歯科経営管理

歯科クリニックでも対応が必要?パワハラ防止措置ってどうしたらいい?

歯科クリニックにおけるパワハラ防止措置とは
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2022年4月1日より中小企業を対象に、職場のパワーハラスメント(パワハラ)防止対策措置が義務化されました。歯科医院も対象となるのか、対象の場合には具体的にどのような対策を講じるべきなのか、制度を説明すると共に、歯科医院で対応すべき要点を解説していきます。

歯科医院でパワハラ防止措置は必要か

2020年6月に労働施策総合推進法(正式名「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」)が改正され、事業主には職場のパワハラ防止措置を行う義務が課される事になりました。大企業では既に施行されていましたが、2022年4月1日から中小企業も対象となりました。

中小企業の定義について、医療を営む歯科医院は業種分類「サービス業」に属し、
①資本金または出資総額5,000万円以下
②常時使用する従業員数100人以下
原則として①②のいずれかを満たす会社及び個人が中小事業主であると定められています。

常時使用する従業員数が5人以下の場合は厳密には小規模企業になりますが、中小企業の定義に下限は設けられておらず、厚労省の資料には「全企業に義務化」との文言もあり、フリーランス等で従業員がいない場合を除いては全て対象となるので、対策を行っておく必要があります。

歯科医院で注意すべきパワハラとは何か

そもそも、どのような行為がパワハラにあたるのかを把握していなければ、対策をとることもできません。

事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

労働施策総合推進法 第三十条の二

法律では上記の様に定められており、① 優越的な関係を背景とした言動であって、② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③ 労働者の就業環境が害されるもの、の①~③の要素を全て満たす行為が職場におけるパワハラに該当するとされています。

また、パワハラに当たる代表的な言動を6つの類型に分け、厚労省が例として紹介しています。

(1)身体的な攻撃:蹴ったり、殴ったり、体に危害を加えるパワハラ

(2)精神的な攻撃:脅迫や名誉毀損、侮辱、ひどい暴言など精神的な攻撃を加えるパワハラ

(3)人間関係からの切り離し:隔離や仲間外れ、無視など個人を疎外するパワハラ

(4)過大な要求:業務上明らかに不要なことや遂行不可能な業務を押し付けるパワハラ

(5)過少な要求:業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じたり、仕事を与えないパワハラ

(6)個の侵害:私的なことに過度に立ち入るパワハラ

ハラスメントの類型と種類

極端な例ではありますが、次のような行為はパワハラ行為に抵触する恐れがあります。

  • 他のスタッフや患者さんの目の前で、医師がスタッフを大声で執拗に叱る事がしばしばあり、その内容も業務を逸脱し当該スタッフの人格を否定するような内容を含んでいた。
  • 特定スタッフの個人情報が別のスタッフの手により院内に拡散し、その事を理由に特定スタッフが業務内外で他スタッフから避けられ孤立し、業務が遂行できなくなった。

法律には「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動」とありますが、パワハラの主体は職場の上司だけに当てはまるとは限りません。同僚や部下であっても個人の就業環境を著しく阻害するような行為があれば、パワハラ行為者となり得ます。事業主はあらゆる職位を総括して、院内のパワハラを防止する対策を行っていかなければならない点にも注意しましょう。

また、同法律施行に関し、厚生労働大臣が必要と判断した場合には事業主に対し助言・指導・勧告を行うことができ、勧告に従わなかった場合には内容を公表できる旨も法律に明記されており、実際に「労働基準関係法令違反に係る公表事案」として企業名や事案概要が厚労省や各県労働局のホームページで公表されています。加えて、厚生労働大臣から求められた報告に回答しなかったり、虚偽の内容があれば、20万円以下の罰金を科す旨も法律で定められています。このように、罰則を伴う法律であるという事にも十分注意し、対応していきましょう。

歯科医院で講じるべきパワハラ防止措置

院内のパワハラ防止の為に事業主が行うべき対策には、以下の様な事が挙げられます。

  • 院内方針を定める(就業規則)
  • 相談窓口の設置
  • パワハラ発生時の対処と再発防止
  • 院内スタッフに向けた講習

院内方針を定める(就業規則)

まずは、パワハラを行ってはいけないという事を院内で規定する必要があります。就業規則などの文書に記載し、パワハラを行った場合の罰則なども併せて載せておきましょう。また、そのように定められている事を従業員にしっかりと周知する事も肝要です。

就業規則をどの様に定めたらよいか、厚生労働省が下記のモデル文を掲載しているので、ご参考になさってください。

(職場のパワーハラスメントの禁止)

第〇〇条 職務上の地位や人間関係などの職場内の優越的な関係を背景とした、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。

厚生労働省 モデル就業規則(令和3年4月版:厚生労働省労働基準局監督課)

この条文に違反した場合には懲戒事由とする旨も併せて記載し、従業員に周知すると良いでしょう。

相談窓口の設置

パワハラについてスタッフが安心・安全に相談できる相談窓口を設置する事が事業主の義務になります。また同時に、パワハラが発生した際に適切に対処できる体制づくりもしていかなければなりません。

事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

労働施策総合推進法 第三十条の二 第2項

法律では相談者の取り扱いについても上記の通り定められており、対応には十分注意する必要があります。

内部対応のみでは事案が揉み消されたり、内容が洩れ相談者が孤立・解雇されたりするなど、さらに大きなトラブルにつながり、事業主に賠償責任が生じる可能性もあるので、第三者機関に相談窓口を委ねる事も検討しておくと良いでしょう。また、相談窓口がきちんと機能する様に、スタッフに周知しておきましょう。

パワハラ発生時の対処と再発防止

実際にパワハラが起きた時には、事実関係を迅速かつ正確に把握し、事実関係が確認できた場合には被害者への配慮を速やかに行い、行為者の適正に処分すると共に、再発防止の措置を講ずるなどの対応が求められます。いざとなってからでは対応が後手に回るので、誰がどのように何を行うべきなのか、事前に体制を整えておきましょう。

院内スタッフに向けた講習

事業主は、優越的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる前項の措置に協力するように努めなければならない。

労働施策総合推進法 第三十条の三 第2項

法律には上記の項目もあり、パワハラ発生原因や背景、医院の方針についてスタッフの理解を深める為に講習などを設ける事も推奨されています。また、事業主自身も関心・理解を深め、スタッフはパワハラ防止措置への協力に努める事とされています。

実際のパワハラ実例や改善ポイントなどについては厚労省が動画配信や事例紹介を行っているので、院内ではどう対応すべきかご参考になさっても良いでしょう。(参照:厚生労働省「あかるい職場応援団」

歯科医院のパワハラ対策で困った時には

パワハラ防止措置の法令施行に、歯科医院で対応していく為のポイントを簡単にまとめました。これらの対策を事業主である院長先生が全て自前で準備するとなると、日々の診療で忙しく、対応がなかなか進まないことも考えられます。

そのような時には、懇意にしている弁護士や社労士の方に相談し、労務の専門家のアドバイスを聞きながら院内対策を進めると良いでしょう。インサイトでも歯科医院様向けに社労士のご紹介を行っていますので、お気軽にお問合せ下さい。

また、パワハラ相談窓口の設置については、インサイトでもご紹介できる第三者機関がございます。事業規模に応じ価格も変わりますので、ヒアリングを行いながら歯科医院様に適したサポート内容をご提案いたします。ご興味がありましたら、下記よりお問合せ下さい。

他にもインサイトでは、歯科医院の運営に必要となる、様々なサービスを紹介しております。詳しくは「歯科業者一括デモサービス」をご確認下さい。

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