歯科開業の環境と将来予測3 歯科開業の現状「歯科医師の高齢化」


複数回に分けて歯科新規開業を取り巻く歯科業界の現状と将来の予測についてご紹介している近年の歯科開業の傾向と人口推移から予測られる、歯科医院の開業予測の3回目です。過去のシリーズをまだ読まれていない方は1から順にお読み進みください。歯科開業の全体については「歯科開業について」をご覧ください。

それでは今回は、「歯科医師の高齢化」と「新規開業も高齢化」について説明していきます。

○歯科医師の高齢化

歯科医師の高齢化

日本の歯科医師が増えた理由は、齲蝕が社会問題となり始めた、1970代に厚労省が1985年までに人口10万対歯科医師数50にするという目標を掲げ、歯学部の増設と定員増を行ったことにより、これ以降に歯学部に入学卒業した歯科医師が団塊の世代を中心に高齢になり、現在では日本の歯科医師の約半数は高齢歯科医になっています。

特徴的なのは、50~60代の歯科医師がここ12年間でなんと約2万人も増加していることです。高齢化した歯科医師たちは歯科医師として活動続けているものの、体力的な面から1日あたりの治療人数は大きく減少しています。なぜならば、歯科医院の経年により、患者も高齢化するからです。

歯科医療においては、一般的に長きにわたって通院するため、患者と歯科医師の信頼感が最も大事になります。

高齢の歯科医師の経営する歯科医院は長年通った非常にロイヤリティの高い患者さんでその経営が成り立っているケースがほとんどであり、一方高齢な患者は、同じ歯科医院で同じ歯科医師に診てもらうことが安心につながっています。このことは、高齢者の転院率が非常に低いということでも分かります。

逆に、全てではないですが30代の主婦で幼稚園児を抱えた母親が高齢の歯科医師の医院に通うでしょうか?普通は、同年代の歯科医師のいる歯科医院に通うのが通例です。歯科医院探しにもっと迷っているのが30代の主婦であることからも分かります。特に、主婦は家族の健康に最も気を使っているので、良い歯科医を探すことに多くの労力を割いています。

実際に30代主婦の転院率が比較的高く感じている歯科医院は多いのではないでしょうか?弊社では新規開業時に「ふれあい見学会」と称して地域の住民の皆さんに医院を見学してもらうイベントを行っています。こうしたイベントを通して最も参加者数が多いのが、やはり30代主婦であり、このことからも裏付けられます。

○新規開業も高齢化している

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歯科医師が高齢化しているのと同時に、新規開業をする歯科医師の年齢も実は上昇してきています。

開業年齢推移をみてみると、30歳から34歳の歯科医師のうち1994年は半数以上の53%の人が開業していましたが、20年後の2014年にはわずか14.7%まで下落してしまっています。さらに、35歳から39歳までを見てみると、1994年には76%もの人が開業していたのに対して、2014年は33.1%まで減少してしまっています。

これは、開業する年齢が高齢になってきている証拠で、この理由はいくつか考えられます。

1つは、開業マインドです。
約20年前の1994年では、まだ歯科医に対し過剰感はなく、勤務医より開業したほうがより収入が増えるイメージが強かったのですが、2014年には前述のように歯科医院の厳しさがマスコミ等を通じ流布されると同時に、先に開業した先輩や友人の医院が苦労するのを見て、開業に対してネガティブなイメージを持ち始めたからです。

2つめは、実務面ではかつてのように「自己資金がたまらない」という問題があります。
開業に対しては、当然開業資金の1/3に相当する1,500万円程度の自己資金をもっていることが望ましいですが、現実に開業のサポートを通してヒアリングをしてみると、自己資金が非常に少なく、500万円程度しか持っていないケースがほとんどです。

勤務歯科医師の年収の推移で分かるように、2005年から2013年の間に年収は900万から600万へと約300万円も下落しており、これではなかなか自己資金をためることは難しくなるのも納得がいきます。

もちろん、自己資金500万円でも開業できないわけではないがよほどしっかりとした事業計画を立てない限り、金融機関から融資が下りるとこは難しくなります。そうなれば、自己資金が貯まるまで開業を待とうということになってしまいます。

3つめは、「従来の開業場所の決め方」の項でもふれましたが、皆が同じような環境での開業を求めるあまり、開業できそうな場所がなくなってしまったという理由も関係しています。

当社でコンサルするケースの中には、我々業者よりも物件に関する知識を持っていても、詳しいだけにネガティブな側面しか考えることができず、いつまでたっても物件を決めることができない評論家的な歯科医師もでてきているほどです。

ここまで、歯科開業の現状をお伝えしてきましたが、この現状を踏まえて今後歯科業界がどのように変化していくのか、将来予測を歯科新規開業を取り巻く環境と将来の予測4「30年後の人口予測と歯科業界」で解説します。

歯科開業の現状と将来予測が1日で分かる