歯科経営管理

歯科ユニットをいつ増やすのか?増設時期の目安

歯科ユニット増設次期は歯科開業時に決めておこう
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開業して経営が安定してくると、おそらく大体の先生が歯科ユニットの増設を検討されることでしょう。患者さんの数が増えても、ユニット数に応じて一日の診療数に限界があり、患者さんの要望に応えられないケースもでてきます。

そうなると単純に収入を逃すばかりか、予約ができない現状にしびれを切らした患者さんが別の医院に行ってしまうことも…結果として収益も頭打ちになり焦りを感じるかもしれません。

しかし、ユニットのような高額な機材を、おいそれと購入するわけにもいかないですよね。

そのためにも、ユニット増設はいつ頃を考えておけばいいのか?何を目安にすればいいのか?ということを開業する段階から考えておく必要があります。

それでは、増設に関するエトセトラを紹介します。

歯科ユニット増設の目安とは?

統計からみた歯科ユニット1台あたりの患者数

まず、統計データから歯科のユニット台数平均をみていきましょう。

歯科診療台の台数(歯科診療所 規模別) ※医療法人、個人のみ抜粋

診察台台数/
診療所規模
医療法人個人総数
1台2019641,242
2台82310,80411,794
3台2,95421,68624,781
4台3,78110,86714,716
5台以上6,4174,81911,354
合計15,16152,10367,874
令和2年医療施設調査 第190表 歯科診療所数,開設者・歯科診療台の規模別

厚生労働省令和2年医療施設調査によると、個人規模の歯科医院でのユニット所持台数は上表通りになります。個人開設の医院では3台が41.6%と半数近くを占め、次いで2台・4台が約20%程度となっています。

対して、厚生労働省の令和2年10月患者調査によると「歯科診療所の推計患者数」は一日1,332,100人です。

先ほどのユニット台数の所持数からユニット総数を算出し、この患者数を割ってみると、法人・個人開設の歯科医院の統計データから算出した平均では、ユニット1台あたり1日6.2人の患者さんを診療している計算になります。

※なお、ユニット台数については5台以上の台数は便宜上5で換算し、不明部分については切り捨てあるので、あくまで統計から算出した平均の参考値としてお考え下さい。

しかし、この平均を超えているからユニットを増設してもいいということでは決してありません。診療時間が1日8時間だと想定し、数字上のユニット1台あたりの最大稼働数は、1時間枠でも8人・30分枠であれば16人・20分枠だと24人になります。単純計算ではありますが、このことから統計データの平均で算出されたユニット1台あたり1日6.2人は、増設の目安にならないということが分かりますね。

それでは、具体的なユニット増設の目安はどのように考えればいいのでしょうか?

歯科ユニット増設のタイミングとは?

ユニット増設のタイミグや目安については、先生の診療スタイルや地域の診療内容傾向、その時の収支のバランスなどにもよって変わってきます。増設のタイミングは医院に合わせて収支シミュレーションをしていただく必要がありますが、あえて目安をお伝えするのであれば、予約がとりにくくなってきた時期に増設されるのが良いでしょう。

予約が取りにくくなってしまうと、患者さんが他の医院に移ってしまう要因にもなってしまいかねません。その場合は、衛生士や勤務医の先生などのスタッフ増員とあわせてユニットの増設を検討されてください。

一例ではありますが、開業時に3台のユニットを設置していた場合、1日の来院患者数が30人(ユニット1台あたりの患者数が10人程度)を超える辺りで、予約入れにくくなってきて、4台目のユニット購入を検討されるケースをよく伺います。この人数は「歯科医院開業で目指すべき1日の来院患者数ってどう決めるの?」で紹介している、患者統計からみた1日の来院患者数は平均約25人となっているので、それを上回った人数とも類似していますね。

増設と一緒に考えておくべき人材確保

さきほどもふれた通り、ユニット増設と並行して、必ず考えないといけないのがスタッフの増員です。

歯科医師一人が診療できる1日の患者数にも限りがあります。先ほどの話を例にとると、4台目のユニットを購入し1日30名強からの患者さんを診療できるように環境を整えても、これを常勤医師1人で診ようとすると1時間辺り最低3.75人を診察しなければなりません。

一人あたりの診療時間は16分以内になります。このことからも新たな人手の必要が想定できますね.

このように、ユニットを増設しても患者数の増幅に対応できる衛生士や勤務医の確保が出来ていないと、診療できる患者数を増やすことはできず、ユニット1台あたりの稼働率・収益が下がるだけという結果になってしまいます。

まずは人材確保の計画を立てて、その目途が立ったらユニットを増設に踏み切りましょう。

増設前にシミュレーション

ユニットを増設した場合、だいたいどれ位の患者さんを増やせば、収支バランスがとれるのか?事前に経営シミュレーションを行うことが大切です。

ユニット増設の為の事業計画を見直してみてください。

ただし、事業計画を作成するのも大変な作業になるので、まずはざっと概算数字だけでも把握してみましょう。

ユニット1台辺り・月間経費モデル

明細月額
ユニット 1台(300万:7年償却)36,000
歯科衛生士1名(25万)250,000
経費中計286,000
明細月額
材料費10%(月商300万を450万とする場合)150,000
経費合計436,000

仮にユニット1台を300万で購入しこれを7年で減価償却すると、月の費用は約3万6千円となります。歯科衛生士を1名増員し給与を月25万とすると、費用合計は28万6千円。

元の月商が300万、この増設で月商450万への増額を見込むと仮定すると、材料費は増額分の10%程度で約15万となり、月間の必要経費は合わせて45万円程度になるということがわかります。

これをまかなうには最低でも月に45万円の売上増が必要ですが、これは1回あたりの診療報酬平均点数を700点(7,000円)、月の営業日数を25日とした場合、月間で75回の診療機会に換算できます。

大まかに、1日辺りの来患数が3名増えればユニット1台増設の元が取れる計算になりますが、これはあくまで経費増額分を補うだけの採算なので、その他諸々の経費や税金も考え、実際にクリニックの増益へと変えるには1日6~10人くらいのアポイント増が望ましいでしょう。

※上記は仮の数値です。他にも加味すべき要素がたくさんあるので、飽くまで概算の数値としてお考え下さい。

ユニットの設置には当然配管が通っていないといけないので、増設には施設の面についても考えておかなければなりません。大がかりな工事が必要になったり、追加費用が掛かかったりしないようにする為にも、開業時からユニット増設を考慮した事業計画を立てておくことが大切です。

インサイトのサポートでは事業計画の立て方や内装についてのサポートも行っています。まずは一度、ご相談ください。

この時期になると「将来的に医院の医療法人化も検討しようかな」と考え始める方も多いかと思います。「歯科医院の医療法人化における業界動向とメリット・デメリット」で歯科の医療法人化についても紹介していますので合わせてご覧ください。

また、増設にあわせて医院の設備の見直しなど、複数社とのデモンストレーションを開催することも可能です。ご検討中の方は、各社との調整だけでなく、それぞれのサービスの特徴などをお伝えする選定サポートも行う「一括デモサービス」をご活用ください。

医院の収益を伸ばすために「分院展開するか」「ユニット増設をするか」など、お悩みの方におすすめのコンテンツも紹介しています。ご状況にあわせて是非ご利用ください。

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