歯科開業の環境と将来予測6 歯科の未来予測「自己負担金と自費診療」


近年の歯科開業の傾向と人口推移から予測られる、歯科医院の開業予測の6回目です。複数回に分けて歯科新規開業を取り巻く歯科業界の現状と将来の予測についてご紹介していきます。

過去の「歯科新規開業を取り巻く環境と将来の予測」シリーズをまだ読まれていない方は1から順にお読み進みください。

今回は歯科開業の現状と将来予測4でお話しした30年後の人口予測から推測される未来予測の「自己負担金の引き上げ」と「自費診療枠の拡大」について説明していきます。

○未来予測3 自己負担金の引き上げ

自己負担金の引き上げ

30年後の人口予測で触れたように、社会において税金を納めたり、経済を牽引したりする生産年齢人口と呼ばれる15歳から64歳までの人口が、全人口の半分まで低下してしまうと、当然の帰結として保険診療に何らかの大きな改革が必要となってきます。

一部では、保険制度そのものが破綻すると推測する学者もいるようですが、そこまでいかなくとも、海外の事例を見れば少なくとも、自己負担金が5割から7割程度まで引き上げられたり、混合診療が全面的に解禁される可能性が高いでしょう。
その理由を解説します。

○先進国事例:イギリスの歯科診療

イギリスでは、人口10 万人対歯科医師数が日本76.1 名に対し58.3 名(2014 年)と日本に比べて低いにもかからず、「ゆりかごから墓場まで」というナショナル・ヘルス・サービス(NHS)の概念のもと、自己負担無しでの歯科の受診ができるような手厚い保護をしてきました。

しかし、日本と同じように財政面での圧迫が続くことにより、1971年に5 割負担となり、2006 年NHSの大改革では、人頭登録制と400 以上の診療行為別に点数設定されていた出来高払いの診療報酬体系が廃止され、3 種類の総額請負制が導入され試算によれば患者負担率は平均6 割程度になりました。

ちなみに新規開業に関しては、2006年3月以降、開業地域は指定制とされ、歯科医師複数勤務体制が推進され、プライマリーケアトラスト(地区NHS)が開業医と契約を行う際に、開業場所を指定する権限が与えられました。

これにより歯科診療所の過剰地域での新規開業は認めず、過疎地域へと誘導し、計画的な歯科医師の配置が行われることとなったのです。

最近の動きでは、ショッピングモールで、定額の費用負担、休日や、昼休み時間帯も診療するというチェーンが出てきています。
このチェーンではNHSの保険診療はできないが、これまで自費診療を行う高額クリニックと、NHSの中間の価格帯で、しかも「なかなか診てもらえない」というNHSの歯科医院の欠点を補う休日診療をおこなうことで、多くの患者を確保しているようです。

○先進国事例:ドイツの歯科医療政策

ドイツでは人口10 万人対歯科医師数は80.7 名(2014 年)と日本とほぼ同程度で、国民の約88%が公的医療保険に、約9%が民間の保険に加入しています。歴史的には、1977年医療保険費用抑制法(第一次費用抑制法)が施行され、歯科補綴の給付率が80%に制限され、1989年医療保障改革法施行により、補綴治療の給付率は50%まで切り下げられました。

さらに、2005 年 1 月より導入された歯科補綴治療に対する新たな給付制度(義歯付加保険)より、歯科医療に関しては52 種類の診断群が定められ、保険給付は50%の定額補助とされました。

今後ドイツで検討されている歯科医療政策としては「公的健康保険と民間健康保険との統一化」「1 人-2 人の医師の小規模診療所を縮小し、医療供給センターに集合させる」「現在、保険歯科医師協会との間の契約で決められている診療報酬を個々の診療所や医療供給センターとの直接契約とする」などが考えられています。

これらの先進国の事例のように、少なくとも自己負担金に関しては、5割を超える大幅な上昇となるであろうと推測できます。

○未来予測4 自費診療枠の拡大

自費診療枠の拡大

自己負担金の負担率上昇と合わせて、混合診療を含めた自費診療枠も拡大されるでしょう。

先進国の潮流を見ていると、特に、予防ケアに関しては、ドイツやアメリカのようにインセンティブ制を導入し、予防をしている人としていない人で自己負担割合を変える一方、自らの口腔内をケアできず、進行させてしまった疾病に関しては、自費扱いにするといった自己責任を前面にだした制度もでてくるでしょう。

また、現行の日本の健康保険制度では保険診療と保険外診療を併用することは原則として禁止されていますが、今後は前述のように自己負担金が上昇するため、同時に混合診療を解禁して保険と併用の場合には、保険診療内で収めようとする動きも出るかもしれません。

一方、補綴など完全に保険診療からきりはなされる診療内容も多くなり、自費に移行する可能性があります。これに伴い、高額の自費が増えることにより民間保険の普及が進む可能性も。ただし、こうした変化はTPPのような外圧によって進むのではなく、保険制度を維持するための制度改革によって行われると推測できます。

このように、混合診療拡大と保険診療枠の縮小による自費診療への移行が起こった場合に想定されることとしては、患者が今まで以上に歯科医院を吟味して選択するようになるのと同時に、治療後の保証の問題も含め、クレームや訴訟が増えることが予想されるので、長い目でこうしたことへの対応を開業時から考えておく必要があります。

次回歯科開業の現状と将来予測7に続きます。

このシリーズでお伝えしている内容は、歯科開業セミナーで詳しく解説しています。歯科開業の現状と将来予測をふまえた上でどのように開業を進めればいいのか?をふまえた上で、開業に重要なポイントの物件や資金調達や集患のノウハウが聞けるセミナーとなっていますので、是非ご参加ください。

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