歯科医院経営講座⇒スタッフが通勤中に事故にあったら


歯科医院の経営・マネイジメントの事例を交えたケーススタディを紹介します。歯科医院経営事例シリーズをまとめて読みたい方はタグの「歯科医院経営講座」をクリックしてください。
○院長、こんなときどうしますか?
~ スタッフが通勤中に事故にあったら? ~

<ケース>
勤務する歯科衛生士のAさんは、いつものように愛車にのって自宅を出ました。周辺の車が集まる大きな交差点で赤信号待ちをしていたら、横から来た車と接触し相手は逃げてしまいました。困ったAさんは院長に電話をしました。

「院長ですか?実は○○で事故に遭ってしまって・・・・体調ですか・・・首が痛いので、このまま病院へ行きたいのですが・・・」

院長はAさんにすぐに病院に行くようにすすめ、後で電話をくれるように伝えました。

当て逃げで加害者を特定できない場合には確か労災保険が使えるはず。でも、事故に遭った○○という場所は入社時にAさんが申請した自動車の通勤経路とは違う場所です。

こんなときに、労災保険がきくのでしょうか?

○スタッフが通勤中に事故

スタッフが通勤中に事故

通勤途中の交通事故の種類にもよりますが、法的には、いくつかの場合が考えられます。

(1)事故の原因を生じた「加害者」がいる場合
(2)通勤途中の事故が、業務性をもっており、「業務災害」と認められる場合
(3)通勤途中の事故が、労災保険法の「通勤災害」と認められる場合
(4)通勤途中の事故が、加害者が明確でなく、「業務災害」とも「通勤災害」
とも認められない場合

このうち、
(1)の場合には、加害者本人か、その人が仕事中であれば、その使用者(会社)が損害賠償を請求することができます。自動車事故であれば、強制賠償責任保険や任意保険がありますので、保険会社が当事者になると思います。

(2)の場合には、労災保険の適用を受け、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、さらに特別支給金などを受けることができます。

(3)の場合には、労災保険法による「通勤災害保護制度」の適用を受けられます。

(4)の場合には、労災保険の給付を受けることも、損害賠償請求をすることもできません。

(1)の場合にも、(2)、(3)に該当することがあります。
その場合には、損害賠償と労災保険の給付との調整制度があります。加害者と示談で解決するときには、労災保険からの給付があるからといって、簡単に示談するのではなく、労災保険担当者と連絡をとって慎重に対応することが必要です。

また、上記(3)の、「通勤災害」と考えるためにポイントになるのは、次のような点です。

1.業務に就くための行為か、または、業務を終了したことで行われる往復の行為

2.労働者本人が、日常生活を営むために居住し、働くための拠点である住居と就業の場所との往復ですこと

3.労働者が一般に使用する経路および方法による往復行為であること
(鉄道、バス、自動車など:通勤手当を申請するための経路・方法と合致する必要はない)

4.往復行為が、業務性をもたないこと
(業務性があれば、業務災害としてより手厚い保護があります)

5.経路の「逸脱」や「中断」がないこと(通勤の経路を逸脱または中断したときは、通勤の経路に戻っても、それ以後は通勤とはみなされない。

ただし、日常生活上やむを得ない最小の行動の場合
〔例:日用品の購入、保育所の送り迎えなど〕は逸脱や中断の時間を除き、その後は通勤とみなされます。)

今回のケースでは、上記の3にあたると考えられますので、通勤災害の給付を受けることが可能ですから、スタッフに伝え、必要な手続きを労働基準監督署で受けるようにアドバイスしましょう。