歯科経営管理

患者さんが来ているのに閉院?!歯科医院でおこりがちな黒字倒産の要因と5つの注意点

歯科医院でおこりがちな黒字倒産の要因
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歯科医院を開業し、安定した集患もあって経営は順風満帆…と思いきや、収支状況を確認すると意外と資金繰りが厳しい状況になっていた、というお話を現場でたびたびお伺いする事があります。

歯科医院の医業収益でご紹介した通り、令和3年の政府統計によると個人立歯科の医業収益は年間平均4,500万円程度ですが、これより多い医業収益が出ていても倒産に追い込まれる、いわゆる「黒字倒産」が起こらないとは言い切れません。

歯科で黒字倒産が起こる原因は何なのか、よくある事例を交え、黒字倒産を防ぐための注意点をご説明します。

歯科経営でよくある黒字倒産の要因

黒字倒産とは何か?

歯科経営での黒字倒産とは、医業収益が上がっているにも関わらず、手元の資金が不足し、クリニックの家賃や借入金の返済等といった必要経費の支払いができなくなる状況の事を指します。

例えば、忙しいからといってスタッフを欲しいままに採用したり、医業収入が安定しているから大丈夫と思って利幅の分だけ新しい機材を購入したり、診療環境の向上を優先し在庫を気にせず材料を購入したり…などといったお金の使い方をしていると、気づかぬ内に手元資金が追いつかないほどの支払を迫られる事になります。

この様な事が起きてしまう原因の一つとして、歯科の収益構造が診療報酬を主体にしているという事業の特殊性が挙げられます。レセプトによる請求システムは、実際の入金が翌月下旬になるので、この事を念頭に置き、どうすれば黒字倒産を防げるか考えていきましょう。

黒字倒産が起こりやすい時期

通常とは異なる資金繰りが必要になる時に黒字倒産は起こりやすくなります。例えば、賞与や税金の支払いなどといった大きな支出がある月は、特に注意が必要です。

個人立歯科の平均年商4500万円とすると、月商は400万円程度あがっていれば良い計算になりますが、例えば1ヶ月目に月商400万円を得られても、保険診療の窓口収入(現金)は120万円、そこから固定費350万を支払うと、その時点で手元資金は230万円不足します。

運転資金が500万円あると仮定して不足をそこから賄い、翌月売上が500万円あっても手元資金は窓口収入150万円と運転資金残額270万円の合計420万円、そこに固定費350万円と賞与150万円の合計500万円の支出が必要になると、その時点で80万円の赤字となり、翌月末の保険診療報酬の入金がある前に理論上の黒字倒産を迎えます。

もちろん、予め税理士に相談し、銀行に事情を話して繋ぎ融資を得るなどして資金不足の状況を乗り越える事も可能ですが、周囲からの信用を失わない為にも、その様な事態は避けた方が賢明です。

その為に、日頃から注意しておくべきポイントについてご紹介します。

歯科経営で黒字倒産を防止する為の注意点

入出金状況と予定を把握する

クリニックでいつ・いくらの入金や支払があるのか、経営者は必ず詳細を把握しておきましょう。なんとなくのどんぶり勘定ではなく、資金繰り表を作成し、すぐ先の入出金状況を常にチェックできる様に整えておく事がポイントです。

先ほども触れた通り、診療報酬の支払期日は翌月20日頃(令和5年12月時点)になるので、その間までに必要な出金の金額と支払期日をよく確認し、手元資金を準備するように心がけましょう。

現場でお話をお伺いすると、来院患者数や点数は気にされていても、クリニックの財務状況までは把握していないという方は意外に多くいらっしゃるので、この点については改めて気を配る様に気を付けると良いでしょう。

過剰在庫を避ける

消耗品や材料が目の前になければすぐに発注する、という事を繰り返していると、気づかぬ内に資金繰りを悪化させている事があります。歯科医院の在庫管理方法で詳しくお伝えしていますが、在庫が管理しやすいように院内環境を整え、材料費率を7~9%目途に留める事が理想的です。

もちろん、締め付けが行き過ぎて診療が滞ってしまっては本末転倒なので、適正な在庫管理に努めましょう。

公私の資金管理を分別する

個人立の歯科医院の場合、所得税の兼ね合いで事業主の給料を経費として計上できないので、売上から原価・経費を差し引いた利益が事業主の給与となります。その為、自分個人の資金とクリニックの資金を一緒に管理してしまう方もよくいらっしゃいますが、このやり方は事業の資金繰りの把握を難しくさせる大きな要因となります。

歯科医院の資金の流れを明確にし、黒字倒産を防ぐためには、仕事用と個人用の口座を別に作り、毎月一定額を生活費として個人用口座に移動する等して、公私の資金をしっかりと分けて管理しましょう。

返戻を起こさない

レセプトに不備があると「返戻」として請求が差し戻され、予想より入金額が減り、当て込んでいた支払の目途が立たなくなる事があります。こうしたアクシデントに備え、手元資金のマージンを残しておく事はもちろん、返戻が起きない様にスタッフ教育や勉強会を行い、返戻が起きない環境作りに注力しましょう。

目標を立ててから投資する

人材の登用や機材の増設など、医院を成長させる為の投資は事業計画など目標を立ててから行いましょう。キャッシュフローを作成し、過去の資金の流れ・実績値を把握する事も重要です。

無計画な投資は資金繰りの悪化を招き黒字倒産へとつながるので、額面の大きな買い物や、長期的な投資をしたい時には、新たな売上目標を定め、支払が現実的に行えると確信してから踏み切るようにしましょう。

キャッシュフローの考え方や計算方法については、下記の記事で詳しくご紹介しています。

歯科経営で起こる黒字倒産の要因と、そうさせない為の注意点についてお話しました。

自費についても、カード払いやデンタルローンを利用される場合は一定の期日にまとめて医院へ支払が行われるので、保険診療と同じく資金繰り表で金額・期日を確認しておく必要があります。帳簿上の損益と実際の現金の流れは異なるので、資金繰りを意識した経営を常に心掛けましょう。

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