歯科医院を開業して、今まで勤務先の医院でなんとなく決められていたルールでゴミ捨てを行っていて、開業後に「実はこうだったのか!」という声をしばしば伺います。
そこで今回は、歯科医院のゴミとその分別についてお話します。
医療廃棄物とは
医療行為などから排出される廃棄物の事を医療廃棄物と言い、その内、人に感染する病原体などが含まれるもの(またはその恐れがあるもの)を感染性廃棄物と言い、感染性一般廃棄物と感染性産業廃棄物の二つに分けられます。
感染性については、形状・排出場所・感染症の種類によって判断する事ができます。
<形状>
廃棄物が以下のいずれかに該当する。
① 血液、血清、血漿及び体液
② 病理廃棄物(臓器、組織、皮膚等)
③ 病原微生物に関連した試験、検査等に用いられたもの
④ 血液等が付着している鋭利なもの(破損したガラスくず等を含む。)
<排出場所>
感染症病床、結核病床、手術室、緊急外来室、集中治療室及び検査室において治療、検査等に使用された後、排出されたもの
<感染症の種類>
① 感染症法の一類、二類、三類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症の治療、検査等に使用された後、排出されたもの
② 感染症法の四類及び五類感染症の治療、検査等に使用された後、排出された医療器材等
これらの判断基準に該当する物は感染性廃棄物、該当しないものを非感染性廃棄物と言います。(参考:環境省 廃棄物等の処理)
歯科医院の廃棄物の分類
歯科医院で発生するゴミには、以下のようなものがあります。
◇一般廃棄物
産業廃棄物以外の廃棄物
例:紙くず、ビニール等(感染性のない物)
◇産業廃棄物
燃え殻、汚泥、廃油、廃アルカリ、廃プラスチック類
例:石膏模型、石膏くず等(感染性のない物)
◇感染性一般廃棄物
紙くず、包帯、脱脂綿等
例:血や口内粘液の付着した脱脂綿、ガーゼ、衛生用のマスク等
◇感染性産業廃棄物
血液(廃アルカリ又は汚泥)、注射器(金属くず)、レントゲン定着液(廃液)等
例:麻酔用の注射器、レントゲン写真廃液、補綴の部材、滅菌バッグ、使い捨て手袋、消毒用アルコール等
◇その他
患者さんのプライバシーに関わる廃棄物
例:保管期限を過ぎたカルテ、レントゲンフィルム等
歯科医院での医療廃棄物(ゴミ)の捨て方
廃棄物の処理及び清掃に関する法律の中で、“産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するもの”
は特別管理産業廃棄物と定義されています。
つまり、医療廃棄物はその特性から特別管理産業廃棄物に該当し、この法を基準とした「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」に従って自分または委託業者により廃棄処理を行う必要があります。
個人開設の歯科医院の場合、医院内に焼却施設を持つ事はかなり稀なので、今回は委託処理を行う場合の流れについてご説明します。
業者に委託し、委託処理を行う流れ
流れについては下記の通りになります。
- 委託契約を締結
- 処理の依頼
- 処理結果の確認
- 都道府県知事への報告
- 問題が起こった時
委託契約を締結
始めに、運搬・処分に関してそれぞれ下記業者と委託契約を締結する。
- 運搬:特別管理産業廃棄物収集運搬業者、市町村、都道府県等
- 処分:特別管理産業廃棄物処分業者、市町村、都道府県等
※各受託業者が都道府県知事から感染性廃棄物の収集運搬または処分の業の許可を受けている事を必ず確認しておく。
処理の依頼
堅牢な密閉容器などに封じた医療廃棄物を契約業者に引き渡し、中身の取り扱いについて知らせた上で、運搬・廃棄処理を依頼します。同時に紙マニュフェスト(産業廃棄物管理票)に必要事項を記入して交付する。
処理結果の確認
感染性廃棄物の最終処分が済むと、業者から紙マニュフェストの写しが返送されるので、最終処分まで適切に処理された事を確認する。(このマニュフェストは5年間保管する必要がある)
都道府県知事への報告
紙マニュフェストを使用の場合、前年度(その年の3月31日より前の1年間)に交付したマニュフェストに関する報告書を、毎年6月30日までに医院の所在地管轄の都道府県知事に提出する。(電子マニュフェストを使用している場合、この報告は不要)
問題が起こった時
期日内に紙マニュフェストの返送がない、記載に問題があった場合などは、速やかに感染性廃棄物の処理状況を把握し、生活環境の保全上の支障の除去又は発生の防止のために必要な措置を講じる。また、そこから30日以内に都道府県知事に報告を行う。
参考:マニュフェストの返送期日
- 収集運搬業者・処分業者による紙マニュフェストの写し:交付から60 日以内
- 処分業者による最終処分が終了した旨が記載された紙マニフェストの写し:交付から180 日以内
委託した側の医院には、感染性廃棄物の排出事業者として注意義務があります。最終処理確認を行うまで十分に注意しましょう。
医療廃棄物ではないゴミの出し方
医療廃棄物ではないゴミの出し方にも注意が必要です。
医療行為以外の事業活動(たとえば、受付事務作業や、スタッフのお弁当の容器等)で出る一般廃棄物は、医療廃棄物と違い感染性がありません。
このような一般廃棄物は、事業所から出たゴミなので産業廃棄物として取り扱われるのが一般的ですが、地方自治体により見解や取決めが異なる場合もあります。中には、弁当の容器等は従業員の生活の延長線上で発生したゴミと捉え、市区町村の回収対象として扱うケースもありますが、どちらにせよ自分で勝手に判断せず、自治体等に確認して相応の処理を行いましょう。
産業廃棄物は、事業者が自分で処理を行うか、または都道府県知事の認可を得た産業廃棄物処理業者に処理を委託し、都度、マニュフェスト(産業廃棄物管理票)の交付・返送を受ける必要があります。
許可のない業者に依頼したり、不法投棄を行ったりなど産業廃棄物を適切に処理しないのは違法に当たり、処罰対象になるので注意しましょう。
ショッピングセンターやビルテナントでは、建物の管理会社やオーナーが一括して産業廃棄物処理の委託契約を結ぶ場合もあります。ただし、テナント側に排出事業者としての責任がある事に代わりありません。廃棄方法についてよく確認し、取り決めに従いましょう。
患者さんのプライバシーに関わる物については、そのまま捨てると個人情報保護法に違反する可能性があります。専門の廃棄業者に対応を依頼し、証書を発行してもらう等して厳重に処分しましょう。
特に、産業廃棄物のゴミを一般の生活ゴミと同じ場所に廃棄するなどのマナー違反は周囲の顰蹙(ひんしゅく)を買います。口コミでの悪い評判にもつながり、集患に響きかねないので気を付けましょう。
今回は医療廃棄物などのゴミの取り扱いについて紹介しました。産業廃棄物回収業者の選定にお悩みでしたら、パートナー企業の紹介も可能です。お気軽にお問合せください。
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