歯科経営管理

「歯科の新規指導」とは?大変だと言われる新規指導の仕組みを解説

指導や講義のイメージ
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「新規指導が大変だった」「開業後の最初の難関が新規指導だった」そんな声を開業した先生方からよく伺います。もちろん「大変だと聞いていたから身構えていたけど、思ったよりスムーズに終えられた」など良いお話しも伺いますが、総じて大変というイメージが多い歯科の新規指導。

今回は歯科の新規指導とはどういうものなのか?その成り立ちや流れについて紹介します。

新規指導とは?新規指導が行われる目的と仕組み

新規指導は、保険診療の質的向上と適正化を目的とされています。

保険医療機関・保険医が「療養の給付」を適切に行っているかどうか、厚生労働大臣(又は該当職員)が指導・検査を行うことができると健康保険法73条で定められており、保険医療機関・保険医がこの指導を受けなければならないということは健康保険法78条で決められています。

これらの健康保険法の定めに応じ、指導・監査の基本事項をまとめたものが「保険医療機関等及び保険医等の指導及び監査について」(厚生省保健局長通知)に記載された指導大綱・監査要綱で、療養の給付だけでなく、診療報酬の請求についても指導対象としています。

この指導結果に応じて監査が行われ、監査次第では保険医療機関の指定取消し、保険医の登録取消しになる場合もあります。(健康保険法80条・81条)

新規指導が行われる流れ

次に新規指導の概要や流れを紹介します。

まずは、開業後1年以内に集団指導

だいたい、開業後1年以内くらいに集団指導が実施されます。集団指導は講習形式で、保険診療の取り扱いや改定内容の伝達等、保険診療を行う上で必要なルールの周知徹底を目的とした内容であることがほとんどです。

通知は実施1ヶ月前を目途に通知され、実施時間は2時間程度です。担当する都道府県ごとに運用も異なり、1年以内に行われない場合もあります。召致内容に応じて対応しましょう。

新規個別指導が実施される場合、こちらは除外されるケースもあります。

別途、新規個別指導の実施

「地方厚生(支)局及び都道府県が指導対象となる保険医療機関等を一定の場所に集めて又は当該保険医療機関等において個別に面接懇談方式」で指導を行うものを個別指導といい、この個別指導を「新たに指定された保険医療機関等を対象」として行うものを、新規個別指導と言います。

新規個別指導の対応方法については別記事でも紹介していますが、新規個別指導は新規指定から6ヶ月~1年以内(集団指導も実施する場合には、集団指導実施後)の保険医療機関に実施され、通知は1ヶ月前に行われます。

対象の保険医療機関には事前に通知が送られ、決められた指定日に所定の書類等を持っていくよう指示されます。10名程度・2ヵ月分の診療録(カルテ)の他、レントゲンや技工指示書・納品書、院内掲示物などを持参物として指定されるので、指示通りに用意しましょう。(準備物の内容は場合によって変わる事があります)指定場所で個別の指導が始まりますが、通常は大体1時間程度で終了になります。

参考:指導担当者

種類担当者
集団指導地方厚生(支)局及び都道府県又は厚生労働省並びに地方厚生(支)局及び都道府県が共同
個別指導厚生労働省又は地方厚生(支)局及び都道府県

指導担当はそれぞれ上記のように記載がありますが、実際は地方厚生局各事務所の指導医療官、事務官、都道府県指導医、都道府県担当者等で行うケースが多いようです。

また、各指導の選定委員会には地方厚生(支)局長が指名する技官、事務官等が当たるとされています。

指導後の措置について

指導の結果は書面にして郵送で送られますが、大体1か月度ほどかかります。指導後の措置は以下の4種に分かれます。

(1)概ね妥当
概ね問題ない場合。

(2)経過観察
適正を欠く部分はあるが軽微、担当者の理解があり改善が期待できる場合。(ただし、経過観察の結果改善が認められない場合は再指導)

(3)再指導
適正を欠く部分があり、再度指導を行わなければ改善が判断できない場合(不正・不当が明らかになった場合、すぐに監査対象に)

(4)要監査
指導の結果、「監査要綱」に定める要件に該当する場合、監査対象に。(監査中でも問題があればすぐに監査へ移行)

「概ね妥当」になった場合には問題ありませんが、それ以外の場合には改善の必要があり、場合によっては1年から数年に渡る診療報酬の自主返還を求められる場合もあります。

自主返還(患者さんへは要求があった時に返還)

診療録(カルテ内容)や算定条件に見合わない診療報酬については自主返還が求められる場合もあります。

指導で問題が発覚した事を発端に保険医の取消しを受け、収入が途絶えた上で多大な返還額を支払わなければならないという事がどれだけ大変な事か、という認識につながればと思います。

自主返還は、指導結果の通知などに詳細が記載され、決められた期日までに返還同意書の提出するように求められます。患者さんへの返還も同様に通知などで知らされ、自主的に保険者へ返還するように求められます。

監査について

診療内容に不正・不当があったと疑うに足る理由がある場合、また個別指導を何度行っても改善が見られない場合、正当な理由なく個別指導を拒否した場合などは、監査の対象となります。

監査結果として(1)取消処分(2)戒告(3)注意のいずれかの措置が取られますが、保険医療機関指定・保険医登録の取消処分と受けると原則として5年は再指定を受ける事ができず、また再指定を受ける際に提出する指定申請書で取消処分を受けた事があるという事を自己申告する必要があります。

いかがでしたでしょうか?

ご開業の環境にもより、対応や気を付けるべき点が異なる場合もあります。まずはカルテの書き方(入力の仕方)や診療報酬算定など、日々取り組める基礎的な部分については、いつ検査を受けても問題ないように整えておきましょう。

もし困った状況になった場合には、地域の保険医協会や弁護士に相談するなどして対応していきましょう。

施設基準や届出など、開業に際して法的に整えなければならないことは他にもたくさんあります。

具体的になにをすればいいのか、不安に感じる事があれば専門家の手を借りるのも安定した歯科開業・早期経営安定への早道です。歯科開業に関するご相談などございましたら、下記よりお問合せください。

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