開業資金を調達しようと思っても、初めてのことで何をどうすればいいのか戸惑われる方も多いことかと思います。そこで、今回は歯科医院の開業資金調達の方法や調達先の種類などを簡単に紹介します。
開業資金をどうやって調達する?
歯科医院の開業資金計画を立てる時に、調達先はおおよそ次のようなルートが考えられます。
- 自己資金
- 親族からの援助金
- 金融機関からの借り入れ(ローン)
- リース、割賦
自己資金や親族からの援助金などについては、だいたい想像がつくかと思います。事業を開始するにあたり特殊なのは、やはりローンやリースといった金融機関やリース会社からの借入を行う方法でしょう。
「歯科の開業資金や自己資金って実際はどのくらい必要?」でもご紹介していますが、歯科開業のためには、物件(敷金・礼金などの諸経費を含む)、工事費(内装、看板)、機材(ユニットなど)、運転資金(水道光熱費・人件費など)といった費用が発生します。テナント開業で新品機材を揃えての開業であれば、建物の大きさにもよりますが、トータルで5000万円以上かかるといわれています。
これだけの資金をどう捻出するか、具体的なプランニングするためにも、どういう種類の相談先(借入先)があるかを知識としておさえておく必要があるでしょう。
金融機関からの借入(ローン)にはどんなものがあるの?
開業資金を調達する際に、多くの方が金融機関から借入を行います。そこで、金融機関からの借入にはどんなものがあるのか解説していきます。金融機関から資金を借りるには、連帯保証人や不動産などの担保があるかどうかにもより選択の幅が変わります。
無担保・無保証では借入先の範囲がだいぶ狭まるので、あらかじめ心得ておきましょう。
公的融資
公的融資とはその名の通り、政府や自治体など公的機関が行う融資のことをいいます。代表的なものには、株式会社日本政策金融公庫があり、これは2008年10月に国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫が解体・統合し直して生まれた、国を株主とする特殊会社です。
一般の金融機関が行う金融を補完することを旨とし、国民一般、中小企業者及び農林水産業者の資金調達を支援するための金融の機能を担う
株式会社日本政策金融公庫
と目的にあるとおり、歯科開業においては運転資金や設備投資のための申請をすることができます。
公的・国が株主、などと聞くと敷居が高く感じられるかもしれませんが、新規事業者にとって心強い味方となる制度が用意されています。たとえば、もし不動産や連帯保証人を用意できないといった無担保・無保証の状態でも、上限3000万円までの融資枠が取れることもあります。
CT・デジタルレントゲン・レセコンといったIT系の設備資金であれば、制度の中で最も低い金利で借入を行えます。内容にもよりますが、担保を提供すれば担保の評価分融資枠を広げてもらえたり、民間では類を見ないほど金利を下げてくれるケースもあります。
公庫を利用する場合は「歯科開業で日本政策金融公庫を利用する時の流れとポイント」で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
制度融資
都道府県や市町村などの地方自治体が金融機関(銀行・信用金庫等)に資金を預け、金融機関はその資金を自治体が定めた有利な貸付条件で中小企業や個人事業主に融資しますが、融資条件として各県の信用保証協会の保証が必要になる…このような方法を制度融資といいます。
信用保証協会としては、協会が連帯保証人の代わりになることで事業主がお金を借りやすいようにして経済を活性化するのが目的で保証を引き受けてくれるわけですが、金融機関からみると債務者の返済が焦げ付いても協会が返済を保証してくれるので、貸した資金が手元に戻るため安心して融資貸出しできるというメリットがあります。
そのため、金融機関は金利を低く提示する事ができますが、もちろん協会もタダで保証してくれるわけではなく、ここに信用保証協会の保証料が約1.0%上乗せになります。東京都の場合、無担保・無保証での融資枠は下限1000万円~上限2500万円(1000万円以上の審査には、加算額と同等の自己資金額が必要)となっています。
プロパー融資
いわゆる民間の銀行や信用金庫などの信用貸付がこれにあたります。多くの方が利用されている方法ですが、無担保・無保証となると、利用できる金融機関そのものがかなり限定されます。
とある銀行では無担保・無保証の歯科のテナント開業で上限5000万円を目安に実際に融資してもらえます。借入期間は融資対象により変わりますが、内装工事・テナント契約保証金などで最長15年、機材などは10年になります。運転資金については、金融機関により7年だったり10年だったりします。
開業場所によっては、相談先の銀行の支店がなかったりして融資の許可がおりない場合もあるので、ご自身で融資先を探す場合などは特に注意しましょう。
また、歯科向けの融資実績があるかどうかによっても金融機関の対応に大分違いがあります。あまり歯科業界への融資経験がないところでは担保や保証人を要求されることがほとんどでしょう。
ノンバンク融資
リース会社などがこれにあたります。消費者金融もノンバンク融資に含まれますが、事業用で利用するのは得策ではないのでここでは割愛します。
リースについてはファイナンス・リースとオペレーション・リースの別がありますが、詳しくは「歯科開業の資金調達や事業計画でよく出る用語解説」でお話していますのでご参考下さい。リースの利用方法については「開業時の歯科医療機器は購入とリースどちらが良いのか?」で詳しく解説しています。
金融機関での資金調達はおおよそ以上になります。
※本内容は掲載時点の状況であり、社会情勢や金融機関の状況により金利、制度、商品等が著しく変わる可能性がありますので資金調達をお考えの際に都度ご確認ください。
どの金融機関でどれ位調達出来るの?
そもそも開業するのにはいくら必要でどう調達するか?歯科経営で収益をあげるために調達した資金で何に投資し、どれだけのスパンと金額で借入金を返済していくのか?
綿密な資金計画を立てていなければ、どこでいくらの資金を調達すればいいのか検討もつきませんね。初めての融資を確実に確保するため、まずはきちんとした事業計画を立てることを最優先にしましょう。
今回ご紹介した内容や、ここでは触れる事のできない融資金利については、インサイトの歯科開業セミナーで解説しています。直近の事例を元にお話ししていますので是非参考にしてみてください。
セミナーでは、今回紹介した内容から更に、具体的な金融機関の特徴や制度、今歯科開業資金の融資を受けるならどの金融機関がいいのか?など、多くの金融機関とやり取りを行っているからこそお伝えできる、生きた情報をお伝えしています。
セミナー以外でも、先生のご状況を伺い資金調達のアドバイスなどのご相談も可能です。
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