歯科開業の環境と将来予測2 歯科開業の現状「歯科医療の需要と供給」


前回に引き続き、歯科新規開業を取り巻く歯科業界の現状と将来の予測についてご紹介します。今回の内容は「対10万人あたり歯科医院数と歯科医師数」と「歯科医療の需要と供給」です。

前回の内容をまだ読まれていない方は歯科開業を取り巻く環境と将来の予測1 「開業件数と開業地」から順にお読み進みください。歯科開業の全体については「インサイトの歯科開業」をご覧ください。

○対10万人あたり歯科医院数と歯科医師数

対10万人あたり歯科医院数と歯科医師数

日本の人口が減少に関しては後述しますが、減り続けている人口に対し、歯科医院数はどう推移したのかを説明します。

厚労省の医療動態施設調査によれば、対10万人当たりの歯科医院数は、1990年は42.2医院であったものが、2013年には54医院まで増えてきています。逆算すると、一歯科医院あたりの人口が2,369人から1,851人まで518人も減ったことを示している。その減り方は、なんと21%にものぼるのです。

この数値を見れば、やはり歯科医院の経営は非常に厳しくなってきていると言わざるを得ません。一方、歯科医師数の推移をみてみると、2000年に90,857人だったものが、2012年には102,551人と11,694人増加(約13%増)しています。

また、対10万人あたりでみてみると、71.6人から80.4人まで増加しており、歯科医師一人あたりの人口に換算すると、1,396人から1,243人と153名も減少したことになります。そしておそらく、この傾向は現在の歯科医師数削減政策が効果を発揮する2020年ころまでは続くと予想されます。

この数値自体をみると、歯科医院と同様に歯科医師も過剰に見えますが、国際的な比較をしてみると、米国が日本の約2倍にあたる162.7人、カナダ126.2人と多く、日本はそれほど高くなく、先進国の中ではドイツやスウェーデンと同水準であることが分かります。

○歯科医療の需要と供給

歯科医療の需要と供給

先進国の水準と比較し、歯科医院や歯科医師数がそれほど高くないのであれば、歯科医療は本当に厳しい状況にあるのでしょうか?そこで、歯科医療の需要と供給について考えてみたいと思います。

考え方としては、歯科医師数の増加率に対し、保険診療の歯科医療費の増加率を比較しこの二つの指標が並行的に推移するならば、需要と供給のバランスは保たれているし、どちらかがクロスするようだと需要過多、供給過多ということになります。

歯科医師数の増加率は、1980年代後半に約5%だったものが、2012年では1%まで減少しました。この理由は、歯科医師数の過剰感と歯科医師の収入低下、2010年までの景気低迷、大学受験者総数の減少、高額な学費のかかる歯科大入学の定員割れ、歯科医師国家試験の合格率低下などによるものです。

一方、歯科治療費は厚生労働省の国民医療費から算出したので、保険診療のみを対象としていますが、歯科医師数と同様に2004年まで減少し、それ以降は若干持ち直しています。

また2年ごとに上下にふれていますが、これは診療報酬の改定により影響です。
この主な理由としては、医療費抑制政策に基づいた診療報酬単価の引き下げ、医療機関に対する指導対象の「上位2%ルール」による診療報酬算定の自主規制などがあげられます。

いずれにしても、この両者の指数の動きをみると、1995年を境に歯科医療費の増加率が歯科医師の増加率を下回ってしまっています。つまり、この時点から供給過多になり始め、その格差が拡大しているのが分かるのです。

さらに、歯科医療費をGDP(国内総生産)と比較してみると、0.5%台で安定しており、歯科医療費の増減は明らかにGDPに連動しています。

今後の日本のGDP成長について、日本経済団体連合会(経団連)が設立したシンクタンク「21世紀政策研究所」が2050年の日本のGDP推計を出しているますが、405兆円と2010年の480兆円を若干下回っているので、よほどのGDP成長がない限り、歯科医療費が大幅に増えることはないと推測できます。

したがって、この傾向は今後も続くと予想され、歯科医院ではより一層の合理化や自費診療をしない限り経営は苦しくなると推測されます。

しかし、私のコンサルティング経験からするとすべての歯科医院の経営が苦しいわけではなく、経営成績の良い歯科医院と経営の悪化している歯科医院とに二分化が進んでいるのが実情です。しかも、最近は開業してからかなりの年数を経た歯科医院の経営が厳しくなってきています。

その背景には、歯科医師の高齢化という日本独自の課題が潜んでいます。歯科医師の高齢化については次回歯科新規開業を取り巻く環境と将来の予測3「歯科医師の高齢化」で内容を解説します。

歯科開業の現状と将来予測が1日で分かる