歯科の管理者になったらすることとよくある質問


歯科医院の管理者になったらすることとよくある質問

ある程度の勤務年数を重ねてくると、勤務先の医院から「医院の分院長になって欲しい」「医院の管理者になってはみないか?」と、院長から話を頂く先生もいらっしゃるのではないでしょうか?

自分が管理者になった場合、どこまで責任があるのだろうか?ゆくゆくは開業を考えているけど、大丈夫だろうか?など不安もあるかと思います。分院長になる時に起こりがちなトラブルについては、別記事で紹介していますのであわせてご覧ください。

【関連記事】分院長の経験談から学ぶ!分院長になる時・分院長を探す時の注意点

今回は、歯科医院の開設者・管理者の違いや、管理者になった時の注意点などをお話ししたいと思います。

○歯科医院の管理者・開設者とは?

まず、歯科医院における開設者や管理者の定義を考えてみたいと思います。

最初に開設者ですが、医療においては開業することを「開設」といいます。そして、その開設者の種類は、歯科医師個人、医療法人、国や地方公共団体、教育機関のほか、都道府県知事が許可(医療法第7条)を受けた会社などで、歯科医院を開設できるのは、歯科医師の資格を持っていない法人等でも大丈夫ということです。

これに対し、歯科診療所の開設者は、臨床研修等終了した歯科医師を「管理者」において、当該医療機関を管理させること(医療法10条)になっており、この管理者は資格を持った歯科医師でなければなりません(医療10条・12条)。また、管理者は、都道府県知事の許可を受けた場合を除き、他の医療機関の管理を兼任することはできません(医療法12条第2項)。

このことから、歯科医院を個人で開設しようとする歯科医師を上記の例に当てはめると、開設者も管理者も歯科医師本人となり、兼務するということになります。

一方、開設者の義務としては、管理者に管理を代行させているだけですので、歯科医院における最終的な責任は開設者が負うということです。

したがって、医療法人が開設者で、その分院の管理者が保険の不正請求を行った場合、その管理者のみに責任があるわけではなく、その責任は開設者である医療法人にもおよび、最終的には開設許可が取り消されるということになります。

○歯科診療所の管理者になるための手続き

管理者の届出では、歯科医院を開設する際に提出する「開設届」に管理者の記載をすることになります(医療法第8条、最速第9号様式)。具体的には、管理者の住所、氏名、臨床研修等終了登録日、免許証番号及び登録年月日を開設届に記載し、保健所に提出することにより、管理者になったということになります。

○管理者に関するよくある質問
・歯科医院の管理者になると、今までと何が違うの?

医療法人に勤務している歯科医師の事例ですが、分院長が開業のため退職することになり、医療法人(開設者)の理事長から、「後を継いで、分院長になってほしい」という依頼があり、分院長を引き受け、医療法人は管理者変更届をだしました。この日から、ただの勤務医ではなく管理者として、以下のような義務が発生します。

1 安全管理体制確保義務
管理者は、医療の安全を確保するための指針の策定,従業者に対する研修の実施その他当該医療機関における医療の安全を確保するための措置を講じなければなりません(医療6条の10)。 具体的には、医療の安全管理のための指針の整備、委員会の開催、職員研修、事故報告等安全の確保を目的とした改善策を実施しなければなりません(医療規1条の11第1項)。特に、院内感染対策,医薬品の安全管理,医療機器の安全管理のそれぞれの体制確保にあたっては、医療法上、責任者の配置、手順書の作成や保守点検の実施等が具体的に求められています(同条2項)

2 従業者監督義務
管理者は、勤務する歯科医師その他の従業者を監督し、その業務遂行に欠けるところがないよう必要な注意をしなければなりません(医療15条)

3 その他の義務
これらのほか、管理者は、医療法上様々な義務を負っていますが、歯科の場合に重要なのは、医療機関が提供する医療サービスにかかる一定の情報について、都道府県知事に報告するとともに、それらを記載した書面を当該医療機関において閲覧に供するかホームページ等に掲載しなければなりません(医療6条の3第1項、3項)。これは、各都道府県ごとに、医療情報ネットのようなサイトが提供されており、患者さんが閲覧できるようになっています。情報の中には、1日に何人の患者が来院しているかなどの情報もあるので、開業時には、競合医院の情報を入手するためには有益なものです。

このように、歯科医院の管理者は当該医療機関における安全を確保するともに、当該医療機関を医療法に適合するように適正に管理しなければなりません。

・知らない間に管理者になっていた時はどうすればいいの?

医療法人の理事長から、「〇〇先生が退職するので、A先生が院長になってくれない?書類はこっちで、作成しておくから」という打診を受けて、「ああ、いいですよ」と安請け合いをしたもの、その後理事長からは何の説明もなく、本人も忘れており、いざ開業しようと思ったら、大きなトラブルになってしまったケースがります。

院長になってくれないか?ということは、法律的には医療法人の分院の管理者として届け出るということです。したがって、「歯科医院の管理者・開設者とは」の項でもふれたように、他の医療機関の管理者になれないわけです。それを知らずに、開業を進めていたA先生は、開設届を出したものの、すでに他医院で管理をしているため、受理されず、開業できないという状況になってしまったのです。

このように、開業の予定のある歯科医師は、管理者の就任を断るか、早めに医療法人の管理者を抜いてもらうように、留意する必要があります。さらに、医療法人の管理者になるということは医療法人の理事にもなっている場合がほとんどですので、この理事も早めに辞任していく必要があることを付け加えておきます。

いずれにせよ、医療法に定めるように管理者には大きな義務がありますので、安易に引き受けないことが肝要です。

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