大変な準備を経て「いざ開業!勤務医時代よりも収入の多い生活の幕開け!」と思っていたのに、開業したその月に収入が入ってこなくて材料費や賃料の支払に大慌てなんてお話を耳にする事があります。
具体的な原因はいくつか考えられますが、今回はその中の保険請求にフォーカスして、レセコンメーカーの方に伺った話をもとに事例と注意点を紹介します。歯科の収入の基本的な考え方については「歯科医院のキャッシュフローの考え方と計算方法」で紹介しているのであわせてご覧ください。
よくある保険請求トラブル例
それでは早速、開業後によくある保険請求のトラブル事例と注意点を紹介していきましょう。
保険請求に必要な届出をしていなかった
最近はどの医院でもレセコンを導入し、電子データで保険請求を行っています。CD送付かオンライン請求が主流ですが、審査支払機関にどちらの形態で送るにせよ、事前に届出を出しておかなければ請求を受け付けてもらえません。
レセコンを導入したから「請求すれば収入が入るだろう」と思い込み、何もしないでいると、初月から収入を得られないという落とし穴にはまってしまいます。開業後すぐにしっかりと収入を得るには、初回請求の締め日までに電子データでの請求ができるように手続きをしておきましょう。
オンライン請求の手続き
オンライン請求の場合「電子情報処理組織の使用による費用の請求に関する届出」を審査支払機関に提出し(毎月20日締め)、翌月15日までに社会保険報酬支払基金から設定ツールを送付されるので、設定作業を行い電子証明をダウンロードして導通確認をしておく必要があります。
最短で届出の翌々月からオンライン請求が開始できる計算になるので、開業前のスケジュールに組み込んでおきましょう。(参考:社会保険法主支払基金「オンライン請求の手続きについて」)
CDなど電子媒体による請求手続き
CDを送付する場合には「光ディスク等を用いた費用の請求に関する届出」を審査支払機関に提出する必要があります(毎月20日締め)
請求は翌月から開始可能ですが、確認試験が必要な場合には確認試験前月20日締めで「光ディスク等を用いた費用の請求に係る確認試験依頼書」を送付し確認試験を行っておく必要があるのでご注意下さい。(参考:社会保険診療報酬支払基金「電子媒体による請求の場合」)
※国民健康保険について、詳細は各都道府県の国民健康保険団体連合会のホームページ等で案内があるので、環境に合わせてご確認下さい。
施設基準が条件を満たしていない
特定の診療処置を行って加算を得るにはそれに見合った施設基準を満たす必要があり、治療の設備を整えるだけでなく、届出を受理して貰うところまでが必要になります。
特に気をつけたいのはクラウン・ブリッジ維持管理料です。提出していないと関連処置の点数が下がるので気をつけましょう。こちらの手続きは、開始の前月までに管轄の地方厚生局に「クラウン・ブリッジ維持管理料に係る届出書添付書類」を提出し届出を行います。
実際に処置を行っても、届出を出し認定を受けていないと施設基準が条件を満たしていないと判断され、加算で請求した診療報酬そのものが受けられない事があります。
レセプトの再提出には手間がかかりますし、返戻から再提出までの期日が短い場合も多いので、対応しきれず当月の収入が大幅に減る事も予想されます。最悪キャッシュフローが立ち行かなくなる危険性もあるので、十分注意しましょう。
今回はクラウン・ブリッジ維持管理料について参考に話しましたが、ほかにも様々の加算処置内容に関し条件があります。診療スタイルに適した届出を行っておくようにして下さい。
各書類の締め切りと算定の開始日については、管轄の厚生局事務所で決められています。逐次、事務所に問い合わせるなどして確認しましょう。
保険請求の提出先を間違えていた
「提出先を間違えるなんて、そんな事あるわけない」と思うような凡ミスでも起こり得るのが開業直後という特殊な時期です。
ごくごく基本的な事ですが、社保と国保のデータの送り先をあべこべにしてしまう、というような凡ミスが実際に起こっています。勤務医時代にはあり得ない事でも、いざ開業となると自分で色々な事をしなくてはいけなくなるので、やるべき事に漏れがないように気をつけましょう。
忙しい時でもすべき処理に漏れが出ない様にするには、事前にスケジュール管理をきちんとしておく必要があります。開業までに何をすべきか、開業してからは何の処理を行わなければならないのか、きちんと管理しましょう。必要であればチェックリストを用意すると良いでしょう。
以上、開業後によくある保険請求にまつわるトラブル事例と注意点でした。
インサイトの『一括デモサービス』