しない固定費・広告などの政策費などが含まれ、この販管費が売り上げに対してどれ位の比率なのかを算出します。比率が低いほど高率的な経営を行っていると考えられます。

売上高販管費率(%)= 経常利益 ÷ 売上高 × 100

資本収益性

・総資本経常利益率(ROA)
投入した資本に対してどれだけの利益があげられたか、資本をどれほど効率的に利用できたかを測る指標です。多ければ多いほど良いとされています。

総資本経常利益率(%)= 経常利益 ÷ 総資本 × 100

生産性分析

生産性分析では、医院のスタッフや設備などを効率よく活用しているか、売上や産み出した付加価値を分析するものです。付加価値とは、生産によって生み出した価値で、控除法(売上高-外部購入価値)と加算法(経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課)があり、一般的には控除法が使われることや、売上総利益を付加価値として考える補法があります。

・売上高付加価値率
売上高のうち、付加価値の割合を見る指標で、過去の自院の実績と比較して、付加価値率が上がっているかどうかを見るといいでしょう。

売上高付加価値率(%)= 付加価値 ÷ 売上高 × 100

・労働生産性
従業員一人当たりがどれ位の付加価値を生み出しているか測る指標です。

労働生産性 = 付加価値 ÷ 平均従業員数

・労働分配率
付加価値のどれ位の割合が人件費に分配されたかを測れます。人件費が適正かどうかを判断するのにも使われます。労働分配率については「歯科医院の労働分配率の見方と考え方」で詳しく解説しています。

労働分配率(%)= 人件費 ÷ 付加価値(減価償却費含む) × 100

・設備生産性
医院の設備投資の効率性を表し、設備(有形固定資産)がどれだけ付加価値を生み出しているのかを測ります。設備生産性を上げるには、付加価値を増加させるか設備投資を削減し、有形固定資産を必要最小限に抑えるかを考える必要があります。

設備生産性 = 付加価値 ÷ 有形固定資産

成長性分析

医院がどのように成長してきたか?今後の成長の可能性はどうか?などの成長度合いを測る指標です。成長率は高ければ高いほど良いというものではなく、バランスの取れた成長を見据える必要があるとされています。

  • 売上高成長率(%)=(当年度売上高 – 前年度売上高) ÷ 前年度売上高 × 100
  • 経常利益成長率(%)=(当年度経常利益 – 前年度経常利益) ÷ 基準年の経常利益 × 100
  • 総資産成長率(%)=(当年度総資産 – 前年度総資産) ÷ 基準年の総資産 × 100

前年度と比較して、当期の売上がどれ位伸びたのかを計測する指標です。各年の伸び率の推移をみることが多いです。

一般的に使われている財務分析の概要を紹介しました。歯科医院の財務分析に興味がある方は参考にしてみてください。

他にも歯科医院の経営に役立つ記事をトピックスで紹介していますので併せてご覧ください。

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