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歯科経営で材料費率を圧迫?歯科用貴金属高騰と価格改定の仕組みと今できる3つの対策

歯科用貴金属高騰と価格改定の仕組みと今できる3つの対策
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開業前に学んでおくべき必須の経営知識」でご紹介している通り、個人で歯科を開業し経営面で考えるべき変動費率は従来15%前後が一般的でしたが、近年の世界情勢の影響を受け諸々の原価価格が高騰し、歯科の変動費率も影響を受けざる得ない状況が続いています。

中でも歯科用貴金属は原価相場も右肩上がりの状況が続き、購入価格が保険償還価格を上回る「逆ザヤ」などの問題も起きており、歯科業界にとっては苦しい現状が続いてきました。

情勢を鑑み厚労省の価格改定方法も段階的に見直されてきましたが、改めて現在の仕組みと、材料費の高騰に対しクリニック内で可能な対策をご紹介していきます。

歯科用貴金属高騰の背景

需要と世界情勢の影響

保険診療の「歯冠修復及び欠損補綴」などで使い勝手の良い素材として重宝されてきた金パラ(金銀パラジウム合金)ですが、素材の一つである金は世界情勢が不安定になると現物資産として投機が集まる傾向があり、特に近年は感染症の拡大や国際情勢の悪化などの影響を受け高騰を続けています。

冒頭の表1と上記の表2を比べ、金の素材価格は1グラムあたり2000年頃には1,000円程度、2012~2015年頃には4,000~5,000円程度、2021年~2022年には6,000~8,000円程度と段階的な上昇を繰り返し、直近2023年3月半ばの相場は8,000円程度(※)で、総括してこの20年ほどで約8倍の値になっています。

パラジウムは自動車から排出される有害物質を窒素・水・二酸化炭素等に変換する触媒として使われる事から需要が高まっていましたが、日本ではその供給を輸入に大きく頼っており、2021年50.6トンの輸入内訳ではロシアが約4割、南アフリカ共和国が約5割を占めていて、こちらも国際情勢の影響を大きく受けざるを得ない背景が伺えます。

同じく中医協資料の表を比較すると、パラジウムの相場は1グラム当たり2003年頃1,000円前後、2012~2015年頃には2,000~3,000円程度、2021年~2022年には7,000~10,000円弱と段階的な上昇と乱高下繰り返し、直近2023年3月半ばの相場は6,000円程度(※)、この20年で6~10倍の価格になっている事が分かります。

※直近の相場は弊社お取引企業様の情報を参考にしています。

改定時期の問題

歯科用貴金属の価格の見直しについて、厚労省は平成12年4月~令和2年3月には診療報酬改定時に加え4月・10月に半年に1度の改定を行っていましたが、近年の急な価格の乱高下に対応できないとして令和2年4月より、3ヶ月前までの価格変動が±15%を上回る場合のみ7月・1月にも改定が実施される仕組みに変更になりました。

しかし、その措置だけでも日々相場が変わる貴金属取引の急な高騰に対応する事ができず、医療機関の購入金額が保険償還額を上回る「逆ザヤ」問題が解消されない状況が続きました。

全国保険医団体連合会の調査によると、2020年3月には医療機関の金パラ平均購入価格90,250円(税込)に対し保険償還価格は50,250円で、約8割近くを医療機関が負担していたという実態が明らかになっています。

その後も価格是正が現状に追い付かず、医療機関の負担が1割以下に収まる期間もありましたが、2割ほどの負担が続く状況が多く見受けられました。

歯科用貴金属価格改定の今後

現在の仕組みについて

そのような来歴や、実情に呼応した中医協の交渉も踏まえ、令和4年4月には更に随時改定の方法が見直され、現在では以下の様な仕組みになっています。

  • 素材価格の変動幅に関わらず、4月・7月・10月・1月の年4回の見直し
  • 前回改定以降、改定2カ月前までの平均素材価格を使用

また、実際に令和4年5月にはウクライナ情勢下で特にパラジウムの素材価格の急騰に対応するため、規定外の臨時改定も実施されています。

今後も状況に応じ仕組みが変わる可能性がありますが、仕組みを変えるにはそれなりの時間がかかり、現状に則さない場合も考えらえるので、歯科医院でも独自の対策を取っておく必要があるでしょう。

歯科開業で取るべき経営対策

経営数値の把握

まずはクリニックで材料費がどれほどの割合を占めているのか、経営数値を把握する必要があります。

常日頃から材料費率などを含めた医院の経営状況を把握し、「逆ザヤ」現象が起きたとしても改定後の価格や他の面での回収を考案し黒字運営できる様に、ご自身で定期的に経営方針や事業計画の見直しを行いましょう。

税理士の方にお任せの場合でも、貸借対照表・キャッシュフローを理解し、医院の現状を把握していざという時のために備えておく必要があります。

キャッシュフローの考え方については下記の記事で詳しく解説しているので、ご参考にして下さい。

材料在庫の見直し

全体の内の材料費率を把握した上で材料費率が高いと感じた場合、まずは在庫の見直しをする事が重要です。在庫の管理方法については下記の記事でご紹介しています。

買取・回収業者の比較検討

歯科用貴金属のスクラップ素材は、産廃業者に買取依頼をされている場合が殆どかと思いますが、業者によって買取額も異なり、できるだけ高く買い取ってくれる業者に頼むのが医院経営の助けになります。業者の選び方や買取依頼時のポイントなどは下記の記事でご紹介しています。

歯科用貴金属高騰の背景と現在の価格改定の仕組み、医院で取るべき対策についてご紹介しました。

インサイトでも金属買取業者や在庫管理システムのご紹介を承っております。ご興味のある方は、下記よりお気軽にご相談ください。

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