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農地編!歯科開業で知っておくべき農地転用と土地関係法の基礎知識

歯科開業で知っておくべき農地転用と土地関係法の基礎
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新築案件や土地から歯科を開業する場合、条件によっては土地関係の法規制に気を付ける必要があります。「開業場所を決める前に見ておくべき都市計画の調べ方とポイント」で解説している通り、通常は無床の診療所である歯科開業の場合、用途地域の制限を受けませんが、様々な法規定により無床の診療所であっても制限を受け、意図せず開業時期が遅れたりする事もあり得ます。

その中でも、今回は開業する土地が農地であった場合に気を付けるべき点をご紹介します。

歯科開業を元農地でする場合の制限

開業する土地が農地や生産緑地であった場合、農地転用や生産緑地指定解除などの申請と認可が必要になります。

なぜ農地を活用するのに制限を受けるのか?

日本では「国内の農業生産の基礎である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源」であることから、「国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的」とし、農地法という法律が定められ、農地が別の用途で使われる事などを制限しています。(典拠:農地法第1条

しかしながら、しかるべき手続きを踏まえ、法で定められた認可権利者から認可を得る事ができれば転用・権利移動も不可能ではありません。それでは、開業したい土地に農地が含まれる場合にはどのような制限が設けられているのか押さえておきましょう。

どのような制限があるのか?

転用だけの場合

自身が所有している農地に診療所を建築するには、農地を宅地に転用する必要があり、農地法第4条に則った許可が必要になります。権利の許可元や違反した場合の罰則については以下の通りです。

許可権者原則として都道府県知事、または農林水産大臣が指定する市町村の区域内にある農地では指定市町村長の許可が必要。
ただし、市街化区域内の農地は、政令で定められた農業委員会への届出が必要等の例外がある(農地法第4条第1項第8号)
罰則無許可で農地を転用した場合、原状回復命令等の行政処分を受ける事がある(農地法第51条第1号)。
さらに3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される場合がある(農地法第64条第1号)。
農地法

土地の権利移動も必要な場合

開業したい土地が農地又は採草放牧地を含み、自分がその土地の使用収益の権利を持っていない場合、その土地を購入・賃借などして宅地に変える必要がありますが、これらは土地転用の為の権利設定・権利移転をする行為にあたり、農地法第5条に則った許可が必要になります。権利の許可元や違反した場合の罰則については以下の通りです。

許可権者原則として都道府県知事の許可が必要(農地法第5条第1項)。
ただし、市街化区域内にある農地・採草放牧地は政令で定められた農業委員会への
届出が必要等の例外がある。(農地法第5条第1項第7号)
罰則無許可で農地または採草放牧地を転用する為の権利設定・権利移転を行なった場合、
許可の取消し・使用貸借や賃貸借契約の解除・条件変更・工事停止命令・原状回復命令等の
行政処分を受ける可能性がある。(第3条の2第2号・第3号、農地法第51条第1号)
さらに3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される場合がある(農地法第64条第1号)。
農地法

歯科開業に係る農地転用の手続き

事前準備

事前に、以下の事を調べておくと良いでしょう。

  • 「登記事項証明書」「公図の写し」を取得
  • 実際にどのように利用されているか、実地で現況確認
  • 確定測量図で地境(隣接地との境界)を確認

これらの事を把握しておくと、農業委員会に具体的な説明をするのに役立ちます。

手続きの流れ

広さ・属性によっても異なりますが、一般的には以下の通りです。

  1. 農業委員会に申請書を提出
  2. 農業委員会が許可権者(都道府県知事又は市町村長)に、農業委員会の意見を付け申請書を送付
  3. 許可権者(都道府県知事又は指定市町村長)が許可の可否を決定
  4. 農業委員会から申請者に対し結果の通知が届けられる

※上記は30アール(約907.5坪)以下の農地を転用する場合の手続きになります。30アールを超える農地を転用の場合については、ここでは説明を割愛します。

手続きを開始してから許可が下りるまで2~3ヶ月程度、複雑な案件になると1年程度かかる事もあるので、開業スケジュールの設定には十分注意しましょう。

歯科開業を元農地でする場合に必要な書類

農地転用に係る申請に必要な書類は、大まかに以下の様な物があります。

許可申請書/土地の登記事項証明書/位置図/公図の写し/周辺土地利用図(住宅地図)/申請地の現況写真/事業計画書/土地利用計画図/建物等施設の平面図/排水計画図/資金計画書/資力を証する書類(預貯金残高証明書 ・融資証明書等)/見積書(建築費等)/水利権者及び漁業権者の同意書/地積測量図/委任状・確認書(行政書士に手続きを依頼する場合)

場合により他の書類が必要になる事もあるので、申請前に農業委員会に問合せ、何が必要になるのかを必ず確認しておきましょう。

歯科開業に係る生産緑地指定解除の手続き

生産緑地とは何か?

生産緑地とは三大都市圏の特定市の市街化区域内にあって「保全する農地」として諸条件を満たし、生産緑地法に基づいて生産緑地地区に指定された土地の事を言います。

生産緑地は指定を受けてから30年は農業や、農業に関連するもの以外の用途で使用する事ができず、相続税に関する煩雑な問題も抱えているので、歯科開業予定地が生産緑地の指定を受けている場合には、この指定が解除され、土地売買が可能になる事が前提になっている必要があります。

生産緑地指定の解除要件

生産緑地の指定解除には、以下いずれかの要件が必要です。

  • 生産緑地の指定を受けてから30年が経過。
  • 所有者(主たる農業従事者)が農業できないほどの障害や疾病を患った。(※1)
  • 所有者(主たる農業従事者)が死亡。(※2)

※1:1年以上の入院を要する病気や両目の失明などの障害や疾病を指し、証明書の申請後、農業委員会の現地調査が行われます。

※2:ご家族で農業されている場合は主たる農業従事者が障害などを負った場合でも、ご家族が主たる農業従事者と判断され解除できない可能性があります。

生産緑地指定の解除の流れ

前述の要件を満たし生産緑地指定の解除を行う場合、まずは所有している土地の市区町村にその生産緑地を時価で買い取る様、買取の申出を行います。

市町村が買い取らない場合には、農業委員会が他の農林従事者に土地の斡旋し、成立すれば生産緑地として売買されますが、買取の申出から3ヶ月たっても買取が成立しない場合には、行為制限(住宅の新築や宅地の造成)が解除された後に都市計画審議会で生産緑地の解除が行われ、土地の売買が可能になります。

各手続きの期間は市区町村によって変わるので、しっかりと確認しておきましょう。

昨今では農業希望者が減少し、農林従事者の買取成立が難しくなっているので、市区町村が不買の場合には、然るべき日数経過の後に土地売買が可能になるケースが多くなっています。

元の土地が農地や生産緑地であった場合、歯科開業で気を付けるべき点についてご紹介しました。

歯科開業の立地には他にも様々なケースがあり、お悩みの内容も人それぞれです。インサイトでは歯科医師の方向けに開業のコンサルティングサービスを行っておりますので、何かありましたらお気軽に下記までご相談下さい。

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