今回は、歯科訪問診療をテーマに、状況と始め方についてポイントを紹介します。
訪問診療の推移
日本の総人口のうち、高齢者の割合が27.7%(平成29年現在)と、超高齢社会と言われています。高齢化が進むと同時に、訪問診療は年々重要性が高まっています。これは医科に限った話ではありません。
次の図は、医療施設静態調査の2011年・2014年・2017年の歯科における訪問診療の推移です。
このグラフからも分かる通り、歯科訪問診療の施設数も実施件数も、どちらも件数が増えてきています。
訪問診療の始め方とポイント
訪問診療を始めようと思っても「何から行えばいいのか分からない」「どう進めればいいのか?」とお悩みの方も多いのではないでしょうか?歯科の訪問診療を始めるには、次のように準備を進めます。
- 訪問診療の情報を集める
- 届出の内容を確認する
- 必要な機材や道具を準備する
この流れにそって、ポイントを紹介していきましょう。
訪問診療の情報を集める
訪問診療における診療報酬の算定方法や制度についてしっかりと理解し、情報を収集しておく必要があります。訪問診療を行う際の注意点をいくつか紹介します。
まず、診療報酬ですが診察料については、医療保険で算定します。管理・指導の保険請求は、訪問先と介護保険かどうかにより、算定方法が変わってきます。
訪問先が福祉施設の場合は医療保険で算定しますが、訪問先が居宅の時は、介護保険の有無で保険請求が異なります。介護保険が医療保険に優先するため、介護保険がある場合は、介護保険で居宅療養管理指導と予防居宅管理指導を選定します。
更に、介護施設を訪問した場合、施設扱いとなるものと居宅扱いになるものがあるので、分からない場合は直接施設へ確認をしましょう。例えば、有料老人ホームやケアハウス、グループホームなどは、一般的に施設と呼ばれていますが、居宅扱いとなります。
また、訪問診療を算定できる範囲は、保険医療機関の所在地から半径16km以内と決められています。実際に訪問診療をされている方は、この16kmを超えないことに加え、移動時間が20分圏内と決めて訪問診療をされていることが多いようです。
さらに、往診に要した交通費は患家の負担とされています。自家用車の費用は含まれますが、自転車やスクーターは往診療に含まれているので、患家の負担になる交通費には該当しないという決まりがあります。
このような訪問診療に関わる様々な情報をしっかりと理解しておくことが大切です。さらに、訪問診療を行う際の、診療の流れや診療前に確認しておくべきことなども、事前にリストやテンプレートを用意しておくと良いでしょう。
届出の内容を確認する
既に開業されていて、保険診療を行っている場合、診療を行うための特別な届出はありません。しかし、診療報酬を加算して請求するためには届出が必要になります。また、訪問診療を行う際に、生活保護を受けている患者さんがいる場合もあるので、その届出も行っておくと良いでしょう。
診療報酬の加算には種類や条件があるので、一度提出すればいいものや、都度申請しなければならないものがあります。
- 歯科訪問診療料の注13に係る届出
- 在宅歯科医療推進加算の施設基準
- 地域医療連携体制加算の施設基準
- 在宅療養支援歯科診療所の施設基準
- 在宅患者歯科治療総合医療管理料の施設基準
- 生活保護および中国残留邦人等支援法指定「医療」機関指定申請書
- 生活保護および中国残留邦人等支援法指定「介護」機関指定申請書
届け出の状況をあらかじめ確認しておき、変更が必要な場合はすぐに対応しておきましょう。どの届出を出せばいいのかは、管轄の厚生局や市区町村の保健所もしくは福祉課へ問合せましょう。
必要な機材や道具を準備する
訪問診療を行う場合の機材や道具の例を紹介します。
種類 | 例 |
---|---|
書類関連 | カルテ、処方箋、領収書、ケアマネージャーへの報告書 |
ライト | 手持ちのライトや懐中電灯、ヘッドライト |
口腔内清掃用具 | 歯ブラシ、ガーグルベース、歯磨きティッシュ、 コップ、舌ブラシ、スポンジブラシ、歯磨剤 |
衛生材料 | ガーゼ、ペーパータオル、ウェットティッシュ、新聞紙、ゴミ袋 |
診査器具 | ミラー、ピンセット、探針、エキスカベーターなどの基本セット |
治療用器材や道具 | ガスバーナー、エンジン、ポータブルユニット、携帯用レントゲン、吸引器 |
状態確認用器材 | 血圧計、心電計、パルスオキシメーター |
その他 | クッション、タオル、バスタオル |
これらの器材は、最初から器材すべてを用意するのではなく、できるものは代用品や訪問先で用意してもらって始める方も多いようです。
訪問診療に行く前に聞いている主訴に合わせて、持っていくものを決めましょう。
訪問診療の周知方法
訪問診療の需要の高まりがあり「訪問診療を始めても思うように収益化出来ないのでは?」「訪問診療の依頼があまり来ないのでは?」とご不安に思われる方も少なくないようです。
周知方法としては、院内POPやポスター・診察券やパンフレット・ホームページなどに、訪問診療の掲示があります。他にも、来院してくれている患者さんへ、介護中の口腔管理の重要性や訪問診療の必要性などを伝えていくこともなさってください。
また、地域の歯科医師会や口腔保健センター、地域包括支援センター、訪問看護師、介護関連施設や企業と連携していくことで、訪問診療を行っていると認知してもらうことが大切です。
この連携には、他業種の勉強会に参加することや、ケアマネージャーの方や関連施設・企業の方を知人から紹介してもらうなど、ある程度の営業活動も必要になってきます。しかし、実際には診療を行いながら営業活動を行うのが難しい先生も多く、営業代行の会社に依頼することが多いようです。
まずは、ご自身の医院に通われている患者さんやそのご家族で、通院が出来なくなってしまった方のケアなどから始め、訪問診療の基盤を作ることから始められてはいかがでしょうか?
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