歯科医院を開業しようと考えた時に、多くの皆さんが頭を抱える資金調達の壁。
歯科医院の開業資金調達では補助金や公的融資制度を利用することが可能です。公的融資制度については既にご存知かもしれませんが、日本政策金融公庫などがあげられます。
資金調達については「歯科開業の資金調達でよくある4つの資金調達先」で紹介しています
それでは今回は、歯科開業時に利用を考えられる補助金についてお話しましょう。
歯科開業時に使える補助金とは?
補助金とは、経済の活性化を狙うなどの政策目的に応じて、国や地方公共団体が企業・公共団体や個人開業者(私人)に必要な資金の一部を交付してくれるお金の事を言います。
外部から借りられるお金なら、融資も補助金も違いがないのでは?と思われる方もいるかもしれませんが、返済する必要があるかどうかという点が大きく異なります。融資では借りたお金を返す返済義務がありますが、補助金は交付を受けたお金なので返済が不要です。
ただし、補助金は国の財源を元としたお金なので、目的に対する成果報告が求められますし、仮に不正が発覚した場合には罰金などの罰則が課されます。詳しくは各募集要項に記載がありますが、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律などの規定が適用されるので、覚えておきましょう。
補助金を受けるための仕組みを理解しよう!
補助金には、それぞれの目的と仕組みがあります。まずはその交付目的と募集要領に事業内容が当てはまるかどうかが初歩の申請受け入れ基準になります。
公募にあたっては申請要件や期間、対象市区町村などが細かく決められており、各事業者より申請を受けた後、支給する管轄の省庁(及び地方の指定事務所)や市区町村、またはそこから依頼を受けた機関などが申請内容の審査を行います。
審査を通り採択通知を受けたら、事業を開始(開業)して完了報告を提出し、実施状況検査の後、補助金の請求に対する支払が行われる、というのが大体の大きな流れになります。
予算により採択数も決まっているので、審査に落ちる事業もあります。
まずはどのような内容で何の申請ができるのか情報をチェックし、開業時に申請できる補助金制度の準備を早くから始め、それに合わせた資料準備とスケジュール調整を行う事が大切になります。
補助金にはどんなものがあるの?2017年6月現在
歯科開業で申請する事のできる補助金には、以下のようなものがあります。
名称 | 交付目的 | 歯科での適用例 |
---|---|---|
革新的ものづくり・商業・ サービス開発支援補助金 | 国際的な経済社会情勢の変化に対応し、 足腰の強い経済を構築するため、 経営力向上に資する革新的サービス開発・ 試作品開発・生産プロセスの改善を行うための 中小企業・小規模事業者の設備投資等の一部を支援します。 | CAD/CAM、 CT・YAGレーザーなど |
創業・事業承継補助金 | 「創業補助金」は、新たな需要や雇用の創出等を促し、 我が国経済を活性化させることを目的に、 新たに創業する者に対して創業等に要する経費の 一部を助成(以下「補助」という。)します。 | (開業履歴の無い) 勤務医が開業する場合など |
IT導入補助金 | 本事業は、中小企業・小規模事業者等が ITツール(ソフトウエア、サービス等)を 導入する経費の一部を補助することで、 中小企業・小規模事業者等の 生産性の向上を図ることを目的としています。 中小企業・小規模事業者等が行う生産性向上に係る 計画の策定や補助金申請手続等について ITベンダー、専門家等の支援を得ることで、 目的の着実な達成を推進します。 | レセコン、電子カルテ、 予約管理システム、 ホームページ作成など |
先ほどもお話ししましたが、これらは市区町村や時期(タイミング)によって受けられる内容も異なるので注意しましょう。以下に、近年の実施例と申請期間を掲載するので参考になさってください。
実施年度 | 名称 | 交付期間/補助上限額/補助率など |
---|---|---|
平成28年度 補正予算 | 革新的ものづくり・商業・ サービス開発支援補助金 | 受付:平成28年11月14日~平成29年1月17日(終了) 補助上限額:3,000万円 補助率:2/3以内 |
平成29年度 | 創業・事業承継補助金 | 受付:平成29年5月8日~平成29年6月2日受付(終了) 補助額: ①外部資金調達がない場合:50万円~100万円 ②外部資金調達がある場合:50万円~200万円 補助率:1/2以内 |
平成28年度 補正予算 | IT導入補助金 | 一次公募:平成29年1月27日〜平成29年2月28日(終了) 二次公募:平成29年3月31日~平成29年6月30日(終了) 補助額:20万~100万円 補助率:2/3以内 |
※こちらは2017年6月現在の対象項目の抜粋です。詳細は最新の公募条件をご確認下さい。
補助金を受ける為の具体的な流れとしては、例えば、平成29年に東京都江東区で開業する際に、創業・事業承継補助金を受けたいと希望するのであれば、最初に開業地域が産業競争力強化法に基づく認定市区町村であるかどうかを調べます。
東京都江東区は対象なので、指定の窓口(江東区経済課)に相談するなどして、認定市区町村から特定創業支援事業の認定を受け、証明書(または確認書)を貰い、補助金申請時に添付する必要があります。
この認定を受けてから初めて、創業・事業承継補助金の申請が可能になります。この補助金については公募期間の平成29年5月8日〜平成29年6月2日中に申請を行い、審査を通り採択通知・交付決定を受けた後に、同年12月末日までに事業を開始(開業)し、完了報告とその証憑を提出する必要があります。
間の細かい手続きは省きますが、最後に確定検査を受けた後に初めて補助金支払いの流れになります。審査に通りきちんとした手続きを踏まえれば、人件費や設備費など対象の費用について最大で200万円までの補助金を得る事ができます。
その年の予算などに応じそれぞれの補助金の実施内容にも変動があり、助成金など他にも様々な制度があるので、詳しい情報は各市区町村のホームぺージなどで調べてみてください。
歯科開業にまつわる補助金についてでした。
創業・事業承継補助金について、支給されるとなれば、事業実施完了日(開業)までに従業員1名以上を雇い入れること、事業の実績報告は開業後5年間行う必要があるなど、実績を上げることが求められます。
また、申請には開業後最低6年に渡る詳細な事業計画や資金計画、期間内での補助対象の経費明細と申請予定額など、細かな書面記載が求められます。
補助金や助成金には何年にも渡り継続して運用を維持していかなければならない制度もあるので、自分一人での運用が難しそうであれば専門家に相談しながら進めるのが良いでしょう。
また、審査の結果補助金を受けられない可能性もありますし、開業のタイミングで受けられる補助金がないことも多くあるので、最初から補助金をあてにすることなく資金調達や事業計画を立てておく必要があります。
どちらにせよ『開業=歯科医院の経営者』となるわけですから、資金調達の方法や事業計画など、医院経営の根幹に関わる部分については、先生ご自身でも把握できるようにしておきましょう。
本記事に掲載されている補助金は少し古いものとなっておりますが、医院の設備などタイミングによっては、補助金や助成金などの制度を利用して購入できることもございます。最新の補助金について知りたいなど、お問合せ頂ければ利用可能な補助金などを含めて最新情報をお伝えいたします。
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